表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第6章 居場所
259/352

259

 今まで誰と喋っているつもりだったのか。レゾンの返事も自分のひとりごとだと思い込んででもいたのか。真剣な顔でどこか古めかしい口調を使い、無邪気に繋がれた裸足を差し出してみせるその存在をレゾンは奇妙な目で見た。


『それにしても〈神の意思〉なんてよく知ってたんだな。わかるか? ん? 意思と石をかけてるんだわ!』


 水を打ったように恐ろしい静寂があたりを支配する。


『だあーっはははは!』


 一拍後、ひとり腹を抱えて爆発した笑い声がますます恐怖で、レゾンの背は悪寒に震え目元はぴきぴきとけいれんした。奇妙な、なんて言うのはひかえめな表現だったと頭を抱える。想像の斜め上を突き抜けていってもうついていけない。


「恐ろしい。これが〈神〉か。予想とは違う意味で話が通じるとは思えない」

「銃じゃなく、笑いの沸点が低い通訳を連れてくるべきだったとは、なかなかやりやがります。レゾン様、ここはこっちも一発ダジャレをかましてやらないと空気に呑まれますぜ」

「やめろ! 清廉潔白、月下の麗人と言われるこの私がそんな辱しめなど……!」


 ひじで小突いてくるヴォルに気を取られていると、大きなため息が聞こえた。見ると今さっきまで笑っていた少女は目をどんよりと濁らせ、眠たそうにまぶたを閉じかけている。そのまま少女の四肢はベッドマットに投げ出され、片手を枕にくつろぎはじめた。


『ここんところひとりで退屈だったから、変に興奮してしまったんだな。もう気が済んだ』


 言葉尻があくびに吸われて間延びする声を聞きながら、レゾンは内心で九死に一生を得た! と叫んだ。ヴォルの出任せに乗せられていたら、ここで果てたいほどの恥をかいていたところだ。

 目的のためにはやむなしか、とちょっと考えた悔しさを偶然そこにあった足を踏んで晴らす。

 しかし落ち着いた〈神の意思〉は天井をぼんやりと見つめるばかりだった。眠たいというよりはまるでこちらに関心がない。これはこれでやりにくさを感じレゾンがヴォルに視線を送ると、下唇をぎゅっと釣り上げてあごと眉間にすごいしわを寄せていた。

 そんなに痛かったか。すまん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ