表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第6章 居場所
257/352

257

 袋いっぱいに溜めた空気が破裂するようにレゾンは笑った。上向いた気分が赴くままに再び階段を下りはじめる。


「なるほど。なるほど。では私が王座に居座りつづけるには、不老不死の霊薬を手に入れるしかないわけか」


 そんな薬は聞いたことも見たこともない。レゾンの冗談だった。しかし、オレンジ色の光が覗き窓からもれ出る鉄の扉が現れた時、ヴォルの声がぽつりとつぶやく。


「世界の歴史を変える力を秘めた〈神の意思〉ならあるいは」

「おっと」


 地下の底に辿り着いたレゾンは、最後の一段を下りようとしていたヴォルを阻むように振り向く。


「思わず欲しくなることを口にするものではないよ。傲りと欲望は今ここで捨てたまえ」


 〈六重セクステット〉の明かりにぼんやりと浮かび上がるヴォルの顔は、じっとレゾンを見つめたままグローブの手の甲に描いた〈鬼灯デモンライト〉の魔法陣を消す。あわい魔法の輝きが失せた手は懐に差し込まれ、今度は小銃を握って現れた。

 魔力を弾として放つ魔銃ではない。管状の弾倉に入った薄朱色の弾丸をちらりと確認し、ヴォルはその重みを確かめるように両手で包み込む。〈神〉と対峙する供として一丁の拳銃は頼りないを通り越しもはや無謀だった。

 しかし愚者は華やかなパーティーにでもくり出すかのように高らかに笑う。


「さあ行こう。〈神〉と対話を試みたはじめての人間という栄誉をともに掴もうじゃないか」

「しれっとテッサ様のことはなかったことにしてやがりますね」


 ボルトを引いた銃を片手に構え、ヴォルは前へ進み出て扉に手をかける。寄越された視線に応えレゾンはひとつうなずいた。

 ぐっと力を込めたヴォルの腕に押され扉が重々しい音を立ててゆっくりと開いていく。と、心音に似た低い音が聞こえると気づいてレゾンは薄く笑みを浮かべた。先に中へ身を滑り込ませたヴォルにつづいて地下独房へと踏み入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ