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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
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 ミグを心配しての行動とは少し様子が違った。まさかこれもレゾンの策略なのか? その思考を遮るかのように、ひと足早くミグの元に辿り着いたナキを〈六重セクステット〉の〈防護壁シールド〉が囲む。誰が魔法を放ったかなんて想像するまでもなく、タヌキ魔導師めとヴィンは腹で毒づいた。


「赤の魔どーし! 赤の魔どーし!」


 しかしナキはまったく動じず、オレンジ色の壁に張りついてぴょこぴょこ跳ねる。


「ねえねえ。ナキといっしょに来て! ねえねえ!」


 懸命に呼びかける様はミグ――いや、髪と目が赤く染まった魔導師以外眼中にない。壁を叩いて大きな声で注意を引こうとする姿はナキらしくなく、ヴィンが薄ら寒いものを感じた時だった。


「なに見てるの。その目で見ないで。虫酸むしずが走る……!」


 苦しむ息の合間から低く吠えたミグは、憤怒の炎でネットを焼き切る。最後に残った小指の先端から鋭利な赤い爪が生え、ナキに向かって振り上げられた時、ヴィンはミグと〈防護壁シールド〉の間に体を滑り込ませた。

 どろどろになる寸前まで熱せられた杭が脇腹を貫いた。のど奥からひきずり出される悲鳴を、ヴィンは歯を食い縛り油汗を浮かべて耐える。いっそ手放して楽になりたいと叫ぶ意識を意地でねじ伏せた。


「どーしたよ、ぐうた。おじょうちゃんの顔、忘れたわけじゃ、ねえだろ」


 かすむ視界の中からにらみ上げてくるミグに、ヴィンはいつもの軽口で話しかけ震える口角を釣り上げてみせる。


「やめてよ。きみだってさっき『危ない』って言ったくせに。私を危険視してるんでしょ!」


 なんだ、しっかり聞こえてんじゃねえか。そう思ったらやたらおかしくて腹がひくひく跳ねた。お陰で痛みが倍増だ。痛みにかおかしさにか、自分でもよくわからない涙を目の端に溜めて、ヴィンは視線であたりを示す。


「そりゃそーだろ。こんだけ銃向けられてる中に突っ込んでいったら、誰だって危ねえ」

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