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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
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「ぐうたあ!」


 テラス席の木板を転げ柵を突き破り、ミグは第三層に落ちていく。追いかけてテラスの縁から覗き込んだヴィンは、バトルロイヤルで一度消えた闘技場が戻り、その中央付近にうずくまるミグを見つける。しかしミグとその周辺の様子がおかしい。

 ミグは体にまとわりつくネットを外そうと、自分の手足と異形の隻腕をめちゃくちゃに振り回していた。だがひどく苛立ったうなり声には明らかに苦しげな息遣いが混じっている。

 すると、網を引きちぎろうとしていた異形の指が崩れ落ちた。それらは闘技場の地面に転がり、再び浮遊する気配はない。


「あのネット、まさかあの赤い金属か!」


 魔法を無力化させる薄朱色の金属。遠目からではわからないが、金属のワイヤーをよって作ったネットに薄朱色が織り込まれていてもおかしくない。

 しかしミグは崩れる腕には構わず、ワイヤーを握り込み炎で溶かしはじめた。ヴィンの胸に焦燥が募り、下りられそうな斜面を探す。

 ミグは今や袋のネズミだ。第一層、第二層と魔銃を構えた地下アンダーの人々がぐるりと囲み狙い澄ましている。全員レゾンの息がかかった連中だ。ディレットがミグに〈レティナ〉をちらつかせてきた時から仕組まれていた。

 すべてはミグを地下に誘い出し、ゲームで消耗したところを処刑するためだ。動きを封じ弱ったミグに向けられる次の弾は薄朱色に違いない。

 ヴィンは比較的ゆるやかな斜面から第三層へ滑り下りる。


「ナキさんダメです! 戻ってください!」


 その時第二層から降ってきたテッサの声にヴィンは目を見張った。振り向くと第二層から第三層にかかる階段をヤーンぬいぐるみを抱えたナキが駆け下りて闘技場に入っていた。大人しくて少し甘えたなナキの突然の奇行に、テッサとシェラは追いかけるものの完全に出遅れている。


「止まれおじょうちゃん! 危ねえぞ!」


 叫びながらヴィンは残り数メートルの斜面を飛び下りた。着地でよろめきながらも走り出す。ナキはヴィンの声に振り向きもしなかった。じっとミグを見つめる眼差しは驚くほど大人びて、なにか使命感すら漂わせている。

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