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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
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 左目を覆う布を取り去り〈レティナ〉をはめる。帝国は駒に魔動機の使い方さえ満足に教えなかったが、こうして繋がっていればある程度は感覚で操作することができた。


「オフ」


 目を閉じて、開く。するとそこはもう過去のベガ国ではなく、リゲル国地下(アンダー)の闇市場街だった。

 ヴィンは砂利を踏み締めて走り出す。そのあとをテッサやシェラよりも早くナキが追いかけてきたことに気づかず、壊れた柵を見て顔をしかめた。

 第二層が騒がしい。激しい物音に混じって人々の怒号と悲鳴が聞こえる。ヴィンは柵の残骸を蹴っ飛ばし、下層に向けた目を見開いた。

 ミグの肩に沿って異形の隻腕が出現していた。驚き喚く人々に向けてミグが腕を振ると、鉱石の集合体のような腕が店のテーブルやイスを巻き込んで薙ぎ払う。豪腕が生み出した風は火を喚び、ミグの通ったあとには烈火が走る。

 どこかで銃声が鳴り響いた。「やめろ!」無我夢中で叫ぶヴィンの視線の先で、異形の腕がひとりでに動き魔弾からミグをかばう。それは着弾したところから見た目に反してぼろぼろと崩れた。

 そういえば〈レティナ〉の映像よりも異形の腕は細く小さい。もしかしてまだ完全ではないのか。

 その可能性が過った時、ヴィンは第二層へ飛び下りた。まだ、今ならミグを正気に戻せるかもしれない。

 炎の川を突き進み、テーブルやイスを越えてミグに手を伸ばす。


「用意。撃てえ!」


 突然降ってきた声に、ヴィンの義眼は本人の意思よりも速く上層にいる人物を捉えていた。冷たく眼下を見下ろす男の表情が真っ先に飛び込んでくる。

 地下の薄暗がりの中いっそう白く際立つ肌、なにものにも染まらない高潔の黒髪はいつも涼やかに揺れる。清廉潔白とテッサが評したその人柄を体現するかのように、砂埃ひとつついていない純白の首長公務服は地下アンダーでは悪目立ちしていた。


「レゾン……!」


 リゲル国を統治する首長その人の登場に、ヴィンは自分の予感が当たってしまったと奥歯を噛み締める。と、目の前をなにかが空を裂く音とともに横切っていった。レゾンの横にバズーカ砲を担いだホッパーがしゃがんでいたことに気づいた時には、ミグの体は飛んできたものに連れ去られていた。

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