表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
221/352

221

 正気を失った父の監視役という立場でも構わない。

 ふと、その時過った予感にミグはじっとテッサを見つめた。


「ミグ? なんなら開けるのは別の日でもいいんじゃない? 今日は疲れてるし」


 気遣うシェラのやさしい眼差し、ふわふわの髪、まだ幼さの残る顔もミグはひとつひとつ見つめる。


「ありがとう、シェラ。でも今開けないと私、どんどん怖くなっちゃうと思うから。みんながいる今開けたい。みんなに、そばにいて欲しい」

「無理してない? 少し顔色が悪いように見えるわ……」


 テッサのすらりとした手が頬をなでる心地よさにミグは懐く。目を閉じてずっとずっと、この手を覚えていたい。親友がそうと察したように、ミグだって言葉にしなくともテッサが心配したのは顔色だけじゃないとわかっていた。


「ゼクストの運命を知ることは、私の運命も変える予感がしたんだ。だけどだいじょうぶ。もうどんなことがあったって、テッサとの繋がりを見失ったりしないから」

「逃げても、いいんだぞ」


 ここまできて身勝手なことを言うのがヴィンなりのやさしさだとわかってきた。ミグは小さく笑って「どこに」と首をかしげてみせる。自由で、気ままで、飾らないヴィンの前では、ミグ自身もいつの間にか自然に本音を口にしていた。


「逃げたいなんて思わないよ。ゼクストのことはどうしたって放っておけない。それに私の居場所はみんなの目にあるんだから」

「目?」


 きょとんと瞬いたヴィンにミグは歩み寄る。難なく会話できる距離を越えて、手を伸ばせば届く隙間を埋めてもっともっと、身を寄せ顔を上げかかとを伸ばし、その水色の瞳を覗き込む。


「きみが私を見つめた時、きみの目に私が映る。そこにいる私を見て私は、ここにいるって実感する」


 鼻先が触れそうな近さにヴィンが慌てて身を引こうとするものだから、ミグは腕を引っ張ってやった。身仕度を手伝ったあの朝のように、重心が崩れたヴィンをミグはにやりと笑ってかわす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ