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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
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 第一層に到着する間際、ミグは飲食店の看板メニュー横に佇む赤いソファを見つけた。目立つ色なのに、なぜかひっくり返ったり場所がずれたりすることもなく、今も静かに第二層の虚空を見つめている。

 しかし、そこに寝転んでいた主の姿は忽然と消えていた。




「おおむね予定通り、か」

「一行は第一層へ移動しましたが、負傷者が二名いますしまだ動かないでしょう」

「おーし。そのまま外に出すなよ。総仕上げだ」

「あら。なんだか浮かない顔ね。これは上の決定なんでしょお?」

「そーだよ。全員一致の、な」

「ふうん。だったら私たちがつべこべ言えることじゃないわよね」

「わかってる。とにかくてめえら、油断なんてくそ下がることすんじゃねえぞ。相手は……怪物だ」




 パキリ。ミグの手の中でみるみる色を失った魔石が、乾いた音を立てて割れた。砂となりこぼれていくそれを払って、ミグはさっそくテッサの腕と自分の肩に〈女神の祝福(ララ・セラピア)〉をかけていく。ふたりの患部が紫色の光りに包まれた時、シェラの口から重いため息がもれた。

 ミグは苦笑して、紫の光が映り込むシェラの目を見やる。ため息は無意識だったのか、シェラはバツが悪そうに口を隠して背中を向けた。

 第一層の闇市は、下層よりもとにかく目につくものはなんでも殴れ、というお祭り状態ではなかった。しかし騒ぎに乗じて盗人が複数現れたらしく、店主たちは一丸となって各々商品を手に取り奔走している。その商品が火を吹く度に、悲鳴や絶叫がにぎやかに沸き起こった。


「テッサおねえちゃん、ミグおねえちゃん、いたい……?」


 店と店の間の在庫置き場らしい木箱に身を寄せて、怪我を癒すミグとテッサの間でナキはしょんぼりしていた。きっとはじめて目にしただろう大きな傷に怖気づき、どうすればいいのかわからない困惑に円らな瞳をうるませている。

 体が半分に折れるほどきつく抱き締められたヤーンぬいぐるみが、少女の不安を訴えていた。テッサはゆるく波打つ白金の絹髪に指を滑らせ、冗談めかして言う。

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