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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第5章 バトルロイヤルの急変
208/352

208

 この魔法を魔導書で見つけた時、親友らしいと気に入りあいさつ代わりに何度もくり返し描いた。


『〈心結の儀(ヘルツリート)〉』


 ミグとテッサの手が魔法陣に重なり、ふたりの体がほのかな光に包まれる。


「させないんだから! 〈三重トリオ爆閃光ブリッツスパーク〉!」


 ルンの放った三つの光弾が〈水護陣バブル〉を取り囲み炸裂さくれつする。それはすさまじい光の爆発で、岩場にいたヴィンとシェラもとても目を開けていられなかった。


「これでほんとのほんとにおしまい! 〈四重カルテット光の槍(グランツクロス)〉!」


 相手の防御を打ち砕く貫通の槍が、息をつかせる間も与えずまだ光の収まらない爆発の中へ飛び込んでいく。ヴィンは思わず身を乗り出し、シェラに肩を押し留められた。

 〈水護陣バブル〉ではルンの連続攻撃に耐えられない。たとえライフは残っていたとしても、狙撃手ホッパーの銃口はもう狙い澄まされている。

 しかし、銃身の照星しょうせいをにらみつけ光が引くのを待っていたホッパーは、見えた水色の壁に息を呑んだ。


「なにか当たったかな?」


 一段下の杭に下りたミグは、頭上のテッサと視線を交わしくすりと笑う。ふたりの体をミグの〈三重トリオ防護壁シールド〉が守っていた。〈心結の儀(ヘルツリート)〉の妨害に失敗し苛立ちを隠さないルンを見ながら、ミグは自分とテッサのライフに〈二重デュオ防護壁シールド〉をかける。

 〈心結の儀(ヘルツリート)〉は互いの魔力を分け与えることのできる魔法だ。残量がほとんど底をついていたミグは、テッサから魔力を半分ほど分けてもらった。しかし〈四重カルテット〉以上の大技を放てる余力はない。テッサのほうも何度か魔法を使っていたから限界は近いだろう。

 長引かせはしない。次で決める。


「ミグ、今度は私に合わせて!」

「了解! ばっちり援護するよ!」


 剣を引き抜いたテッサを見てミグは周りを覆っていた〈防護壁シールド〉を解除する。とたん、テッサは杭を蹴って宙へ飛び出した。前方に剣先を突きつけ空を斬り刻むように円環を描いていく。

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