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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第1章 戦禍の再会
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18

 周りの兵士たちも帝国の残虐性に、あるいは仲間の無念を思って沈黙する中、ミグは暗殺者が手に白い紙を握り締めていることに気づいた。


「ラッセンさん。その人、なにか持ってますよ。あっ」


 だが言い終わった直後、腕の中の体が急に重くなってよろめく。なんとか踏み留まって覗き込んだテッサの顔色は青白く、目を覆う手はかすかに震えていた。


「テッサ!?」

「お部屋で休まれたほうがいい。ミグ、テッサ様についてあげてくれ。おい、案内しろ」


 ラッセンの指示はミグの願うところでもあった。暗殺者に狙われ、兵士の凄惨せいさんな最後を垣間見てテッサが感じた恐怖はミグの比ではないだろう。

 ラッセンの命を受けて進み出てきた兵士にうながされ、ミグは親友を「歩ける?」と気遣う。テッサは無言でうなずいた。まだ震えが止まらない白い手を取ってぎゅっと握り締める。ゆるく握り返してくれた温もりにミグは身を引き締め、兵士のあとにつづいた。

 門の前では薄朱うすあけ色の盾を持った門番がいて、〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の白壁をまるでのれんを潜るようにして開けてくれる。薄朱色は魔力を無力化させる断魔だんま鉱の色だった。

 〈五聖塔ルクス・ペンタグラム〉の結界内は砲撃音も少し遠くに聞こえた。王立病院と兵舎が対面する広場にはまだ、地下防空壕に入れていない避難民であふれ返り、白いテントの下では治療を受ける者もいる。

 負傷兵が戻ってきている兵舎のほうからは時折、苦悶の声が上がった。

 ミグは兵士の背を追って、テッサと手を繋いだまま広場を突っきった。城門を潜り、大臣と将たちの会議もおこなわれる謁見の間を見つつ階段を上がる。二階は王族の私室が並ぶ。ミグも何度か来たことがある。そのどれもが地下の裏口を使った非公式の訪問だったが。

 テッサの私室前で一礼した兵士と別れて扉を潜ったとたん、ミグはテッサに肩をぽかりとやられた。


「二度とあんなことしないで。もう心臓止まるかと思ったんだから」

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