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ぐうたら魔導師の余生  作者: 紺野真夜中
第3章 アンダー
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「地下じゃこのクズ魔石がすべて。死をいとわないゲームに参加すりゃ誰でも稼げる。勝った者が正義! お前がどこの国の出身だろうと関係ねえ。クズさえあれば毎日豪遊しようと、飛空艇を買ってどこへ行こうと誰もなにも文句は言わない! そうだろ!? てめえら!」


 ガタガタとテーブルに悲鳴を上げさせながらディレットは立ち上がった。つま先に蹴飛ばされた自分のグラスが落ちて割れようと構わない。大げさな手振りでほろ酔い状態の客たちを焚きつけ、周囲から一斉に歓声を沸かせた。


「アンダー・ゲームに乾杯!」

「いいぞこの卑怯者ディレット! たまには下りて参戦しやがれ!」

「酒でもおごれー!」

「ケチ野郎が!」


 しかし歓声はあっという間に罵声に変わった。なにが起きているのかきょろきょろしているミグの足元に、ついに中身入りのグラスまで飛んでくるようになる。「ディレット!」身の危険を感じてテーブルのコート男を呼び咎めたが、ディレットはグラスの弾ける音がまるで恵みの雨音かのように上向いて享受していた。

 つき合ってられん。ミグは這いつくばってテーブル下に逃げ込む。するとノーブルがすでに避難していた。ちゃっかり自分のグラスを持ってきてちびちび飲んでいる。乳白色の液体を見てミグが「ナッツミルク?」と問いかけると、「いえ。ただのミルクです」とつぶやいた。


「なんだかみんな血の気が多いねえ」

「私たち新参者が突然来て、気が立ってでもいるのかしら。信じられないわ」


 シェラとテッサ、ヴィンもテーブル下にぎゅむぎゅむと押し入ってきた。ミグは少し身を引いて、目が覚めたらこの乱闘騒ぎという状況にただただ目をまるくしているナキを真ん中に置く。


「これが地下アンダーの日常の光景でございます。怒号罵声、物や人が飛び交うケンカが絶えず、決闘で決着をつけたことが今にアンダー・ゲームと呼ばれる余興のはじまりでした」


 なかなか減らないミルクを不思議そうに見ながらノーブルは淡々と話す。その声が時折周りの喧騒に掻き消されて、ミグたちは自然と身を寄せ合った。

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