111
秘密の共有に目をわくわくと輝かせ、シャルとナキはシェラのまねをして「シィ」と口に人さし指を立て笑い合う。いきなりなにを言い出すのかと思えば、子どもたちを追い払う方便だったらしい。シェラは本当に口がうまいな、とほうけていたらチュニックの裾をつんつん引かれた。
振り返るとクールがいて、人さし指で「喋るな」と合図される。ちらりとシェラの様子をうかがったクールは、ミグの腕を掴んで森の中へ引っ張った。
「なに。なに。どうしたの」
小さな手を振り払うわけにもいかず、ミグは誘われるまま鉱山へとつづく斜面を登る。シェラやシャル、ナキと十分離れるまでクールは口を開かなかった。
「俺とシャルとナキだけが知るひみつの場所教えてやる。シェラにいちゃんはぜったい知らない。だって〈バックトゥバック〉のだれにも教えたことないからな」
油断すると手をついてしまいそうな急勾配をクールはずんずん進んでいく。ミグは後ろを振り返った。〈バックトゥバック〉の建物は木々に隠れてわずかに覗き見える程度だ。まだそれほど歩いてはいないが、森の中は人気が遠くに感じられてシンとしている。
ここに子どもたちだけで来たことがあるのか。ミグは静かに驚いた目でクールの後頭部を見つめた。
「私が知っちゃってもいいの?」
「いいよ。だってミグは、うーん……子分みたいなものだから?」
表面上は笑顔で「ありがとう」と言ったものの、ミグは内心がっくりと肩を落とした。テッサのようにお姉さんとして慕われたかったが、壁はまだまだぶ厚い。
クールが、ここだと立ち止まった場所には動物のねぐらのような穴が斜面にぽっかりとあいていた。危険な気配を感じ眉をひそめたミグの手を離し、クールは真っ暗な穴の中を覗き込む。近づいてみると穴の上部に木材が見えた。いや、これは屋根だ。長年の風化で土に埋もれ、雑草が覆い繁っているが暗がりの奥はぼんやりと扉が佇んでいた。
「ここに入ったことある?」




