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転生した令嬢、悪魔を拾う  作者: 強炭酸
1/2

原作ルートも改心ルートもクソ食らえだ

最近妹が夢中になっていた恋愛漫画があった。タイトルは忘れてしまったが貴族や魔法が登場するファンタジーものだったことは覚えている。

ヒロインに恋する登場人物の男キャラがとても魅力的で、私の周りの友人たちもハマっていたのも覚えている。そのせいでしつこく勧められてとりあえずやってみたけどとあるキャラの扱いが酷くて本を閉じてしてしまった。


問題は、だ。その漫画の登場人物の一人に私が成り代わってしまったということ。

しかも甘酸っぱい恋をしたりするヒロインや男キャラたちではなく、その主要人物たちに嫌がらせをする悪役、アリーヤ・ディクソンにだ。

もちろん最初は夢だと思ったから頬をつねったし、なんなら自分の頬に平手打ちをかました。普通に痛かった。

容姿は中の上。体内に流れる魔力がミリほどしかないから魔法も使えない。ダンスもあまり上手くない。

才能なんて人をいじめるぐらい、なんて言われるほどの悪役の女の子、一つぐらい才能をあげてもいいだろうに……哀れ過ぎない?


そんなアリーヤが私の目にはとても可哀想に映ったから、さっきも言った通り私はその漫画を閉じてしまったってわけ。

というかこういうのってあの漫画を読んでいた妹や友人が成るものじゃないの?……なんて思っても現状は私がアリーヤに成ってしまっている。嘆いても何も変わらないわ。

小さなため息をついて目の前の姿見を見る。

フリルのついた綺麗なドレス、緩いウェーブの長い黒髪、猫のように愛らしくも鋭い金色の瞳……どこからどうみてもアリーヤね。

この顔で中の上って、他のキャラは相当顔がいいのよね?目がおかしくならないか今から心配だわ。


――悪役令嬢に転生なんてまっぴら、そう思ったのは本当に最初だけ。

私が何もしなければこの子は普通の子だもの。

だからと言って改心して主人公のように純真無垢な女の子になる気はサラサラない。そういうキラキラしたのは光属性の方々で勝手にして。私は私の思うがままに生きてやるわ。

小説に出てくるアリーヤは別に誰かに殺されるわけじゃない。もちろん私が下手をすれば死ぬ可能性はゼロではないけれど……。

ならどうする?簡単よ、下手なことせず優雅に日々を暮らせばいいだけ。


「お嬢様」

「っ、あら、アメリア、何かしら?」

「いえ、何か考え込んでいらしたので具合でも悪いのかと」

「私にだって考えたいことの一つや二つあるわ。そんなに心配しなくても大丈夫よ」


今私の目の前にいるのはメイドのアメリア、とても優秀なメイドで悪役である私にも理解があるというか、味方というか、仕事人間というか……まあとにかくこの子が私を敵視することはないだろう。給料を挙げなかったら話は変わるかもしれないけどね。


「お嬢様、昼食の時間です」

「そう。わかった」


初めて食堂に向かう際中斜め後ろを歩くアメリアが口を開いた。


「最近は部屋で食べるとは仰らないのですね」

「食事はみんなで食べた方がいいと言ったのはアメリアでしょう?」

「ええ、ですが私がそう言ってもお嬢様は部屋で食べたいといつも駄々をこねていました。それが最近ないから珍しいな、と」

「……生きていれば気分くらい変わるわ」

「そうですか」


それだけ言うとアメリアは黙ってしまった。

食堂に着くと沢山の使用人と仏頂面の人間が二人。父親のダレルと弟のレオ、いやあ、面白いぐらい真顔ね。表情筋が死んでしまったのかしら。

ここで私が空気も読まずに「まあ!どうしたんですか?町で売っている人形の方が笑顔ですよ!」なんて言ったらこの場の空気がさらに死んでしまうため黙って席に座る。

食事を口に運ぶが脂っこいものが多くて嫌になる。絶望的に不味いというわけではないから大人しく食べるけど、それにしてもこの脂っこさはどうにかならないの?場所?時代?何が悪いの?


「ご馳走様」


早々に食事を終わらせて席を立つ。ここにいたら息が詰まってしまうからね。


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