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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

熱血先生と冷血生徒

作者: 福耳の犬

その先生はまだ30代になったばかりの、男の先生だった。


初の担任であり、色々と生徒と関係を築く為の自分なりの考えも持っていた。


その男の先生は(金八先生)や(熱中時代)(ごくせん)などの学園ドラマを漁って見ていた為に、先生という仕事に夢や希望を抱いてドラマの主人公に自分の姿を重ねていた。


一人一人の生徒に向き合おうと努力し、落ちこぼれそうな生徒には一生懸命に声を掛けた。


ある時ちょっとベタではあるが、自由交流ノートを作りクラスの生徒に回す事にした。


あいうえお順で、男女混じりの生徒から先生への自由メッセージノートである。


ある生徒は勉強の事を、ある生徒は自分の紹介を、ある生徒は部活の事などを書き記し交流は順々に進んでいった。


男子女子女子に男子、安藤、伊藤、植田、加藤、桑山・ ・ ・増田、水野、あいうえお順に・・


そしてとうとうある生徒に順番が回ってきた。


普段は目立たない、、しかしテストではある科目では学年トップクラス、ある科目では学年ワーストクラスの両極端な点数しかとらない変な生徒だ。


彼に回した自由交流ノートは直ぐ次の日に返ってきた。


中はびっしりと隙間無く書き込まれており、先に進むにつれて字は小さく行間は狭くなって彼の熱意を表していた。


題は、、【佐藤先生の料理の仕方】


内容はリアルに頸動脈からの血抜きに始まり、皮の剥ぎ方、解体の仕方、内臓の処理方法、肉料理、内臓煮込み、骨からの出汁作り、カレーにハンバーグ、ステーキにミートソース、多岐にわたり書き出されていた。


更に皮のなめし方からの皮革製品作り、髪の毛からの醤油作り、歯からのアクセサリー作り、脂肪から油の抽出と石鹸作りと詳細が書かれている。


《彼は私をどうしたいのだ?》


私は解体され料理され、工作物の素材にされている。


そこまで進行しているに・・・・


ノートはまだ半分しか読み進んでいない。


半分とはノートの面積でであり、文字は更に小さく行間は更に狭く密度を増していく。


《ゴクンッ》


出汁を取った後の骨オブジェナイフのアイデアが書かれたところで内容が大きく変わった。


【紗香さんへの拷問案】


『さ、、、紗香、、、』


《何故・・妻の名前を、、、》


そこには古今東西、ありとあらゆる拷問で徐々に徐々に妻を苦しめ痛めつける拷問の進行計画が綴られている。


《どういうつもりだ、、何故妻の名前まで知っている?偶然なのか?》


拷問には庭の木が利用され、ベランダが利用され、明らかにうちの状況を知っての内容だ。


《本気か?悪戯か?実行するのか?》


読み進む度に内容はリアルで綿密で計画性が現れていた。


そして・・・・


内容は【孤独な天音】に進んだ。


《天音、、、》


『何故産まれたばかりのうちの子を知っている、、??』


天音ちゃんを連れ出すよ。○○病院から連れ出すよ。たった一人で連れ出すよ。誰もいない所へ連れ出すよ。天音ちゃんにはね。光は無いよ。音も無いよ。匂いも無いよ。触覚もないよ。    でもね、、水滴の刺激は与えてあげる。


目を塞ぎ、耳を塞ぎ、鼻を塞ぎ、手を縛り、足を縛り、首を固定し、水を一滴一滴、、天音ちゃんの額に落としてあげる。


そこまで読んだところで、ノートの文章は終わりを告げた。


背筋がゾクッとし、喉がカラカラに渇く。


《こいつは何を考えているんだ、、私の不幸か、サディスティックな性格なのか、、妄想だけなのか、、》


本人に聞くのも恐ろしく、何もしないのは更に恐ろしく心が混乱してしまった。


《所詮、、子供だ、、イタズラ心だろう、、平静を装って話してみよう、、》


翌日、、普段通り授業も進み、授業後問題の生徒と話す機会が出来た。


『あのノートの件だが、、、』


生徒は待ってましたとニヤッと笑い、、


『先生、、冗談に決まっているじゃないですか。先生を料理するなんて、、先生(には)そんな事はしませんよ!』


『僕、、料理が好きなので、今度先生にご馳走します。』


生徒はそう話すと、立ち去りかけて立ち止まり振り返った。


『天音ちゃん、、早く標準体重になると良いですね!』


『なぜ、、知っている、、、』


生徒は何も答えず、その場から立ち去ってしまった。


その日は仕事も手につかず、遅い時間になってしまった。


家に着くと、、かの生徒が鍋を持って玄関に佇んでいる。


『先生、約束通り【肉料理】持って来たよ。』


生徒が言い終わる前に電話が鳴った。


『もしも・』


『あなた〜あなた〜天音が居なくなったの、、保育器から居なくなったの、、』


錯乱した妻の言葉がスピーカーから響き渡る。


目の前の鍋を持つ生徒の胸には《天音の写真が入ったペンダント》が玄関の灯りを鈍く鈍く反射していた。


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