085 シン コノエキシダン
目の前には、扇状に広げたトランプ片手にこちらを見据えるセバスさんの姿。
「セバスさん、あなたが俺の敵だって言うんだったら、俺だって容赦はしませんよ?」
「失礼ながら、ヒイロ様にいったい何ができると仰るのですかな?」
「俺を舐めないでください。俺は満願皇国での旅の最中に新たな力を手に入れたんです」
「ほう?」
「見せてあげますよ、俺が手に入れた新たな力…」
その瞬間、ミーアが後ろ脚で立ち上がった。
……。
ところで、さっきから気になっていたのだが、どうしてミーアは俺と同じ服装のコスプレをしているんだろうか?
ふとそんな疑問を抱いていると、ミーアがドヤ顔を浮かべる。
「んん?」
少し困惑し始めた俺には目もくれず、ミーアは右前脚を胸の前に。そして、それを横へ一薙ぎした。
「ニャぎ払え!」
***
「嫌ああぁぁぁぁ!!」
そんな絶叫と共に飛び起きると、そこは王宮の俺の部屋のベッドの上。
………。
えっ、夢…?
状況を把握しようと周りを見渡してみると、俺が飛び起きた事に驚いて後ろ向きに飛び退いたミーアがベッドの横で威嚇している姿が目に入る。
ごめんよミーア、別に驚かせるつもりはなかったんだよ。
ミーアに申し訳ない気持ちになりつつベッドから下りると、今の状況について振り返る。
……。
「そうか、昨日あの後…」
そんなことを呟きながら、部屋の入口まで移動してそっとドアを開けてみる。すると、廊下に立っていた騎士がこちらを向いた。
……。
特に何も言ってこないものの、何やら圧が凄いので俺はそっとドアを閉じた…。
そう、昨日、セバスさんに抵抗する意思を挫かれてから、俺達は騎士達にそれぞれ自室に連れていかれ、そのまま軟禁されているのだ。
昨日のことを思い出しながらベッドのところまで戻り腰掛けると、落ち着きを取り戻したミーアもベッドに上ってきた。
「どうしようね、ミーア」
そんなことを語り掛けながら撫でていると、ミーアは気持ちよさそうにしながら甘えてくる。あぁ、癒される~。
ミーアと一緒のまったりとしたひと時。こういうのも悪くない。
モフモフナデナデモフモフナデナデ。
モフモフナデナデモフモフナデナ………って、そうじゃない。今はこんなまったりとした時間を過ごしている場合じゃない。
甘えてくるミーアに後ろ髪をひかれつつも立ち上がり、状況を打開する方法を思案しつつ部屋の中をうろつく。
……。
うん、ダメだ。何も思いつかん。
そもそも、ただの高校生にこの状況を打開するって無理じゃない?
ふと冷静になって諦めかけたその時、俺の耳にミーアの鳴き声が届いた。
声の方に視線を向けると、枕元に置いてあった俺のスマホ画面をミーアが前足でタシタシと叩いている。カワイイ。
そんなミーアの行動を微笑ましく眺めていると、当のミーアは何かを訴えかけるかのようにさらに激しく画面を叩きながらニャンニャンと鳴き始める。
…。
……?
………!
「そうか、そういうことなんだねミーア」
漸く自らの意図が伝わったと理解したミーアは、満足気な表情でススッとスマホを俺の方へと押し出す。
「つまり、ミーアの可愛らしい姿を写真に収めろということだね?」
その瞬間、『そうじゃニャい!』とでも言いたげにミーアがスマホを前足で払い除けた。
飛んできたスマホを慌ててキャッチすると、そこに表示されていたのは『アカシックレコード ~紙の箱には~』のメニュー画面。
そして、ミーアは俺に向かって何かを訴えかけるようにニャアニャアと鳴き続ける。
…。
……?
………!
「そうか、ガチャか」
漸く意図が正しく伝わった事に安堵したのか、それとも手間のかかる奴とでも思っているのか、ミーアが短く息を吐く。
それはともかくとして、今までが今までだけに完全に頭からすっぽ抜けていたものの、俺にはまだ一発逆転のチャンスがあるということだ。
ここまでガチャで碌な結果が得られなかったのも、ここで一発逆転する為の布石だったんじゃないだろうか?
何よりも、ミーアが『ここ押せニャンニャン』している。これは絶対に何かある。
妙な確信を得た俺は改めてスマホの画面に視線を向ける、すると、『ガチャ』のメニューの横には『キャンペーン中! レアアイテム出現確率UP』の文字。
何だこの都合のいいタイミング。だが、ここまでお膳立てされて何もないということはないはずだ。
そして、期待に胸を膨らませながらガチャを引くと、そこには…。
―――――――――――――――――――――
タワシセット
―――――――――――――――――――――
その瞬間、俺はベッドの上にスマホを叩きつけた。
ああ、だろうね。知ってたよ。
スマホを取り上げられてないという都合の良い状況からのミーアの激推し、そして、『一発逆転する為の布石だったんじゃないのか』という思考に至った時点で、そもそもこの流れ自体が一発逆転が発生しない布石なんじゃないかと薄々感じていたよ。
そんなことを考えている間にも、スマホ画面が輝きだしてそこに開いた黒い穴から大き目の段ボール箱が現れる。それを開いてみると、中からは幾つかのタワシとスチールウール、そしてヘチマと柄付きタワシ。
手に取った柄付きタワシを見つめながら呆然としていると、背後から何やら視線を感じた。そっと視線を向けると、そこには瞳を輝かせ(ている気がする)ながら物欲しそうに柄付きタワシを見つめるタワシの塊。
………。
居たのか、束子ちゃん…。
………。
俺は、柄付きタワシをそっと束子ちゃんに差し出した…。
………。
まるでおもちゃの魔法のステッキでも買ってもらった子供のようにはしゃぎ回る束子ちゃんを見ながら、俺は何とも言えない気持ちになった…。
………。
さて、気を取り直して脱出する術を考えよう。
ミーアをモフりながら改めてスマホに視線を向けると、ふとあることに気付く。
「あ、そうだ」
というわけで、今度はスマホ片手に部屋の入口へ。そして、ドアを開けるとやっぱり部屋の前に立っている騎士がこちらに視線を向ける。
「あの…」
「何だ?」
意を決して声を掛けると威圧的な態度で応じてくる。しかし、怯んではいられない。
「えっと…。実は俺、近衛騎士団のファンなんです。写真撮ってもいいですか?」
「え? ファン?」
満更でもなさそうに照れ始める騎士。しかし、直ぐにハッと我に返る。
「違う違う。俺は近衛騎士団じゃない。幻影道化師だ」
ジーン侯爵が自ら正体バラしちゃってるんだし、もう今更どっちでもいいじゃないか。
ちょっと面倒臭いなと思いつつも仕方がないので訂正する。
「……あ、それじゃあ、幻影道化師の隠れファンなんです」
「え? ホントに? いや~照れるな~」
こいつ、そのうち怪しいツボとか買わされるんじゃないだろうか?
まあ、敵の心配なんかしてやる必要もない。作戦を進めよう。
「そっちの騎士さんも写真いいですか?」
「え? 俺も?」
そうしてオーギュストさんの部屋の前に立っていた騎士も誘き寄せると、並んで立ってもらってスマホのカメラを向ける。
「君は一緒に入らなくていいのか?」
「俺は大丈夫です。勇敢な騎士さん達の写真が欲しいだけなので」
「そうか?」
「はい、それじゃあ撮りますね」
ポーズを取った騎士を確認しつつ、『アカシックレコード』のメニュー画面の『BATTLE』をタップする。そして、騎士二人をカメラで捉えてターゲット表示が出たことを確認する。
その瞬間、思わず口元に笑みが浮かんだ。
フフフ。俺のスマホをただのスマホだと思って侮ったのがお前達の運の尽きだ。そう、誰もが(俺ですら)忘れていた攻撃手段が俺にはあるのだ。
こいつらのファンだと言ったのも全ては自然にカメラを向けられる状況を作り出す為。まさに頭脳プレーの勝利。
裏でそんな準備を整えつつ、思わずニヤけてしまった表情を引き締めてスマホを操作する。
「はい、チー…」
そうしてスマホの画面をタップしようとした瞬間、轟音と共にバルザックの部屋の扉をぶち破って巨大な斧が出現した。何か大きな塊をくっつけたその斧は不規則な軌道を描きつつ俺の真横を掠めると、そのまま騎士二人へと直撃。騎士二人を薙ぎ倒して廊下の彼方へと消えていった。
「ズ………」
活躍の機会を奪われた俺が呆然と廊下の先を見つめていると、オーギュストさんの部屋の扉が開いて中から慌てた様子のオーギュストさんが飛び出してくる。
「大きな音がしたが、何事じゃ? ……む? どうして見張りの騎士が倒れておるのじゃ…?」
見張りの騎士が倒れていることに気付くと、何があったのか説明を求めるかのように俺に視線を向けてくる。
「あ~、えっと…その…。バルザックの斧が騎士達を薙ぎ倒していきました…」
「何を言っとるのじゃ?」
うん、そういう反応になるよね。でも本当のことだもん。
その時だ、廊下の先から轟音と共に巨大な斧が戻ってきた。
「む? ………疑って済まなんだ、ヒイロ」
納得してくれたのはいいんだが、今はそれどころじゃない。
そんなことを考えている俺の隣でオーギュストさんは既に行動に移っていた。猛スピードで迫り来る巨大な斧(おまけ付き)に向けて、光球を撃ち放つ。
バルザック、撃墜。
いや、躊躇なくいったな…。
ノータイムで撃墜判断を下されたバルザックに少しだけ同情していると、粉砕された斧から放り出されたバルザックが俺達の足元まで滑り込んできた。
「バルザック、無事か?」
少し焼け焦げて白目を剥いていたバルザックだったが、オーギュストさんに声を掛けられると意識を取り戻し、どこか焦点の定まらぬ瞳で呟く。
「突然の襲撃…。0泊2日王都空の旅…。墜落事故…。気のせい…?」
気のせいじゃないと思うよ。
すると、バルザックが急に震え始めた。
「む? どうしたのじゃ、バルザック?」
そんなバルザックの頭部が馬面へと変化していくのと同時に茸が生え始める。しかし、いつものように大きく枝分かれするように成長するのではなく、小さな茸がちょこんと二つ生えると、それが手前に裏側を向けるようにして傘を広げた。それはまるで虎耳のようにも見える。
「何ということじゃ。ポニータイガーシンドロームとの相乗効果でRUNポルチーニが新たな進化を遂げおった…」
オーギュストさんがそんな驚愕の声を上げる中、バルザックが呟く。
「お空、コワイ…」
トラウマになっとるがな。
同情はするものの、いつまでもバルザックの相手をしているわけにもいかないので切り替えよう。
「さて、期せずして自由の身となったわけじゃが、この後どうするかのぅ…」
「そうですね。とりあえず、まずはアレックスさんを探しませんか?」
「なるほど、そのまま丸投げしようという魂胆じゃな?」
「うぐっ」
図星をつかれて言葉に窮す。でも仕方ないじゃないか。俺、ただの高校生だもん。こんな状況を覆す為の手段なんて持ち合わせてないもん。
「ふむ、じゃが、まあ妥当なところじゃろう。儂等だけでできることなどたかが知れておるしのぅ」
「そうですよね。それじゃあ、現状の確認もしつつ、アレックスさんを探しましょう」
「しかし、王宮内は完全に制圧されておるようじゃしのぅ…。どうやって見張りに見つからぬように行動するか…」
オーギュストさんが思案し始めたところで、俺は倒れた騎士二人へと視線を向ける。
「それなら、丁度いいのがここにあるじゃないですか」
***
「納得いかない」
不満げにそう口にすると、俺の左右をがっちりと固めた二人の騎士がそれに答える。
「文句を言うな、ヒイロ。こればっかりは仕方がないだろう」
「そうじゃぞ、鎧のサイズがお主に合わなかったのじゃからな」
そのままの姿では目立ちすぎる為、俺の提案で見張りの騎士二人の鎧を剥いで騎士に変装することになったのだが、そこで重大な問題が発覚した。
そう、鎧がでかすぎて俺には着れなかったのだ。クソッ、どうしてよりにもよってバルザック並みの体格の騎士二人を見張りに就けやがった。
そんなわけで、不本意ながらもバルザックとオーギュストさんが鎧を着て、それに連行される俺とミーア、という体で王宮内を移動することになったのだ。
…。
……?
「あれ? オーギュストさんだってサイズ合ってないはずですよね? どうやって動かしてるんですか、それ?」
「念力で動かしておる」
便利だな、おい。
そんなことを考えていると進行方向の曲がり角から足音が聞こえてきた。
「む? 見回りの騎士がおるようじゃの」
「そうみたいだな。ここは俺達が上手くやる。ヒイロ、お前は怯えたふりでもしていろ」
不満はあるものの、仕方がないので縮こまりながら様子を見ていると、曲がり角から二人組の騎士が現れた。
「ん? どうした、お前達。そいつをどうするつもりだ?」
その騎士の問いに、急に揉み手を始めたバルザックが答える。
「命令で稀人を移送中でゲス」
お前、芝居下手くそか!
「稀人を移送だと? そんな話は聞いていないぞ。おい、お前は聞いているか?」
「いや、俺も聞いていない」
騎士二人が訝しむ中、今度はオーギュストさんが口を開く。
「急遽決まったんでゲス」
あんたもか!
そもそも何なんだ、その妙なキャラ付け。
「本当か? 誰からの命令だ? どこへ移送するつもりだ?」
「それは…その…でゲス…」
矢継ぎ早に問い質してくる騎士相手にバルザックはたじたじである。
「答えられないのか? 怪しい奴め。その兜を取って顔を見せてみろ」
そう言いながら騎士二人が剣に手を掛ける。
「待つでゲス。今、兜を取って顔を見せるでゲス」
慌てながら自らの兜に手を掛けるオーギュストさん。そして、兜を外すと…、その中身は空っぽだった。
「「「「リビングアーマーだと!?」」」」
俺とバルザック、そして騎士二人の息がぴったりと合った次の瞬間、幾つもの光球が騎士二人を襲った。不意打ちの直撃を受けた騎士二人がその場へと倒れこむ中、俺達の後ろからドヤ顔のオーギュストさんが現れる。
「だから言ったであろう? 念力で動かしておると」
「中に入ってすらいないのは予想外でしたよ。というか、声、鎧から聞こえてましたよね?」
「鎧の中にスピーカーを仕込んでおいた」
「そこは魔法じゃないんだ…」
何はともあれ騎士二人を倒したことで安堵していると、ドヤ顔のオーギュストさんの後ろから複数の騎士が走ってくるのが見えた。
「居たぞ、こっちだ」
「さっきからこの辺りをうろついている徘徊老人っていうのはお前だな」
………。おい、こら。
俺とミーアの非難の視線に対して、オーギュストさんは舌をペロッと出してみせる。
「テヘ」
”テヘ”じゃねぇよ。目立たないように鎧を着て移動するという話だったのに、どうして勝手なことして目立ってんだよ、この人。
「見つかってしまったものは仕方があるまい。逃げるぞ」
不満は残るものの、そうも言っていいられないので真っ先に駆け出したオーギュストさんの後に俺達も続く。
そうして中庭の辺りまで来たところで、続々と集まってくる騎士達にとうとう囲まれてしまった。
「こうなったら、覚悟を決めるしかないようじゃな…」
「フッ、そのようだな…」
オーギュストさんが幾つかの光球を生み出し、バルザックが空に向かって手を掲げる。
するとその時、斧をぶら下げた一羽の白鷺が飛んできた。その白鷺はバルザックを一瞥すると疑問符を浮かべる。そして、辺りを一巡すると首を傾げながら飛び去っていった。
……。
「何てことだ。鎧の所為で俺だと認識できなかったのか」
うん…。いや、まあね…。こいつが斧を手にしたところで、どちらにしろ役には立たないだろうから別にいいんだけどさ。
ミーアと共に冷たい視線を向けていると、騎士達が一斉に襲い掛かってきた。
それに対してオーギュストさんが光球で必死に応戦し、俺はミーアを抱え上げて便利なコートのお世話になる。
おい、バルザック。上手いこと騎士達に紛れ込んでやり過ごそうとするんじゃない。
次々と襲い掛かってくる騎士達をオーギュストさんは光球で、そして俺はコートの裾で迎え撃つ。しかし、騎士達も光球を、そしてコートの裾を剣で薙ぎ払い、お互いに一進一退の攻防が続く。
そのまま暫く経過し、紛れ込んだバルザックがどれなのかも解らなくなったきた頃、オーギュストさんに疲労の色が見え始めた。
「くっ…。さすがは腐っても王国の精鋭部隊…。一筋縄ではいかぬようじゃな…」
そんなオーギュストさんに向かって騎士の一人が言い放つ。
「そろそろ限界のようだな。いいかげん諦めたらどうだ?」
「なにを、お主らこそ攻めあぐねておるくせに、よう言うわ」
すると、その騎士が小馬鹿にするように鼻で嗤った。
「フッ…、我々はまだ本気を出していない」
「だったら、早よ出せよ」
いや、実際に出されると困ってしまうんだが…。それでもついツッコんでしまう、ツッコミとは悲しい生き物である。
幸いにも俺のツッコミは完全にスルーされ、今度はオーギュストさんが小馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「フッ…、儂とてまだ本気など出しておらぬわ」
ガキの喧嘩か。
「お主らのようなザコ相手に本気を出しては、儂の名が廃るのでな」
廃るほどの名なんてありましたっけ?
そんなオーギュストさんの発言にカチンときたのか、騎士が語気を強める。
「いいだろう、そこまで言うのならば我等の本領、一糸乱れぬ連携を見せてやろう!」
それ、むしろ弱くなるやつでは? ぶっちゃけ、一度に相手取らなければならない敵が減る分、楽になる気がするんだが。
先の王家の菜園での出来事を思い出しながらそんなことを考えていると、騎士達がオーギュストさんを円形に取り囲んだ。
おや? コピペじゃない?
「「我々に本気を出させたこと、地獄で後悔するがいい!!」」
そんな叫びと共に一斉に剣で突きを放つ騎士達。オーギュストさんはジャンプして上に逃れようと試みるものの、霊ギュストさん不在のジャンプ力ではとても避けきれない。理想と現実の差異に気付くと、逃げ場のない全方位からの攻撃に焦りを見せる。
絶体絶命かと思われたその時、オーギュストさんの頭上に一枚の御札がひらりと舞い降りた。
「雷陣結界、急急如律令!」
どこからともなくそんな声が聞こえてきた次の瞬間、御札からオーギュストさんの周りを囲むようにして幾筋もの雷が放たれる。
すると、危険を察知した騎士達が一斉に剣を引いて咄嗟に飛び退いた。その中に一人だけ逃げ遅れて雷に打たれた奴がいるんだが、あれってまさか…。
それはともかく、御札から放たれた雷が次第に収まっていくと、オーギュストさんの隣に何者かが降り立たった。それは白の狩衣を身に纏い雑面で顔を隠した男。
そして、それと同時に中庭に鎧武者集団が雪崩れ込んできて周囲を取り囲んだ。
突如として現れた謎の陰陽師と鎧武者集団。彼等は敵か味方か。
「貴様等、何者だ!」
騎士の一人が警戒気味に声を上げると、狩衣の男がそれに答える。
「麿達は、真・麿の騎士団でおじゃる」
あっ、うん。誰なのかわかった。
***
そのころ、王国南部グリ高原では王国の部隊が荒野を爆走していた。その先頭を走る六輪式装甲車の屋根の上にはレニウム王国の国旗を掲げる赤い髪の少年。
「敵はロマネスコにあり!」
「「ヲオオオオオオ!!」」
ヒイロ 「おや? 今回オーギュストさんを取り囲んだ騎士達、コピペじゃない?」
白狐 「甘いな、ヒイロ」
ヒイロ 「え?」
白狐 「もっとよく見るんだ」
ヒイロ 「………? ん? 一人だけ微妙にポーズが違うけど、それを除くと皆ポーズが同じ…?」
白狐 「そう、二次元で見ると一見コピペに見えないが、今回の彼等は、三次元モデルを一体だけ作ってそれを使い回している(という作者の脳内設定だ)!」
ヒイロ 「実際に作る能力もないくせに」
白狐 「……」 (´・ω・`)
===
白狐 「コスプレミーア(?)、真・麿の騎士団」
ヒイロ 「武士団だろ?」
白狐 「本人達が騎士団だと言い張っているんだから騎士団でいいんだよ」
ヒイロ 「………。ところで、後ろの武士達、コピペ…?」
白狐 ギクッ
……
白狐 「だって、もともと近衛騎士団に所属していた人達だし…」
ヒイロ 「………へぇ。それはともかく、一つ気になったんだけど、武士の兜の前立が何か独特な形をしている気がする…」
白狐 「あっ、気付いた? あれは、真・麿の騎士団のシンボルだよ」
ヒイロ 「私物化甚だしい!」
白狐 「あと、もう一つ重大な秘密が」
ヒイロ 「何?」
白狐 「実は陰陽師の雑面はリバーシブル!」
ヒイロ 「五芒星と九字で顔を描くな!」
===
おまけ
今日のミーア『威嚇』




