??? ミーア キヤツト
「ミーア、おやつだよ」
厨房で貰ってきた猫のおやつを片手にミーアに声を掛けると、瞳を輝かせて嬉しそうに走り寄ってきた。
こちらをじっと見つめるミーアを愛でつつ猫のおやつの封を切ろうとした時、カイとウォルフさんがやってきて声を掛けられる。
大事な連絡事項があるというのでミーアのおやつを中断して話を聞き始めると、ミーアが『早く頂戴』とでも言いたげに足に体を摺り寄せてくる。
ごめんね、ミーア。でも、少しだけ待ってくれるかな?
ちょっとした罪悪感を抱きつつも連絡事項に耳を傾けるが、なにやら世間話を始めるばかりで一向に本題に入ってくれない。そんな状況に少し苛立ち始めていたら、急にカイが視線を下に落とした。
「………ミーアが…」
「え? ミーアがどうしたって?」
「ミーアが、ミーアが立ったー」
「クラ〇みたいに言うな」
そんなツッコミをしつつミーアに視線を向けると、後ろ脚で立ち上がりじっとこちらを見ている。
その時、ウォルフさんがボソッと呟くのが聞こえてきた。
「ミーア…キャット…」
うん、確かにミーアキャットってこんなポーズしてるイメージあるよね。でも、誰が上手い事言えと言った?
「ミーアキャット…? あ、ああ…、あれだろ、あの猫…」
ウォルフさんの呟きに反応したカイが、しどろもどろになりながら喋り始める。知らないなら知らないと正直に言えよ。
すると、そんなカイに対してウォルフさんからの指摘が入る。
「カイ君、ミーアキャットは猫じゃないよ」
「え!? ミーアは猫じゃないのか!?」
「いや、ミーアは猫だよ」
「え、でも今、猫じゃないって…?」
「ミーアキャットは猫じゃないよ。だけど、ミーアはキャットで猫なんだ」
ややこしい言い回しをやめろ。
ちなみに、ミーアキャットはオランダ語で『湖の猫』を意味するらしい。どうしてそんな名前になったのかは諸説あるらしいが、時間が有ったら調べてみてほしい。
そんな不毛な会話をしている間にも、ミーアは期待に溢れる眼差しでこちらを見つめている。だが、話が逸れてしまったとはいえ、まだ連絡事項を全く聞けていない。
罪悪感を覚えつつも、再び話し始めたウォルフさんが漸く本題に入ろうとしたので耳を傾ける。しかしその瞬間、ミーアが両前足を顔の前に持ってきておねだりポーズを始めた。
何このカワイイニャンコ!
「………ヒイロ君。連絡事項は、また後で伝えるよ…」
「え?」
「なんだか、気もそぞろみたいだしね…」
ウォルフさんには申し訳ないが、こんなカワイイおねだりをされて正気でいられるわけがない。
少し呆れ気味のウォルフさんがカイと共に去っていく中、俺はおやつの封を開ける。
「待たせてごめんね、ミーア。はい、どうぞ」
こうして、俺は美味しそうにおやつを食べるミーアを愛でるのであった。
はあ、癒し(はぁと)。
ちなみに余談だが、連絡事項の内容は『タワシマスター ヒイロ』の映画化が決まったというものだった。
………ねぇ、この国は勇者だけじゃ飽き足らず、俺をどうしたいの…?
ヒイロ 「とりあえず、どうして目線を入れた?」
白狐 「つい、出来心で…」
とりあえず言えることは、ミーアは間違いなく猫だということです。




