065 マジヨ ノ イチゲキ
バルザックを救う為に、看護長の漢伍長の案内で王宮近くにある薬局を訪れた俺とカイ、そしてハル。そんな俺達の前には怪し気な魔女の姿。
すると、漢伍長がその魔女に声を掛ける。
「ご無沙汰しております、中佐」
「おやおや、漢伍長じゃないかい。いらっしゃい」
………中佐?
最近、会話の理解に失敗する事が多いな…。理解さん、疲れてるのかな…。
そんな風に遠い目をしながらミーアとワルツをモフっていると、漢伍長がこちらを向いて魔女の紹介を始める。
「こちらの方が軍に務める傍ら、副業でこの店で薬師をしている薬師丸中佐です」
「どうも。あたしゃ堅苦しいのは嫌いなんでね、気軽にヤクチュウとでも呼んでおくれ」
「気軽に呼べないよ?」
というか、どうしてこの国の軍の連中は、こうもいろんなところで副業してんだよ。
「それで、今日はいったい何の用だい?」
魔女が尋ねると、それにカイが答える。
「それは俺から説明するぜ。実は、勇者である俺の大事な仲ま…」
そこまで言うと首を傾げる。
「大事な…仲間? …がポニータイガーシンドロームに感染したんだ」
「いや、そこは嘘でもいいから大事な仲間だと言い切ってやれよ」
「それで、あんたが過去にこの病気を克服したことがあると聞いてきたんだ」
「なるほどねぇ…。それでこの婆を頼ってきたということかい」
「ああ、そうだ」
「確かに、あたしゃ過去にこの病に侵されたことがあるよ…」
『ヒーッヒッヒッヒッ』と独特な笑い声を上げながら、魔女が何か過去を懐かしむようにして話を始めた。
「あれは今から八十年ほど前、まだこの婆がピッチピチの七…ゴホゴホ、十七歳だったころの話さ…」
今、何を言おうとした…?
「当時、王国の間者として魔国に潜入していたあたしは、近所に住んでいた同年代の婆さんと意気投合してね、家族ぐるみの付き合いをしていたのさ」
同年代…?
「そんなある日、喜寿をお祝いしてくれるというから、あたしゃその婆さんの家まで行ったのさ」
約八十年前に喜寿…? 今おいくつですか…?
「でもね、その家で待っていたのは馬面で虎耳カチューシャを身に着けた筋骨隆々な人々だった。辛うじて全身の筋肉に面影が残っていたことで、目の前の人物が婆さんとその娘、そして孫の坊やだと察したよ」
「筋肉で察しないで?」
その婆さん一家は元から筋骨隆々だったの…?
「その光景を見てあたしゃ怖くなっちまってね、つい反射的に持っていた箒で婆さんの腰に強烈な一撃をお見舞いしちまったのさ」
「魔女の一撃…?」
「しかし、婆さんはあたしの放った渾身の一撃に対してびくともしなくてね。それどころか、無理な体勢で突いたりしたもんだから、あたしの方が腰をやっちまったよ…。そう、つまり、そういうことさね」
「うん、どゆこと?」
唐突な結論(?)に対して疑問を差し挟むと、魔女は呆れたように俺に視線を向ける。
「察しの悪い坊やだね。つまり、ぎっくり腰には気を付けろということさね」
「あれ? 俺達、今、何の話をしてたんでしたっけ?」
混乱する俺をよそにカイが口を開く。
「そんなことよりも婆さん。あんたがどうやってポニータイガーシンドロームを克服したのかを教えてくれ」
「ああ、そうだったね。でもその前に、まず一つ勘違いを正しておかないといけないね」
「勘違い?」
「そうさね。あたしゃ確かにポニータイガーシンドロームに感染した…。でもね克服したわけじゃあないんだよ」
「婆さん、それはどういうことだ?」
「あたしゃね、ポニータイガーシンドロームと上手く折り合いをつけて生活していく術を見つけただけなのさ」
「折り合いをつけて生活する方法…?」
カイが首を傾げながら呟くと、魔女がそれに答えるようにして語り始める。
「婆さんのところでポニータイガーシンドロームに感染しちまったんだろうね、それから暫くして、とうとうあたしにも体を鍛えたいという欲求が沸き起こってきたのさ。感染しちまった以上、いつかはこの病が発症して馬面になるのを、筋トレをしながら待つだけの日々になるはずだった…。でもね、そんな筋トレ漬けの日々を送っていたある日、ある事に気付いちまったのさ」
「ある事?」
「あたしゃ、毎日の筋トレで全身の筋肉をくまなく鍛えているつもりでいたのさ…。でもね、ふと鍛え忘れている筋肉がある事に気付いちまった…。そして、その筋肉を他の感染者の誰一人として鍛えていないということにもね…」
思わせぶりな発言にカイが固唾を飲みながら尋ねる。
「婆さん、それはいったい何処の筋肉なんだ…?」
「それはね…」
「それは…?」
「表情筋さ! 表情筋を疎かにするもんだから、みんな馬面になっちまうんだよ!」
「俺の表情筋は今まさに崩壊寸前だよ!?」
そんな俺の叫びが虚しく響き渡る中、魔女が嬉々としながら続ける。
「あたしゃ、そこに気付いてから日課の筋トレに表情筋トレーニングを組み込むことにしたのさ。そしたらどうだい。馬面にならないどころか、顔面を意のままに変えられるようになったのさ」
そこまで言うと、魔女が帽子で顔を隠した。そして、直ぐにまた帽子を上げると、そこには若くて整った女の顔。
「こんな風にね」
さっきまでのしわがれた声ではなく、若く瑞々しい声でそんなことを言う。
「声まで若返ってる!?」
「表情筋を鍛えれば、美魔女に変身するなんて造作もない事さね」
「表情筋でどうにかなるレベルを超えてるよ!?」
俺のツッコミは見事にスルーされ、カイが魔女に尋ねる。
「つまり、バルザックも表情筋トレーニングをすれば、少なくとも馬面からは解放されるってことだな?」
その発言に魔女の顔が曇っていく。それと同時に老婆の顔に戻っていく…。
「…あんたの仲間は既に馬面になっちまってるのかい?」
「え? ああ、そうだな」
「そうかい…。残念だけどね、この方法が通用するのは発症する前までなのさ。試してみたことがあるんだけどね、馬面になっちまった後では、いくら表情筋を鍛えてみても人の顔に戻ることはなかった…」
「そんな…」
「それでも諦めきれずに表情筋を鍛え続けていたオロバスの坊やは、今頃どうしてるだろうねぇ…」
「その悪魔は感染者じゃないと思いますよ?」
最後に過去を懐かしむように呟いた魔女に対してツッコミを入れてみるが、当然の如く反応は返ってこない。
「それじゃあ、バルザックはもう一生あのままなのか…?」
カイが絶望の表情を浮かべていると、魔女がゆっくりと首を左右に振る。
「いや、諦めるのはまだ早いさね。馬面になっちまった感染者への対処方については、まだ仮説段階ではあるものの目星は付いているんだよ」
「本当か!? いったいどうすれば良いんだ?」
カイが最後の望みを託すように魔女を見つめると、魔女は徐に口を開く。
「それはね…」
「それは…?」
「ウマヅラハギで横っ面を一発叩いてやるのさ」
「なるほど!」
「いや、何がなるほど!?」
思わず叫びを上げた俺のことを見事にスルーし、カイと魔女の会話は続く。
「馬面剥という名前だけで、なんだか効き目がありそうな気がしてこないかい?」
「ああ、確かにそうだな!」
「名前だけじゃどうにもならないよ!?」
「何言ってるんだい坊や。実際には効能がない偽薬でも、効能があるといって投与するだけで病が改善することだってあるんだよ」
「なるほど、スパシーボ効果ってやつだな!」
「唐突な ツッコミどころに ありがとう!」
思わずそんな叫びを上げた瞬間、足元のミーアが『君まで壊れニャいで!?』とでも言いたげに俺のことを見上げた。
ミーアって、実はツッコミ属性だと思う。
「それにね、あたしだって何の根拠もなくこんなことを言ってるわけじゃないんだよ」
「何か心当たりでもあるのですか?」
ハルが尋ねると、魔女が答える。
「ああ、実はね、ポニータイガーシンドロームの背後には聖肉教会が関与しているという噂があるのさ」
「……は? 精肉協会?」
わけもわからず思わず呟くと、隣のハルからの訂正が入る。
「聖肉教会です、ヒイロ様。聖肉教会は魔国を中心に世界中で幾度となくテロリズムを繰り返してきた筋肉至上主義を唱える教団です」
「何そのカルト教団…」
呆然とそんなことを呟いていると、ハルは魔女へと視線を戻す。
「それで、聖肉教会が関与していることと、ウマヅラハギがポニータイガーシンドロームに効果があるかもしれないということにどのような関係が?」
「簡単な話さね。肉と魚は何かと比較されるものだからね。つまり、肉に対抗するには魚というわけさ!」
ハルの問いに、魔女がドヤ顔で答えた。
「いや、ちょっと待って? 今聞いた話によれば、その聖肉教会とやらが掲げる『肉』って食肉じゃなくて筋肉ですよね? それだと、魚肉も筋肉の内なのでは?」
そんな俺の正論に、一瞬魔女が真顔で黙る。
ちなみに、足元ではミーアが『もっと根本的なところでおかしいよ?』とでも言いたげに俺を見上げている。
「…………とにかく、こうしちゃいられないさね。直ぐにでもウマヅラハギの準備をしないとね」
「あ、無視ですか?」
「というわけで、あたしゃこれからウマヅラハギの仕入れに行くわけなんだけど、一緒に行くかい?」
「あ、はい」
「そうかい…。だったら…、40分で支度しな!」
「結構時間くれる!」
だが、今外出の支度が必要なのは俺達ではなくむしろこの魔女の方なのではないだろうか…?
そんなこんなで、俺達は薬局の近くにある鮮魚店、その名も『鯛亭』へと足を運んだ。
看板の隣に描かれている赤い魚が明らかに鯛ではないのだが、きっと気にしてはいけないのだろう。
そんなことを考えつつも店先に視線を向けると、そこに黒髪ショートヘアで褐色の肌の女の人が立っているのが見えた。
「あれ? エリサさん?」
俺が声を掛けると店先に並んだ魚を見ていたエリサさんがこちらへと振り返る。
「あら、ヒイロ君。それにカイ君にハルも、こんなところでどうしたの?」
「あ、俺達は………」
そこまで言い掛けて、自分自身が何故ここに居るのかを理解できていないことに気付く。
「……よくわからないけど、どうしてもウマヅラハギが必要になったんです……」
そんな風に遠い目をして呟いた俺の姿と、得体の知れない看護師と魔女を伴っているという状況にエリサさんは何かを察したらしい。戸惑いがちに、それでいて同情するように、『ああ…、そういうことなのね…』とだけ呟いた。
さて、いつまでも遠くを見つめていても仕方ないので、気を取り直して話を続けることにしよう。
「エリサさんは買い物ですか?」
私服姿の彼女は既に他の店を回ってきたのであろう、手からぶら下げている買い物袋からは大根が垣間見える。
「ええ、そうなの。今日は非番で、夕飯の食材を買いに来たのよ」
「へぇ、エリサさんってこの近所に住んでるんですか?」
「そうよ。去年、ウォルフと結婚してからここの裏手にある公園……だった場所……を挟んだところにあるアパートに引っ越してきたの」
だった場所…?
一瞬、表情に陰りが帯びた気がするのは気のせいだろうか…?
「そうですか」
とりあえず、余計なことを聞いてこれ以上心労を増やしたくない俺は無難にやり過ごすことにした。
エリサさんとそんな会話を交わしていると、そこへ立派な顎髭を生やした胴付き長靴姿の店主が近付いてきた。その顎髭は二股に分かれ、毛先がカールしている。
「お客さん達、今日はいい鯵が手に入ったんだよ」
「鯵…ですか?」
そうやって店主が店先に並べられた鯵を指し示すと、エリサさんがそれを見つめた。
「ああ、この裏の鯵菜園で収穫したばかりの採れたて新鮮だよ」
……ん?
理解しがたい発言に思わず思考停止していると、俺の視界の端を何かが横切った。それは銀色の体をして尾鰭にかけての稜鱗が特徴的な魚。
………鯵が空中を泳いでいる。
俺の頭の中では理解さんが頭を抱えている。もちろん、俺も頭も抱えている。
そんな空中を漂う鯵を見ながらワルツが首を傾げ、ミーアが届きもしない前足で猫パンチを繰り出し始める。
モフモフ達の可愛い仕草を眺めながら現実逃避をしていると、店主が徐にタモ網を持ち出してきて鯵を捕まえた。
「おっと、飛空鯵がこんなところまで…。偶に鯵菜園から成熟した個体が泳いでくるんだけどね、これがいい具合に脂が乗って美味いんだ。買ってくかい?」
「そんな得体の知れないものはいらん」
「紫蘇の葉を添えて食べるのがおすすめだよ」
「今あなたが持ってるのは紫陽花の葉ですが?」
ちなみに、紫陽花の葉には毒があるらしいので注意が必要だ。
そんな風に店主と不本意な掛け合いを繰り広げる俺の後ろでは、『とてもいい雰囲気の公園だったのに…』とか呟きながら遠い目をしているエリサさん。
あ、この人も苦労人だ…。
そんな風にエリサさんにシンパシーを覚えていると、ハルが声を掛けてきた。
「ヒイロ様、折角ですので今日の皆様の夕食の材料を買っていっても良いでしょうか?」
「それ、今やらないといけないこと?」
俺達、一応バルザックを救う為にここに来てるんだよね?
というか、俺にはハルの仕事の範囲が未だによくわからないよ?
「いえ、新鮮な鯖が目に入ったものですから、つい…」
ハルが店頭に並んだ鯖に視線を向けながら残念そうに呟くと、店主が顔を綻ばせる。
「お客さん、お目が高い。これは今朝水揚げされて漁港から直送されてきた新鮮な鯖なんだ。味は保証するよ」
すると、ハルが許可を求めるように俺をじっと見つめる。
「いや、もう買っていけばいいんじゃないかな…?」
「ありがとうございます、ヒイロ様」
そもそも、俺の許可とか必要なんだろうか?
「それでは、鯖を四尾頂けますか?」
「はいよ。鯖四でいいね?」
「はい」
ハルが答えると、店主は店頭に並んだ鯖を袋の中へと入れていく。そして、三尾入れたところでその袋をハルに渡した。
「はい、それじゃあ鯖四尾で¥800だ」
「…三尾しか入っていませんが?」
ハルが尋ねると、店主は不思議そうに首を傾げた。
「え? だって鯖読んでいいって言ったじゃないか」
「ハル、落ち着いて」
とりあえず、まずはその袖口から顔をのぞかせているナイフを仕舞おうか?
そんな風に無言で殺気を放つハルを止めていると、魔女が店主に小声で囁きかけるのが聞こえてきた。
「こらこら、シャルル坊や。あんまり阿漕な商売をしてると、アルちゃんに告げ口しちまうよ?」
この店主も結構な歳に見えるが、それを坊や扱いしてしまう魔女。本当に、この人今いくつなんだろうね。
そんなことを考えていると、店主が震えあがる。そして、コソコソと話し始めた。
「それだけはご勘弁を。アルジーヌの姐御の組織を引き継ぐ時、姐御とは堅気の人には迷惑をかけないと約束したんだ」
「だったら、せめて表向きの商売くらいは真面目にやるこったね」
アルジーヌさんの知り合い…?
「それに、あの子はちょっと前までアルちゃんのところの孤児院に居た子だよ」
「え? あ、本当だ…」
「カモにするんなら、きちんと相手を選びな」
「はい…」
少し気になったが、会話に不穏な内容が含まれている為、追及するのはやめておいた。
「さて、そんなことより…。シャルル坊や、ウマヅラハギはあるかい?」
「ウマヅラハギですか。それならいいのが入ってますよ」
そうしてウマヅラハギを手に入れて病室に戻った俺達は今、サイドチェストを決めている馬面の男と対峙している。
すると、カイが俺にウマヅラハギを渡してきた。
「ヒイロ、この大役はお前に譲るぜ」
「え? 別にやりたくないんだけど?」
「いや、お前以外にこの大役を担える奴はいない。これからは、『皮剥』のヒイロ改め、『馬面剥』のヒイロと呼ばせてもらうぜ!」
「お前のその分厚い面の皮から剥いでやろうか?」
理解者面してとてもいい笑顔で語りかけてくるカイに苛立ちを覚えていると、魔女がジェスチャーでウマヅラハギを渡すように要求しながら声を掛けてきた。
「こらこら坊や達。これはあたしの役目だよ。あんたのようなヒョロッとした軟弱坊やじゃ力不足さね」
「そんなに体格変わらないじゃないですか」
少しだけムッとして反論すると、魔女が得意気な表情を浮かべる。
「ハッ、舐めんじゃないよ坊や。あたしゃ八十年以上に渡って体を鍛え続けてるんだよ。確かに太りにくい体質なのが災いしてガタイはデカくないが、このローブの下には細マッチョな肉体が隠れているのさ。あたしゃ、脱いだら凄いんだよ!」
「あ、脱がなくていいです」
自らのローブに手をかけようとした魔女を制止する為に、咄嗟にウマヅラハギを差し出す。
すると、魔女は俺からウマヅラハギを受け取ってバルザックと向き合った。
「わかればいいさね。さて、それじゃあ、あたしの仮説が正しいかどうか試させてもらうとしようか」
そう言ってウマヅラハギの尾鰭の辺りを掴んだ右手を振り被ると、バルザックの横っ面めがけて渾身の一撃を放つ。
「ホォォォ…、ホアチャアァァァ!!」
魔女の叫びと共にウマヅラハギがバルザックの左頬にクリーンヒット。その瞬間、周囲に肉片と血が飛び散った。そして、バルザックの腕が力なくダランと垂れ下がり、続いて体がその場へと崩れ落ちる。
………え?
その惨状を前にして俺が放心していると、倒れたバルザックにオーギュストさん(幽霊)が近付いていく。そして、恐る恐るその頭部の辺りを覗き込むと、彼の顔が見る見るうちに青褪めていくのがわかった。
「ス…」
「ス…?」
「スプラッター……」
………え?
俺も倒れているバルザックに恐る恐る視線を向けてみるが、その頭部の辺りにはモザイクがかかっている。
………え???
「安心おし。弾けとんだのはこの男の頭じゃなくて、ウマヅラハギの方さね」
魔女はそんなことを言いながら右手に残ったウマヅラハギの尾鰭を見せる。
「ちょっと魚の内臓をぶち撒けちまったからね、アフターサービスでモザイク魔法を掛けておいたよ」
何その魔法…。
「でも、これであたしの仮説が証明されたということさね」
モザイクの所為で俺には確認できないが、どうやらバルザックは無事に元に戻ったらしい。
何故戻ったのかは全くわからないが、何にしてもバルザックは無事に元に戻った…らしい…。
俺が遠い目をしていると、魔女が感慨深げに呟く。
「オロバスの坊やにも教えてやらないとね…」
その悪魔には効果ないと思いますよ?




