057 ケツシヨウ
「狐怨怨怨怨怨!」
九尾の狐が大きな声で一鳴きすると周囲を強烈な衝撃波が襲った。
その衝撃波に耐えながらカイが狐に視線を向ける。
「九尾の…狐…?」
「そうだ。あれこそが、嘗てこの国を恐怖の渦に巻き込んだと伝わる玉藻のもう一つの姿だ」
おい、もう一つの姿、いったい幾つあるんだよ?
レオさんの発言に対してそんな疑問を抱いていると、同じく衝撃波に耐えているハルが尋ねる。
「玉藻様はまだ正気に戻られていないご様子…。蝉同様、あれも制圧対象ということで宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだな。さっきとやることは変わらない。まずは全力であいつを無力化する」
「そうですか。では、遠慮なく…。Eise…」
ハルが上空で待機する『鋼鉄の乙女』へ指示を出そうとした時、それよりも先に周囲に妖艶な声が響き渡る。
「玻璃の結晶」
狐がその場でふわりと浮かび上がりながら、口元を歪めるようにして笑みを浮かべる。すると、その周囲に幾つかの透き通った六角柱が形成され、それが『鋼鉄の乙女』めがけて撃ち出された。
六角柱は一直線に飛んでいくと黒い箱へと直撃する。弾き飛ばされながらもなんとか立て直す黒い箱にさらに二撃目、三撃目が直撃。そして、黒い箱がとうとう地面へと叩きつけられた。
しかし、それでも追撃は止まず、その周辺へ向かってさらに六角柱が撃ち込まれる。
黒い箱は寸でのところでそれを回避すると、ハルの元へと向かう。
九尾の狐はその様子を上空から悠然と見下ろすと、再び口元を歪めるようにして笑みを浮かべた。
すると、空一面に無数の透き通った六角柱が形成された。直後、それらが一斉に降り注ぐ。
「まずい。全員、俺の後ろに退避しろ!」
レオさんが退避を呼びかけると同時に大剣を一気に振り上げる。
「有言実行! 金城鉄壁!」
大剣の動きに合わせるようにして地面から壁が立ち上がると、それが飛来する六角柱を受け止めた。しかし、広範囲に降り注ぐそれは、地面へ、そして周囲を囲っている結界へと直撃する。
猛烈な勢いの攻撃が途切れることなく続く中、九尾の狐がさらに動きを見せる。
「炮烙の刑」
妖艶な声が周囲に響き渡ると、結界を発生させている塔の直下で炎が巻き起こる。
炎に煽られて金属製の塔が熱せられると、それに伴って結界内の温度が急上昇し始めた。
すると、焦りの表情を浮かべつつカイが呟く。
「くっ…、あいつ、俺達をこのまま蒸し焼きにする気か?」
「そうはさせない」
レオさんは大剣を構え直すと叫びを上げる。
「有言実行! 寒気凛冽!」
次の瞬間、塔の周囲が極寒の大地へと変貌した。
それと同時に急激に冷やされた塔に罅が入り、大きな音を立てて崩落していく。
「しまった、結界が…」
レオさんが消えていく結界を前に呆然としていると、ハルが動きをみせる。
「Eiserne Jungfrau. Nr.vier」
「Yes Master. Code-04 release」
『鋼鉄の乙女』がハルの指示に応じると、縦半分に割れてその中に砲身のようなものが形成される。
ハルはそれを小脇に抱えるようにして掴むと、前面にそびえ立つ壁の横から飛び出してその先端を九尾の狐へと向けた。
すると、砲身から勢いよく火炎が噴射され九尾の狐へと襲い掛かる。
九尾の狐は冷静にそれを一瞥すると口元を歪めた。それと同時に周囲に妖艶な声が響き渡る。
「玻璃の宝玉」
その瞬間、狐を透明な球状の壁が囲い込み、それによって迫っていた炎が遮られた。
すると、レオさんが気を取り直して九尾の狐に鋭い視線を向ける。
「結界が破壊されてしまった以上、早期に決着をつけるしかない」
何か言っているが、結界にとどめを刺したのは他でもないこの人だ。
「有言実行! 玉石同砕!」
レオさんが大剣を振るうと目の前に聳えている壁の一部が石の礫となって飛び出した。それと同時に壁を足場にして(さり気なく壁走りしてやがる…)カイが空高く跳び上がる。
石の礫が勢いよく九尾の狐の方へ飛んでいくと、その周囲を囲っていた透明な壁へと激突して共に砕け散る。その瞬間を狙ってカイが狐に向かって邪剣を振り下ろした。
「くらえ! 狐ヲ喰ラウ者!」
邪剣が九尾の狐を呑み込もうと大きな口を開く。すると、狐がそちらを一瞥し口元を歪める。
「宵闇の帳」
周囲に妖艶な声が響き渡ると、急に辺りが暗転し闇夜に包まれた。すると、大きく口を開いていた邪剣の瞼がトロンと眠たげに閉じ始め、持ち主と共に眠りに落ちる。
この時、俺は地面へと落下していくカイを眺めながらも、ふとある事実に気付いた。
この狐、攻撃パターンがさっきの蝉と似てる。
俺がそんなことを考えている中で、睡魔に襲われつつもなんとか堪えているハルとレオさん。すると、レオさんが大剣を掲げて叫びを上げる。
「有言実行! 光輝燦然!」
大剣から眩い光が発せられると、周囲を明るく照らして闇を振り払う。その眩い光によってカイが目を覚ました。
さらに、コートのフードの一部が遮光バイザーのように変化したことで眩い光を直視することを避けられた俺の横で、さっきからずっと眠りについていた者達も目を覚まし始めた。
「……何だ、眩しいな…」
そう言いながらバルザックがノソッと起き上がると、周囲を見渡すなり驚いたように声を上げる。
「何だこの惨状は!? 俺が魔王討伐の旅から帰ってきてみれば…、いったい何があったんだ!?」
「お前はいったい何処へトリップしていた?」
冷めた視線を送りつつツッコミを入れていると、バルザックがこちらを向く。そして、俺を見るなり怪訝そうな顔を浮かべた。
「……お前、どうしてミニスカートを穿いてるんだ?」
「お前もだよ」
だが、改めてそんな真面目に指摘されると急に恥ずかしくなってきた。
状況に耐えられなくなった俺は、そっとコートの前を閉じてみる。
すると、慌てたようなレオさんの声が聞こえてきた。
「ヒイロ、何をする気だ!」
何事かと思ってレオさんに視線を向けると、その瞬間、俺達の周囲を囲んでいた四角錐型の光の壁が消失した。
「え?」
「ヒイロ、どうして絶対領域を解除したんだ」
「え???」
「どうして絶対領域を否定するような真似をしたのかと聞いているんだ」
「特殊な解除条件ってこれかよ!」
いつの間にか俺の下半身はいつものズボンに戻っている。
「…今は絶対領域を再展開している余裕はない…。君はその白猫と一緒にそこでおとなしくしているんだ」
そんなことを言うレオさんの横では少し残念そうな表情でこちらを見ているハルの姿。
ねぇ、ハルは俺をどうしたいの?
ハルに気を取られていると、後ろから突き刺さるような視線を感じた。振り返ってみると、安全地帯を失った狐達が俺に非難の眼差しを向けている。
…あれ? この狐達、チベットスナギツネだったっけ?
腕の中から訝しげな様子でじっと見上げてくるミーアを抱きつつ、いたたまれない思いをしていると、周囲に妖艶な声が響き渡る。
「玻璃の筵」
うん、的確な状況説明をありがとう。
今はそんな場合ではないことはわかっているのだが、ついそんな考えが頭を過る。そんなことを考えていたのも束の間、大地が振動を始めると地面から透明な針状の物体が幾つも飛び出してきた。
不意を突かれた俺に針が迫る。そして、その針に貫かれそうになったその時、何者かが俺を押し退けた。
体勢を整えながら慌てて俺を押し退けた相手に視線を向けると、そこには一面に広がる大地から突き出した無数の水晶の針。そして、そこで串刺しになっている………大量の茄子。
………???
「どうやら、身代わりの術が間に合ったようだな」
そんなことを呟くトロンボーンの隣では、『この茄子は自分が提供しました』と書かれた紙を掲げるウォルフさんの姿。
状況を呑み込めずに呆然としていると、ウォルフさんが上空の九尾の狐へと鋭い視線を向けた。
「さて、今度はこちらの番だね。期せずして大量の茄子が準備できました。ここからは、棒茄子タイムです」
その声に反応して、串刺しになっている茄子達が自らの力で刺さっている針を砕いていく。すると、そこに現れたのは砕け散った水晶が棒状の破片となって四隅に突き刺さった茄子。
「いや、精霊馬じゃん!」
いつの間にか胡瓜も混じっている。
「さあ、今から君達に勝利の方程式を見せてあげるよ」
するとウォルフさんは腰からバッグを外してその中身をばら撒いた。
「魅惑のB茄子+舞茄子=B茄子騎士団!」
「何もかもが未知数でしかない!」
そんな俺の悲痛な叫びが虚しく響き渡る中、バッグの中から両手(?)に鷹の爪を構えた大量のB茄子が現れ、精霊馬の上に跨った。
続いてウォルフさんはバッグを腰に戻しながら中から二本のジャックナイフを取り出すと、一体だけ何も持たずにウォルフさんの前に待機していたB茄子にそれを渡す。
「ジャック、これが君の新しい体だ。君にB茄子騎士団団長としての任を与える」
ウォルフさんが茄子のジャックに語り掛けると、ジャックがウォルフさんを見上げる。その様子を見ていると、『良いのか、相棒? 切り裂く事しかできない俺にこんな大役…』という幻聴が聞こえてきた…ような気がした。
それに対してウォルフさんが優しい笑みを返すと、ジャックは覚悟を決めたように振り返り胸を張って颯爽と胡瓜へと跨った。
そして、ジャックナイフを持った右手を高々と掲げると、一気に振り下ろして突撃の合図を出す。心なしか『突撃ぃ!』という幻聴が聞こえる気がする。
とりあえず、騎士の武器が折り畳み式ナイフで良いのだろうか…?
……いや、鷹の爪よりはましか?
ジャックの突撃の合図に従って一斉に九尾の狐へと進軍を始めるB茄子騎士団。胡瓜に跨っている個体が先行し、茄子に跨っている個体がその後に続く。地味に芸が細かい。
それにしても、この人、何でもありだな…。
そんな風に呆然とその様子を眺めていると、周囲に妖艶な声が響き渡った。
「狐火」
九尾の狐の周囲に幾つもの炎の塊が形成されると、それがとある動物の姿を形作る。
うん、レッサーパンダだ。
進軍するB茄子騎士団をレッサーパンダの群れが迎え撃つ。そうして、レッサーパンダと茄子による乱戦が始まった。
はて、俺はいったい何を見せられているんだろう…?
互角に戦っているように見えたレッサーパンダと茄子だったが、次第に茄子が押され始める。一体、また一体と、次々に焼き茄子に姿を変えては俺達の前に並べられていく。
「この茄子は農家の皆さんの血と汗の結晶です。せめて最期は美味しく頂いてあげてほしい」
苦渋の表情でそんなことを呟くウォルフさんと、焼き茄子を美味しく頂くその他大勢。
何やってるんだろう、こいつら…。
ミーアと共に呆れながらその様子を眺めていると、ウォルフさんが上空で繰り広げられている戦闘に視線を向けつつなにやら分析を始める。
「それにしても、胡瓜部隊は善戦しているけど、茄子部隊の分が悪い…。やはり、瓜の獣を相手取るには、こちらも瓜で部隊を固めた方がよかったのかな…?」
「は? 何を言ってるんですか?」
「ほら、『狐』は『瓜』の『犭』だからね」
「いや、違いますよ!?」
『狐』という字は形声文字だ。鳴き声の『こ』を現すのに『瓜』という字を当てて、それに『犭』を付けて狐を表現しているに過ぎない。
そう、『狐』という漢字の造部分の『瓜』は瓜とは全く関係ないのだ。
「というか、そもそも茄子が相手してるの狐じゃなくて小熊猫じゃん!」
俺の叫びを完全にスルーしたウォルフさんは、胡瓜に跨った茄子達を心配そうに見つめながら、『九尾の狐に対抗する為に、こちらも胡瓜の狐を投入した方が…』などと呟いている。
もう勝手にしてくれ…。
そんな諦めモードの俺に向かって、腕の中のミーアが『ミャオ』と鳴きながら前足でポンポンと叩いてくる。慰めてくれるのかい?
そうそう、ちなみに『猫』も『犭』に鳴き声を現す『苗』で構成される形声文字だ。
ミーアをモフりながら現実逃避していると、バルザックが動き出した。
「さて、腹ごしらえも終わったことだし、そろそろ俺の出番だな」
「バルザック。じゃが、お主は今武器が…」
オーギュストさん(幽霊)が気遣うように声を掛けると、バルザックが自身満々に笑みを浮かべる。
「フッ、それなら問題ない。そろそろ来る頃だ」
「来るとは、いったい何がじゃ?」
幽霊が不思議そうに尋ねると、どこからともなく羽搏きの音が聞こえてきた。
「バルザックさん、お届け物です」
そう言って現れたのは斧をぶら下げた一羽の白鷺。その鷺が近くへと着地する。
「丁度良いタイミングだ。さあ、斧をこちらへ」
「代金引換です。支払いをお願いします」
「ん? おお、そうだったか?」
バルザックが自らのスマホを鷺が持つ端末へ翳すと、『Critical!』という音と共に決済が完了する。
こいつは、いつになったら騙されていることに気付くのだろうか?
そんなことを考えながら、斧を引き渡して飛び去っていく鷺を見送る。
「さあ、待たせたな。この斧さえあれば、俺に敵は無い!」
高らかに宣言しながら、『6』と刻印された斧を掲げて駆け出すバルザック。そして、手近なレッサーパンダの後ろへと回り込むと斧を振り下ろした。
しかし、レッサーパンダも負けてはいない。バルザックが迫っていることに気付くと咄嗟に振り返り、向かってくる斧を両前足で挟み込んで受け止める。
ちなみに、姿形こそレッサーパンダであるが、その実態は炎の塊である。
じりじりと熱せられる斧。
……。
「ぅ熱っちぃぃ!」
バルザックが堪らず斧から手を放した時、俺の隣では幽霊が幾つかの光球を生み出していた。
あっ、これ、いつものパターンだ…。
「危ない、バルザック。そこを離れるのじゃ!」
光球は一直線に斧へと向かうと、それを爆砕。その余波でバルザックをも吹き飛ばした。
そんな中、悠然と爆炎から離れていくレッサーパンダ。それを幽霊が悔し気に見つめる。
「おのれ、バルザックをこんな目に合わせおって」
俺の視線の先には砕け散った斧とこんがりローストされた牛さんの姿。
この幽霊はバルザックとその斧に何か恨みでもあるのだろうか?
俺の周辺でそんなコントが繰り広げられている一方、レオさん、ハル、カイは九尾の狐との激闘を繰り広げていた。
上空から悠然と見下ろす九尾の狐が口元を歪めると、周囲に妖艶な声が響き渡る。
「玻璃の結晶」
上空に幾つもの透明な六角柱が形成され始めると、対抗するようにレオさんが大剣を掲げる。
「有言実行! 玉石同砕!」
周囲の地面から幾つもの石の礫が浮かび上がると、上空より飛来する水晶を迎え撃つ。そんな応酬が繰り広げられる中、ハルが動いた。
「Eiserne Jungfrau. Nr.acht」
「Yes Master. Code-08 release」
『鋼鉄の乙女』が縦に四つに割れると、その間に大きなエネルギーが集中し始める。すると、そこに光すら歪めるほどの重力場が発生した。
「Gravitation」
ハルが静かに告げると、空から悠然と見下ろしていた狐が急に上から圧し潰されるにして落下し、地面へと叩き落とされた。
そんな力を受けつつも、四つの脚で大地を踏み締めそれに抗う狐。その機を逃さずカイが狐に斬りかかる。
「これでもくらえ! 狐ヲ喰ラ…」
「狐怨怨怨怨怨!」
叫びながら邪剣を振り下ろそうとしたカイだったが、その攻撃は急に伸びてきた九本の尻尾によって阻まれた。
九尾の狐が大きな鳴き声を上げながら尻尾を振り回し辺り一面を無差別に薙ぎ払う。その直撃を受けたカイは地面へと叩きつけられ、『鋼鉄の乙女』が弾き飛ばされる。
その攻撃は留まるところを知らず、尻尾の一本が俺達の方にまで迫ってきた。
「ぬっ!? 危ない、バルザック!」
オーギュストさん(幽霊)がそんなことを叫びながら地面で倒れているバルザックの前へと躍り出ると、その前面に光の壁を展開する。
そして、その光の壁で迫り来る尻尾を受け止めようとした時、オーギュストさん(幽霊)は急に真顔になって呟いた。
「あっ、無理じゃ、これ…」
次の瞬間、尻尾が幽霊をすり抜けた。尻尾はそのまま地面に倒れていたバルザックにクリーンヒット。バルザックはどこか遠くへと飛ばされていった。
「なんという威力じゃ…。密度を調整してすり抜けておらなんだら、この精神体ですらも散らされておったやも知れぬ」
そろそろ、バルザックの命が散りそうだよ?
そんな俺の目の前では、九本の尻尾が暴れまわり大地を蹂躙している。
完全に背景と化してきたモブ侍達が薙ぎ払われ、狐達が逃げ惑う。俺にも尻尾が迫ってくるが、それを悉くコートの裾が打ち払う。
状況についていけない俺は、ただただミーアを抱いて呆然と立ち尽くすのみだ。
そんな中で、弾き飛ばされつつも立て直して上空に留まった黒い箱に向かってハルが冷静に告げる。
「SchwarzesLoch」
次の瞬間、九尾の狐の周囲の景色が大きく歪み、その体が圧し潰されるようにして地に叩き伏せられた。
「狐怨怨怨怨怨!」
九尾の狐が悲鳴にも似た大きな鳴き声を上げると、茄子と闘っていたレッサーパンダ達が一斉に標的をハルへと変更する。
そんな迫り来るレッサーパンダ達の前にカイが立ち塞がった。
「させるか! これでもくらえ! 炎ヲ喰ラウ者!」
大きく口を開いた邪剣に為す術無く呑み込まれるレッサーパンダ達。そして、カイはその勢いのまま邪剣を振り抜く。
「アーンド、吐出!!」
邪剣から吐き出された炎が九尾の狐を包み込む。
炎に煽られながらも、九尾の狐は四肢に力を入れて再び立ち上がる。
「こいつ、まだ動けるのか?」
カイがそう呟くや否や、妖艶な声が響き渡る。
「玻璃の結晶」
九尾の狐の周囲に無数の透明な六角柱が形成され始める。
そんな九尾の狐へレオさんが視線を向けた。
「そろそろ勝負を決しよう」
そう言うと、レオさんは地面に落ちていた林檎を拾い上げた。これは、さっきの蝉との戦闘でウォルフさんが使っていた鷹の爪が刺さった林檎だ。
レオさんはその林檎を上に向かって放り投げると、大剣の切先を向けた。
「有言実行! 万有引力!」
レオさんが林檎に向けていた大剣の切先を九尾の狐へと向ける。すると、林檎が九尾の狐に引き寄せられていく。
さらに、それに続くようにして周囲に形成されていた透明な結晶が一斉に引き寄せられ始めた。
突然の事態に驚く九尾の狐だが、咄嗟に尻尾で抵抗を試みる。しかし、重圧がかかっている尻尾は上手く動かない。
「狐怨怨怨怨怨!」
そんな叫びを上げながら最後のあがきをみせたものの、九尾の狐は全方位から襲来する結晶に圧し潰されるようにしてその中に封じ込められていった。
ヒイロ 「………というか、ぶっちゃけ前話の蝉の件って必要だった?」
白狐 「正直な話、無くてもストーリー展開上何の問題もない」
ヒイロ 「おいこら」
白狐 「ストーリー? あんなのオマケです。偉い人にはそれがわからんのですよ」
ヒイロ 「お前にストーリー考える能力が無かっただけだろ」
白狐 「………」 (´・ω・`)
結論:
白狐 「正直な話、作者には文才もなければストーリーを考えるような能力もない。そんな作者が辿り着いた結論。それが『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』だ。そう、この作品の真価は、どれだけ多くの小ネタを突っ込めるかにかかっている」
ヒイロ 「ロクでもねぇ…」
===
おまけ
玉藻さん家の家紋『狐の丸』
………気分転換に描いてみただけで特に深い意味はない…