039 シシ フンジン
「上級戦闘員に昇進したシタッパー達をこうも簡単に片付けるとはな…」
感心したようにそんなことを呟くライオンだが、奴らは半分くらい自滅だった気がする。
「だが、ここまでだ。ボクサー猿人、あれをやるぞ」
「了解だ、ボス!」
ライオンが胸ポケットに挿していたタンポポ(おそらくカントウタンポポだ)を指で摘み、自分の顔の前へと翳した。
「鼓草、セットオン!」
ライオンの上げた声に合わせてタンポポの花が綿毛へと変化する。そして、ライオンが息を吹きかけると、その綿毛が舞い上がった。
警戒して距離を取ろうとしたレオさん達だったが、綿毛は流れるように拡散し彼らに付着する。
すると、そこにタンポポの花のマークが現れた。
「やれ、ボクサー猿人」
「ウホッ。ドラミング!」
ライオンの指示を受けて、ゴリラがタンクトップを脱ぎ捨てるとドラミングを始める。
あ、手の形、ちゃんとパーだ。
俺が割とどうでもいいことに気を取られていると、ゴリラの背後に黒い靄が集まり、巨大な腕がいくつも現れた。
「「コンビネーションアタック、ドラムセット!」」
「もうちょっと名前なんとかならんかったか!?」
ライオンとゴリラが叫ぶと、巨大な腕がレオさん達を襲う。
レオさんが振り下ろされた腕を躱すと、その腕がまるで吸い寄せられるように急に向きを変えてレオさんを追尾する。それを大剣で受け止めるものの、さらに他の腕が襲い掛かる。
ハルは黒い球体も器用に使いつつ腕を躱している。しかし、その表情に余裕は見られない。
ウォルフさんが巨大な腕に叩き潰されると、彼の下の地面が泥沼化して衝撃を吸収した。彼の瞳が『蓮根は泥の中で育つんですよ』とか語っているが、それは今の状況の説明になっていない。
カイは襲ってきた腕を一度は躱したものの、急に向きを変えて追尾してきたそれによって弾き飛ばされた。
その様子を見ながらライオンは指で摘んでいたタンポポの茎を胸ポケットに戻した。すると、ポンッと再び花が咲く。
「さて、そいつらは任せる」
ゴリラにそう告げ、ライオンが俺の方へと歩み寄ってくる。
逃げようと試みるが、背後にはいつの間にかチーターの姿。俺の足元で必死に威嚇するミーアには目もくれずライオンが俺の前まで迫って来た。
「さて、神力石を渡してもらおうか」
「だから、そんなもの持ってないって言ってるだろ」
「嘘を吐くな。そのカバンの中に隠し持っていることは既にわかっている」
ライオンが俺のカバンを奪い取ると、その口を開けてひっくり返す。すると、救急セットなどと共に、幾つかのタワシとヘチマ、そして翠色の石が地面にぶちまけられた。
「やはり持っているじゃないか」
「え?」
この中でそれらしいものと言えば…、あの翠色の石? そういえばあの石、中に『I』という文字が浮かんで見えてたけど、そういうこと?
「これは貰っていくぞ」
そう言ってライオンが翠色の石を拾い上げるとポケットの中へと仕舞う。
そして、両手の人差し指を前に出しながらこう言った。
「ゲッツ!」
「やめろ!」
その時、巨大な腕に何度も叩かれながら泥の中を行ったり来たりしていたウォルフさんが急に飛び出した。
そして、腰に付けたバッグから蓮の花托を取り出すとゴリラの方へと向ける。
「蓮実連弾!」
すると、花托から轟音と共に蓮の実が発射される。
しかし、ゴリラは実が放たれる前から既に顔を手で覆ってうずくまっていた。『ブツブツ怖い…』とか呟いている。
どうやらこいつは集合体恐怖症のようだ。
その様子に気付いたダンディライオンが胸ポケットに挿していたタンポポ(セイヨウタンポポに変わってる?)を指で摘むと、前へと翳す。
「獅子歯牙!」
すると、タンポポの花弁が一枚ずつ順番に飛び出した。飛び出した花弁は周囲の黒い靄を吸収しつつ少しずつ大きくなりながら鋭い牙を形作り、蓮の実へと向かっていく。
そういえば、Dandelionはフランス語での『dent de lion(ライオンの歯)』が由来らしい。タンポポの葉の形がライオンの牙に似ているからなんだとか。決して花を鬣に見立てているわけではない。
さて、蓮の実が鋭い牙によって次々と迎撃されていき、ついには全ての実を打ち落とした。すると、鋭い牙がウォルフさんの方へと向かっていく。どうやら遠隔操作が可能なようだ。
ウォルフさんはそれを避けるようにして走り出すと、滑り込むようにして泥の中へと潜り込む。それと同時に、泥沼の範囲が拡がり始めた。
目標を失った牙が一旦ライオンの周囲へと戻っていく。
その時、ライオンの背後にまで拡がった泥の中からウォルフさんが顔を出した。そして、花托を持った腕を泥の中から突き出す。
「蓮実連弾!」
それは牙によって迎撃されるも、牙がウォルフさんを捉えようとするころには彼は既に泥の中へと潜り込んでいた。そしてまた別のところから顔を出す。
お互いに決定打を欠いたまま、それを何度も繰り返す。戦闘は泥沼化の様相を呈してきた。
しかし、次にウォルフさんが泥の中から顔を出した時にそれは起こった。
泥の中から花托を握った腕を出した瞬間、そこへ高圧の水が噴射される。
「うっ!?」
「近くの池との距離を縮めました。さぁ、掘り起こして差し上げましょう」
「蓮根収穫かよ!」
水が噴出している元のところにはチーターの姿。やっぱりこいつ、なんか狡い。
瞬く間に高圧の水がウォルフさんの周辺の泥を吹き飛ばすと、そこへ無数の牙が襲い掛かる。
その時、慌てて蓮根を構えたウォルフさんの前に黒い球体が割り込んだ。
「Eiserne Jungfrau. Nr.fuenf」
「Yes Master. Code-05 release」
ハルの指示に『鋼鉄の乙女』が応じると、黒い球体が形を失い、幾つかの長さ十センチほどの先端が尖った棒状の物体へと姿を変える。
そして、ハルが右手を一薙ぎすると、それらが一斉に牙を迎え撃った。棘と牙による激しい空中戦が繰り広げられる。
地上では、高圧の水に耐えていたウォルフさんがバッグから蓮の葉を取り出した。
「撥水加工!」
ウォルフさんが蓮の葉を前に翳して高圧の水を受け止めると、水が面白いように弾かれていく。
いや、撥水加工だけであの水圧を受け止められるものだろうか?
そんな俺の疑問をよそに、ウォルフさんは蓮の葉を持っているのとは反対側の手で持っている蓮根を見ながら覚悟を決めたような表情で呟く。
「泥を洗い流してしまった以上、もう短期決戦しかない…」
「その覚悟の決め方はおかしくないですか?」
確かに蓮根は乾燥から守る為に泥が付いたまま出荷されたりもするけどさ。今、関係なくない?
そんな俺の言葉なんて聞こえていないのか、ウォルフさんは蓮の葉を盾にして水を押し返しながらチーターへ向かって突っ込んでいく。
弾かれた水が飛び散り、周囲を水浸しにする。
俺はその水を避ける為に近くに落ちていたシタッパー達が被っていた黒い布を拾い上げて自分とミーアの前へと翳した。どうやら、この布も撥水加工されているようだ。
ウォルフさんはそのまま突き進むとチーターへの体当たりを試みる。しかし、一瞬のうちにチーターの姿が消えると、ウォルフさんの背後に現れた。
びしょ濡れになって再び化粧が落ちたチーターが叫ぶ。
「おい、ボクサー猿人! いつまでうずくまってやがるんだ、このクズ!」
「何でそんな酷いことを言うんだよ、チーター。僕、もう嫌だよ。もう耐えられないよぉ」
うずくまったまま泣き言を言い始めたゴリラ。そこへウォルフさんが蓮の花を掲げて呟く。
「離れゆく愛…」
うん、ちょっと黙ってろ。
その時、上空で激戦を繰り広げている牙を操作しながらこちらをチラ見したライオンが、胸ポケットに刺したタンポポを弄りながら呟く。
「真心の愛…」
すると、チーターとゴリラの周辺がポワッと優しい空気に包まれた。
「すまない、ボクサー猿人。俺様が言い過ぎたようだ」
「ううん、良いんだ、チーター。僕も情けなかった…。僕は君が自慢できるような立派な夫になれるように頑張るよ」
「ボクサー猿人…」
「チーター…」
そして二人は手を取り合い見つめ合う。
「「これからはずっと一緒だ。死ぬ時も、死後に浄土で生まれ変わっても、ずっと…。俺様/僕 達は一蓮托生だ」」
「ねぇ、俺はいったい何を見せられてんの?」
何この寸劇…。
俺の頭の中では、理解さんが考えたら負けといわんばかりに観劇モードに入っちゃったよ?
そして、ゴリラがチーターの化粧を直し始めた時、上空で繰り広げられていた空中戦は最終局面を迎えていた。
牙と棘が何度も激しい衝突を繰り返し、一つ、また一つと牙が黒い靄となって霧消し、棘が銀色の靄となって黒い箱へと戻っていく。そして、ついには全ての牙と棘が消え去った。
ライオンと睨み合うハル。
ゴリラ、チーターと対峙するウォルフさん、レオさん。
離れたところで本体を包帯でぐるぐる巻きにしているオーギュストさん(幽霊)。
どっかに弾き飛ばされたまま帰ってこないカイと、生死不明のバルザック。
俺の足元を落ち着かない様子でうろうろしているミーア。
そして、完全に傍観者となり果てた、俺。
後半は完全に戦力外となっている為、三対三での睨み合いが続く。
その均衡を打ち破ったのはレオさんだった。
「有言実行! 獅子奮迅!」
大剣を掲げて叫ぶと、レオさんの元に力が集まっていく。
「これは、あらゆる獅子を奮い立たせる技だ。獅子堂、そしてレオという名を持つ俺の能力を向上させることができる。これで、この戦いを終わらせる!」
……ん? あらゆる獅子?
その時、ダンディライオンが天に向かって咆哮を上げた。
「グォォォオオオ! 何だ…これは…。力が…、俺の四肢に力が漲ってくる…。今なら、誰にも負ける気がしねぇ!」
力が漲っていらっしゃる。
「そんな…、俺よりも能力向上幅が大きい…。俺よりも獅子力が高いというのか」
まんま獅子だしね。ところで、獅子力って何?
驚いているレオさんに向かってダンディライオンが両手を突き出して掴みかかる。
レオさんはそれに気付くと大剣を背中に戻し、両手でそれを受け止めた。
さっきから思ってたけど、この剣聖、大剣をほとんど剣としては使わない。剣聖とは…?
二人はがっつりと組み合うと、お互いに一歩も引かず押し合いを始める。
そして、お互いを一睨みすると同時に叫んだ。
「有言実行! 獅子演舞!」
「獅子舞!」
そして、二人は唐突にキレのある動きでタンゴを踊りだした。
「キレッキレだな、おい!」
実はこいつら仲良いだろ。
「「違うぞ! 俺の 獅子演舞/獅子舞 は獅子のように豪快に舞いながら敵を倒していく技のはずなんだ。それなのに、お互いの相乗効果でこんなことに」」
「息ぴったりだな、おい!」
絶対仲良いよ、この二人。
そして、彼らは一曲踊り切るとお互いに距離を取る。それと同時にレオさんがかけた獅子奮迅の効果も切れたようで、さっきまで二人に集まっていた力が拡散していく。
すると、二人がその場に膝をついた。
「フッ。獅子奮迅は諸刃の剣…。強大な力を得る代わりに、反動で暫く動けなくなる…」
「なるほど、あれほどの激しい戦闘を繰り広げられるだけの力だ…、代償も大きいというわけか…」
「あんたら、踊ってただけだろ!?」
そんなライオンの元へゴリラとチーターが駆け寄る。
「ボス、動けるか?」
「いや、暫くは無理そうだ…」
「そうですか…。ダンディライオン、ここは一旦…」
「そうだな、既に目的は果たした…」
珍獣達は、そんな会話を交わすとレオさん達を見据える。
「神力石も回収したことですし、今回はこれにて失礼することに致しましょう」
「逃げられると思っているのかい?」
チーターの発言に、ズボンのお尻のところに穴が開いた男が蓮根を構えながら応じた。
…うん、逃げられそうだ。
「貴方方とは、近いうちにまたお会いすることになるでしょう。決着はその時に…。それでは、ごきげんよう」
「待て!」
ウォルフさんの制止も聞かず、チーターがゴリラとライオンの肩に触れる。すると珍獣達の姿が一瞬にして消え去った。
敵を逃がしてしまったウォルフさんが悔恨の表情で呟く。
「クッ、逃亡を許すとは…。蓮根を切ってでも、先を見通す能力を使っていれば、こんな事には…」
「先見の明がなかったんですね…」
俺が割と投げやり気味に返していると、ハルが不思議そうに声を掛けてきた。
「それにしても、何故ヒイロ様は神力石を持っていたのですか?」
「え? ああ、あれは竜王の森でO2のミヤモトが持ってたのを拾ったんだ」
「お主、何故それを誰にも言わずにずっと隠し持っておったのじゃ?」
急に会話に割り込んできたのは、包帯ぐるぐる巻きの本体を運んできて車椅子に座らせていた幽霊だ。
「いや、あれが神力石だなんて知らなかっただけですよ」
そう、だから別に隠し持っていたわけじゃない。
ついでに言うと、タワシに埋もれて完全に忘れていたっていうのもある。
「まあ、そういうことにしておこうかのぅ」
そんな会話をしていると、どこかに弾き飛ばされていたカイが帰ってきた。何故か背中に大量の薪を背負い、火打石を持って…。
こいつ、着々と狸討伐の準備を進めてやがる。
谷底に消えていったバルザックの方は、谷さんが回収して一緒に戻ってきた。その時に谷さんから『山にごみを捨てちゃいけないよ』とか言われたんだが、別に俺が捨てたわけじゃない。
そんなバルザックはオーギュストさん(幽霊)によって包帯ぐるぐる巻きにされて車椅子の上だ。ちなみにその膝の上には同じく包帯ぐるぐる巻きのオーギュストさん(本体)が座っている。
そして、レオさんが歩ける程度に回復したところで、俺達は小屋へと戻った。
「すまないな、ヒイロ。君の修行をするはずだったのに…」
「いえ、気にしないでください」
修行内容を聞いた時点で、修行を受ける気なんてなくなってましたから。
「今回はこんなことになってしまったが、修行を受けたくなったらいつでも来るといい。登山の心得をみっちりと仕込んでやろう」
「俺、登山家になる気はないですよ?」
「遠慮はいらない」
遠慮じゃないんだが…。
「ヒイロ君、そろそろお暇しよう。もう下山しないと戻るころには日が暮れてしまう」
「あ、はい。わかりました」
ウォルフさんにそう告げられ、俺達はリンドウの街へ戻る為に小屋を出る。
「そうだ、ヒイロ。君のそのアプリについては少し気になるところもある。心当たりを調べてみるから何かわかったら連絡しよう」
「はい。ありがとうございます」
そうして、俺達はレオさんに見送られながらその場を後にした。
***
ヒイロ達の後姿を見送っていたレオが、背後に何者かの気配を感じ取る。
「こうして話すのは久しぶりだな…」
彼の背後に立っていたのは一人の小柄な少女。その少女の顔は、羽織っている黒いパーカーについたネコミミフードを目深に被っている為に窺い知ることができない。
「…そうだね、レオ。元気そうで何よりだ」
「お前もな…」
レオはそう言うと、少女の方へ振り返り鋭い視線を向ける。
「それで? 今、いったい何が起きている?」
「見ての通りだよ。新しい稀人が召喚されて対応に苦慮しているところさ…」
そう言って嘆息する少女に、レオが訝し気な視線を向ける。
「そもそも、どうして新しい稀人なんてのが現れる? アカシックゲートに関しては、お前が機能を掌握しているんじゃなかったのか?」
「…一応言っておくけど、彼の召喚に僕は一切関与してないからね。それに、君は勘違いしてるみたいだけど、僕は初めからアカシックゲートの機能の掌握なんてできてないよ。システムのほんの一部の権限を握って、召喚されたものが僕等の元を経由するようにしていただけなんだ」
「細かいことは俺にはわからないが、何にしても、俺の時と同じくお前は召喚されたヒイロと会っているんだろ?」
すると、少女が真面目な声色で呟く。
「…会ってないよ」
「どういうことだ?」
「二ヶ月ほど前、僕等が握っていた権限の全てがアレに奪われた…」
その発言にレオが驚いて目を見開く。
「まさか、アーカーシャか!?」
「…七年前に僕等が構築した安全網の全てを突破されたよ…。僕だって六年前に君の件があってから何もしてこなかったわけじゃないんだけどね…。でも、今回は完全にその上を行かれてしまった…」
自嘲気味に少女がそう呟いた。
「一応、今もシステムへの介入を試みてはいるけど、今の僕の手持ちのリソースじゃアレに対抗できそうにない。今後、アカシックゲートが開かれるたびに何が召喚されるかは、完全にアレのさじ加減一つということになる…。今の危うい均衡が崩れることになるのは間違いないだろうね…」
「アーカーシャは、今のパワーバランスを崩すつもりなのか?」
「そうだね…、アレは突然思い出したかのように世界を大きく動かそうとするから…」
少しだけ怒気を滲ませながら呟く少女へ、レオが問い掛ける。
「ヒイロが召喚されたのも、その一環だということか…?」
「そう考えるのが妥当だろうね…」
「そうか…。だが、だとしたらアーカーシャの思惑はどこにある? 彼はこの世界について何も知らないようだったし、何故わざわざ俺のところへ来て自らの手の内を晒すような真似を…?」
「そこは僕にもわからない。なんらかのイレギュラーでもあったのか、それともそれも含めてアレの思惑の内なのか…」
そう呟きながら少女が考え込むように口元に手を当てる。
すると、レオが何かを思い出したように口を開く。
「そうだ…。手の内と言えば、彼のあのアプリは何なんだ?」
「それについてもよくわからないんだよね…。少なくとも、彼が召喚されてから暫くの間は正規のアプリが入っていたはずなんだ。でも、どこかのタイミングで今のアプリに変わっていた…」
「アーカーシャは、ヒイロとあのアプリを通して何かをしようとしている…?」
「確かに、あのアプリなら今の均衡を根本から崩すことも可能になると思う…。でも、なにか一貫性が無いんだ」
「どういうことだ?」
「いや、だって………。何でタワシ!?」
心底訳が分からないといった様子で、少女が声を荒らげた。
「……あ、まあ、そうだな…」
「彼のアプリで行えるガチャ、あれは明らかにアカシックゲートと同じ原理なんだ。それを毎日行えるんだよ? その有用性は計り知れない。そして、何が出るかについてはアレの思惑次第のはずなんだ…。なのに………、何でタワシ!?」
少女が再び声を荒らげた。余程納得がいかないらしい。
「状況から考えて彼がアレと繋がっているのは間違いないと思う。でも、探りを入れてみても確証は掴めなかったし…。正直、本当に繋がりがあるのか自信がなくなってくるよ…」
嘆息しながら少女は肩を落とす。
「まあ、そう気を落とすな。それ自体がアーカーシャとヒイロの思惑に嵌ってるのかもしれないだろ」
「…あれが全て演技だっていうなら、彼は相当な役者だよ…」
拗ねたような口調で呟く少女だったが、一度溜息を吐くと気を取り直して口を開く。
「何にしても、早急に彼の立ち位置を見極めないといけない。アレを表舞台に引き摺り出す為にもね…」
そう言って少女が口元に少し笑みを浮かべる。
「どうするつもりだ?」
「そうだね、暫くは今のまま監視を続けるかな。状況を見ながら揺さぶりをかけてみようと思う」
「そうか…」
「いずれ君にも協力を頼むことになると思うから、その時はよろしくね」
少女はそう言い残すと姿を消した。
残されたレオは、ヒイロ達が去っていった方へと視線を向けるとポツリと呟く。
「そうか…。アーカーシャが動き出したのか…」
不用意に『トライポフォビア』で検索すると、ゾワッとする画像が表示されるので気を付けた方が良い…。
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コダマ 「えっ、帰った? せっかく兎捌いたのに…」




