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??? ドツグデイズ

挿絵(By みてみん)

どうも、白狐です。


今日は犬の日、ワンコの日。もふもふ和留津を愛でるのだ。

挿絵(By みてみん)


『ヒイロさん、聞いてください!』


 始まりは、ウィルからの突然の電話だった。

 ……切ってもいいかな?


『今度行われる次世代アイドルNo1決定戦に魔女っ娘♂ヒイロンがノミネートされました!』

「あれ!? 今回は直球できた!?」

『ウチからは他にも和留津がノミネートされているので、ダブル受賞を狙って…』


 その瞬間、俺は黙って電話を切った。



***


 

 突然だが、俺は今、王都ヘレニウム郊外にあるレジャープール施設に設営されたイベント会場で魔女っ娘♂ヒイロンの衣装に身を包み、詰めかけた観客相手に手を振っている。


 ………。

 そう、次世代アイドルNo1決定戦にノミネートされた他の参加者達と共に舞台の上に並び、笑顔を振りまきながら手を振っている。ちなみに、俺の背後に立っている黒い物体は赤い陣羽織のツキノワグマだ。

 ………。

 何故なぜに!?

 あ、いや…、理由はわかってるんだ。

 そう、あれは俺が電話を切った直後だった。背後に気配を感じた俺が振り返るとそこに立っていたのは…。

 というわけで俺は今ここにこうしているというわけだ。

 ………あれ? 記憶飛んでる?

 何故か舞台袖から満足そうにこちらを見ているハルの笑顔を見ていると何かを思い出しそうになる。そんな俺の頭の中では、真っ暗な部屋の片隅で魔女っ娘♂の衣装に身を包んだ理解さんがガタガタと震えていた。

 はて、俺はいったい何を忘れているのだろうか?

 そんなことを考えながらも会場の人々に笑顔を振りまいていると、イベントの司会を務めるリーゼントが口を開いた。


「それでは、ここで次世代アイドルNo1決定戦にノミネートされた方々を順にご紹介していきましょう」


 またお前が司会なのかよ。

 そんなことを考えながらも、体は勝手に観客に向かって笑顔を振りまき続ける。


「ノミネートナンバー1番。あなたのおそばによりそうわんこ。威内斯ヴェニス商会のマスコットも務める愛らしい黒柴。和留津!」

「わっふ~!」


 きゃんわいい~(はぁと)!

 しかし、プロの魔女っ娘♂は観客へ向けての笑顔を崩さない。


「ノミネートナンバー2番。熊六P監修による異色の魔法少女♂。性別負傷系アイドル。和風少女 魔女っ娘♂ヒイロン!」

「ヒイロンをよろしくなんだよ」


 俺より目立つな、熊。

 そして、性別という概念に対しては今すぐ適切な治療を施してやってほしい。

 ……こういう時に何か特別なものでも見えているんじゃないかと訝し気に見つめてくるミーアが今日はいない。背後に熊がいる所為だろうか?

 それはともかく、頭の中で何を考えていようともプロの魔女っ娘♂として観客には悟らせない。とにかく笑顔を振りまくのみだ。


「続いて、ノミネートナンバー3番。推すMAN(オスマン)商会の最大の推し。個性派イケメンアイドルユニット、『十人十色』!」

「「「「「「「「「「李婦人の野望の為にお前達の()を捧げろ!」」」」」」」」」」


 当の李婦人は舞台袖から腕組みをしながら満足気にその様子を眺めている。

 相変わらずの李婦人(理不尽)

 しかし、そんな理不尽にもプロの魔女っ娘♂は屈しない。


「そして、ノミネートナンバー4番。颯爽と現れた新星ニュースター。王国公認の変幻自在アイドル。その内に宿る熱い炎で王都の闇を明るく照らす、『全天21星』!」


 そこに居るのは放射能のハザードシンボルが印象的な人間大の透き通った青白色のスライム。そして、背後のモニターには色も大きさも様々な21体のスライム達の画像が映し出されていた。


「何か組織されてる!?」


 プロの魔女っ娘♂でもさすがに堪えきれませんでした。


「えーっと。さすがに全員は会場に入りきらないので、今回は代表して『全天21星』リーダーのシリウスさんにお越しいただいています」


 ちなみに、ここに来ているのはシリウス兄弟のシリウスB(弟の方)だ。シリウスA(兄の方)はメンバーではないらしい。


「最後に、ノミネートナンバー5番。我等がヘレニウム中央警察署のアイドル。そのきわどい服で犯人をも魅了する、警部!」


 そこに立っているのは、タイトなローライズパンツを穿いたへそ出しルックの女の人。

 鼠径部…?

 とりあえず、一般人ならファッションとしてギリギリセーフかもしれないが、職務中の警官の服装としては間違いなくアウトである。

 いや、色物警官三人衆からして既にアウトなんだが…。

 と、まあ、それは一旦置いといて。

 おい、作者。お前、最近名前考えるの面倒臭くなってきてるだろ。

 ※最近じゃないやい。最初からだい。


「以上、5組のアイドル達が次世代No1の座を賭けて何の生産性もない凄惨なバトルを繰り広げます!」


 俺達、いったい何をさせられんの?

 しかし、会場の方は大盛り上がりである。


「さあ、会場のボルテージも最高潮。熱気に包まれています」


 そんな中、俺の隣にいる和留津は舌を出しながら『ハッハッハッハッ』と息を上げていた。

挿絵(By みてみん)


「いや、さすがに暑すぎじゃない!?」

「まあ、真夏の炎天下ですからね」


 真夏…?


「あれ? 今日って何月何日でしたっけ!?」

「何を言っているんですか。今日は8月26日ですよ」

「……え? 11月…」


 そこまで言いかけた俺の言葉を遮って、リーゼントはまるで洗脳でもするかのように俺の瞳をじっと見つめながら畳み掛けてくる。


「今日は8月26日です。誰が何と言おうと8月26日です。真夏の8月26日です。『世界犬の日』でもある8月26日です。アンダスタン?」


 俺の頭の中の理解さんは、現在、衰弱状態にある。


「ウン、ワカッタ。キョウハ、ハチガツニジュウロクニチ。アンダスタン」


 結果、俺は何かを理解させられた。


「さて、それではそろそろノミネートされた5組の方々のパフォーマンスタイムへと移りましょう。まずはノミネートナンバー1番の和留津さんからです、どうぞ」


 リーゼントにそう言われて和留津が口を開きかける。しかし、ふと何かに気付いたかのように俺の方へと視線を向けると、あたふたとし始める。


「おっと、失礼しました。こちらの配慮が足りていませんでしたね。ヒイロさんには……あ、いや、これだと露骨すぎるか…。というわけで、パフォーマンス中のアイドル以外の方々にはいったん控室にてお待ちいただくことにしましょう」


 ……ん? どゆこと?

 というわけで、何もわからないまま俺はカメンとモヒカンに控室へと案内された。

 え? どゆこと?


「ヒャッハー! 和留津さんのパフォーマンス中だけの辛抱だ!」

「そうよぉ、他のノミネート者のパフォーマンスは見学してもかまわないけれど、和留津さんのだけはダメよぉ」


 ねぇ、どゆこと?

 思考停止気味な俺の頭の中では理解さんがフリーズしている。そんな中、俺は自分の着替えが入っているロッカーを見つめながらなんとか言葉を絞りだした。


「あぁ…、それじゃあ、ちょうど控室に戻ってきたことだし、とりあえずもう着替えてもいいかな?」


 そうやってロッカーの扉に手を伸ばした俺の前に立ち塞がったハルが満面の笑みを浮かべる。


「何をおっしゃっているのですか、ヒイロ様。ヒイロ様の出番はこれからですよ?」

「あれ? もしかして、俺、今回ずっとこの恰好のまま?」

「当然なんだよ。今日のイベントはヒイロンが主役と言っても過言ではないんだよ」


 熊が一向に退場しない所為だろうか。ミーアがロッカーの上で警戒したまま降りてこない。

 ちなみに、今回のミーアの出番はこれだけだ。

 精神安定剤モフモフを入手できなかった俺の頭は思考停止から抜け出せない。そんな中、俺はふとミーア以外のモフモフの存在を思い出した。


「……あ、俺、ちょっとトイレに…」

「すぐにヒイロンの出番だから、すぐに戻ってくるんだよ」


 そんな熊に見送られながら、俺は部屋を後にする。すると、部屋の中から声が聞こえてきた。


「ヒャッハー!? 今、トイレとは逆の方向に歩いて行かなかったか!?」

「まさか、トイレに行くと偽って会場へ向かったのかしらぁ?」


 チッ、バレたか。だが、俺のモフモフへの愛を止めることなどできはしない!

 モフモフに誘われれるままに走り始めると、慌てた様子のカメンとモヒカンが部屋から飛び出してきた。無線機でどこかと通信しながら追いかけてくる二人。しかし、華麗なステップで颯爽と駆け抜ける魔女っ娘♂に追い付くことなどできはしないのだ。

 ※ヒイロは何かを理解させられています。

 そうして会場へとたどり着いた俺が目にしたものは、やたらと息の乱れた和留津の姿。


「というわけで、ノミネートナンバー1番、和留津さんのパフォーマンスでした」


 何があった?


「何度見てもカワイイ女の子ね、和留津は」

「うん、和服がよく似合ってお人形さんみたい。お母さん、私、和留津に投票する」

「そうね。でも、他のアイドル達も頑張っているんだから、ちゃんと全員のパフォーマンスを見てから決めなさい」

「うん」


 会場に来ていたほのぼの母娘のそんな会話をどこか遠くで聞きながら、俺は何かを否定するかのように必死に首を振り始めた和留津を見つめる。

 うん、何があった?

 すると、ほのぼの母娘の娘の方が突然メガネを掛けて鋭い目つきで何かを分析し始める。


「でも、和留津のこれほど素晴らしいパフォーマンスの直後で、和服少女というキャラモロ被りの魔女っ娘♂ヒイロンは、いったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのかしら?」

「そうね、これだけ会場を沸かせた和留津の直後、生半可なパフォーマンスでは観客を満足させられない。お手並み拝見といきましょう」


 何あの母娘、怖!

 突然評論家と化した母娘に恐怖を覚えていると、モヒカンとカメンが追い付いてくる。


「ヒャッハー! ギリギリ間に合ったみたいだぜ」

「うふふ、この秘密だけは知られるわけにはいかないのよぉ」


 二人は無線機片手にそんなことを言いながらリーゼントに対してサムズアップする。

 俺の中で困惑が広がる中、和留津は何かを誤魔化すかのように自らのしっぽを追いかけながらクルクルと回り始めていた。

 カワイイ。

 見事に誤魔化された俺が和留津を眺めながら和んでいると、リーゼントが口を開く。


「それでは、続いてノミネートナンバー2番、魔女っ娘♂ヒイロンのパーフォーマンスです。どうぞ」

「え?」


 俺に何をしろと?

 その時だった、突然、会場に爆音が響き渡ると共に一機のヘリコプターが現れた。そして、そこから一本のロープが垂らされると武装した部隊が降下してくる。

 そんな光景を前にして何やらカッコよさげなポーズを決めながら警部が前に進み出る。


「フッ、やはり来たわね、『バウンドドッグ』」


 うん。リーゼントが司会していた時点で来るだろうなと思ってたよ。

 そんなことを考えていると、どこからともなく二足歩行のジャーマンシェパードが現れた。


「掲示板に残されていた署長からのメッセージ通りだな」


 署長、もうちょっとちゃんとした指揮命令だしましょうよ。


「ヒャッハー!」

「どうやら、『バウンドドッグ』が魔女っ娘♂ヒイロンがタワシマスターの裏の顔だということに気付いてしまったというのは本当みたいねぇ」

「欺かれていたことに気付いた『バウンドドッグ』の怒りが、今回のなりふり構わぬ襲撃計画へと繋がっているということらしい」


 欺いてねぇし。

 モブ警官達が観客の避難誘導を始める中、表面上は笑顔を浮かべながらも明らかに不愉快そうなハルが武装集団の方へと近付いていく。


「ヒイロ様の栄光への第一歩を邪魔しようとはいい度胸ですね」


 そんな第一歩、俺は踏み出したくない。

 しかし、そんな俺の思いなどハルには伝わらない。両袖口から飛び出したナイフを構えて武装集団に鋭い視線を向ける。


「その罪、万死に値します」


 そうして攻撃に移ろうとしたハルを止めたのは予想外の人物だった。


「少し落ち着きなさい」


 何やらカッコよさげなポーズを付けながらハルと武装集団の間に割り込んできたのは、タイトなローライズパンツを穿いたへそ出しルックの女の人。


警部、何かお考えが?」


 リーゼントが尋ねると警部が答える。


「あら、あなたが言ったのよ、リーゼント。この何の生産性もない凄惨なバトルに勝利した者こそが、次世代アイドルNo1の座に就くことができる、と」


 その瞬間、ノミネート者(というか、主にその後援者)達の目の色が変わった。


「つまり、こいつらを始末した者が次世代アイドルNo1の座を手にするという事ですか?」

「そうみたいね、ウィル」

「これは負けられませんよ、和留津、ヒイロさん!」

「わふ?」


 和留津カワイイ。


「なるほど、どこの誰だか知らないけれど、『十人十色』の踏み台として自ら犠牲になりにきたというわけね。いい心がけだわ」


 李婦人(理不尽)


「これは負けられぬぞ、シリウスよ」


 居たのか、長老。

 いまさらながら、シリウスに黒い豆粒がくっついていることに気が付いた。


「ヒイロン、負けられない戦いがここにあるんだよ」


 俺は負けても構わない。


「申し訳ありません。ヒイロ様の栄光へ第一歩を私が潰してしまうところでした」


 潰してくれて構わなかったのに。

 申し訳なさそうにハルが呟く中、他のアイドル達は臨戦態勢へと移っていた。

 和留津がその場で後ろ足で立ち上がると前足を上げて威嚇する。

 いや、それは熊の威嚇ポーズなんよ…。


「わお~ん」

挿絵(By みてみん)


 でも、可愛いから許す!

 足元に犬野警部補を侍らせた警部が何やら煽情的なポーズを付けながら銃を構える。


「アイドルたるもの、常に周囲からどう見られるかを考えなければだめよ」


 警察官としてどう見られるかも考えた方がいいと思います。

 『十人十色』が何やらカッコよさげなポーズを決めている後方では、李婦人が腕組みしながらその様子を見守っている。


「あなた達はあんな全員同じ恰好をした無個性集団に負けたりはしないわ。あなた達の溢れる個性を見せつけてやりなさい」

「「「「「「「「「「李婦人の仰せのままに!!」」」」」」」」」」


 お前らも十人全員似たり寄ったりだよ。

 シリウスがうねうねとその身をくねらせると、ホクロのような豆粒から声が発せられる。


「今こそ、焼き尽くすもの(シリウス)の名に恥じぬお前の力を見せてやるがよい!」


 やめろ。シャレにならん。

 敵どころか王都ごと焼き尽くす気か?

 そうして、すぐにその場は乱戦状態となった。

 自動小銃で弾丸をばら撒く武装集団に対して、いちいちポーズを決めながら華麗に対応する警部+犬野警部補ワンコと『十人十色』。そして、そんな合間を縫うように和留津が駆け回る。

 すると、避難誘導に従って母親に手を引かれながら歩いていた女の子が振り返った。


「和留津、負けないで!」


 ”負けないで”も何も、ぶっちゃけ、和留津は走り回っているだけである。

挿絵(By みてみん)


「わふ~」


 でも、可愛いから許す!

 俺が和留津の可愛さに魅了されていると、俺の様子と声を上げた女の子を見た長老が何かに気付いた。


「なるほど。時代は犬ということじゃな?」


 急にどうした?

 そんな発言をするとどこぞの猫派(過激派)に目を付けられるぞ?

 しかし、その発言でシリウスは何かを察したようだ。自らの柔軟な体を変形させていくと、そこに現れたのは透き通った青白色の大きな犬。その頭部にはこれでもかと主張してくる放射能のハザードシンボル…。


「さあ、ドッグスターの名に恥じぬお前の力を見せてやるがよい!」


 それを聞いたウィルが絶望顔を浮かべる。


「そんな…、犬界の人気者(ドッグスター)だなんて…。和留津からモフモフわんこ枠まで奪おうというんですか…?」


 少なくともあのスライムはモフモフではないから安心していい。


「わふ」


 モフモフ、可愛い。

 俺の足元まで駆けてきた和留津をモフりながら目の前で繰り広げられる何の生産性もない争いに視線を向ける。すると、相変わらず警部と犬野警部補ワンコ、そして、『十人十色』達が華麗なポーズを決めながら武装集団を翻弄していた。

 しかし、ポーズを決めることに夢中になりすぎている所為だろうか、敵の数が一向に減らない。

 そんな中、とうとうシリウスが動きをみせた。四本足で大地を駆け抜けるシリウス。


「さあ、そのまま全てを焼き尽くすのじゃ!」


 だからやめろって。

 そうしてシリウスが敵の真っただ中に飛び込んだ次の瞬間、空からシリウスよりも一回りほど小さくて、冠(?)を被った黄色のスライムが陽気に踊りながら降ってきた。

 それを見た長老とシリウスが驚愕の声を上げる。


「サン君!?」

「どうしてここに!?」


 黄色のスライムことサン君は大地に降り立つなり陽気なノリで言い放つ。


「『全天21星』には選ばれなかった僕だけど、皆から息子のように可愛がられている僕こそが次世代アイドルNo1の座に最もふさわしいと思うんだ!」


 そんな光景を前にしてリーゼントが声を上げる。


「おーっと、ここで次世代アイドルNo1決定戦に乱入者だ!」


 そして、近付いてきた人物からメモを受け取ると続ける。


「ノミネートナンバー6番。世界を明るく照らすムードメーカー。太陽の申し子、サン君!」

「お天道様は全てお見通しさ!」


 何を?

 突如として現れたサン君はそんなことを言いながらポーズを決める。しかし、武装集団と警部+犬野警部補ワンコと『十人十色』による不毛な争いは収まらない。

 すると、全く相手にされていないことに気付いたサン君が不満げに声を上げた。


「そこの君達、どうして僕を見ないんだ?」


 そして、サン君はあることに気付いた。


「まさか…。君達はお天道様に顔向けできないようなことをやっているんだね?」


 まあ、テロリストだしね。

 でも、真面目な話すると実際には大抵の人はお天道様に顔向けなんてできないよね。眩しすぎるから。

 和留津をモフりながら現実逃避を始めた俺だが、今日は現実逃避を非難してくる視線は感じられない。だって、この場にはミーアが居ないんだもの。


「そっか…。だったらお天道様に代わって天罰を下さなきゃ」


 サン君はそう呟くと武装集団の真っただ中へと突っ込んだ。


「む? いかん! シリウス!」

「はい」


 長老がの呼びかけに応じたシリウスが武装集団を翻弄していた警部+犬野警部補ワンコと『十人十色』へ向かって触手を伸ばして引っ張り上げる。そして、長老が薄い膜のように広がるとサン君と武装集団をまとめて黒いドームの中へと包み込む。その次の瞬間、サン君から眩い光が放たれた。


目玉焼き(サニーサイドアップ)!」

「凄惨なる目潰し!」


 こうして、お天道様に顔向けできないようなことをしでかした連中は、サン君を直視した(お天道様に)所為で目を(天罰を)潰されてしまったん(下されたんだ)だとさ(とさ)

 めでたしめでたし。

 …。

 ……。

 はて?

 ところで、どうして俺は長老が作ったドームの内側にいるのだろうか?

 光すら吸収してしまうという長老の特性。その特性を生かして咄嗟に自らの体でドームを形成して周囲に害が及ばないようにしたのだろう。

 それはいい。

 ならば何故? 何故、俺はそのドームの中にいるのか?

 俺に害が及ばなかったのは、控室のロッカーに入っていたはずなのにどこからともなく風に飛ばされてきた(?)いつもの優秀なコートによるフードとバイザー(遮光システム)のおかげである。和留津に害が及んでいないのは俺に抱きかかえられるようにしてモフられていた為にサン君を見ていなかったからである。

 結果的に俺にも何も害は及ばなかったものの、どうして俺はドームの中にいるのか?

 ねぇ、何故に…?

 俺の中で何やら納得できない気持ちが渦巻く中、長老が元の姿に戻ってドームが消えていく。そうして露わになる死屍累々の凄惨な現場と、その只中で陽気に踊るサン君。すると、それを見た司会のリーゼントが口を開いた。


「なんたる凄惨な現場…。これはサン君こそが次世代アイドルNo1だと認めざるを得ないでしょう」


 何故に…?

 納得できない気持ちがさらに広がっていく中、他のノミネート者(というか、主にその後援者)達は悔しそうにしながらも納得していく。


「どうやら、今回は完敗みたいですね…」

「そうね、ウィル」

「これほどのアイドル力を見せつけられたら納得するしかないんだよ」

「理不尽な展開ですけど、認めざるを得ないわね…」


 何故に?


「この際じゃ、サン君とシリウスで新ユニット『ドッグデイズ』を結成するというのもありじゃな」


 活動期間は夏だけかな?


「異論もないようですので、サン君が次世代アイドルNo1の栄冠に輝くことになりました!」


 異論はあるぞ?

 理解が追い付かないだけで。

 リーゼントによるサン君の勝利宣言が響き渡る中、気持ちいいところを撫でられて蕩けきった和留津が甘えながらすり寄ってくる。


「わふ~」

挿絵(By みてみん)


 和留津が可愛いからどうでもいっか。

 そうして、俺は和留津をより一層わしゃわしゃしながら現実逃避するのであった。


ヒイロ 「このネタは8月26日にやるべきだったのでは?」

白狐 「あんまり番外編を書くタイミングを増やしすぎるとちょっと…」

ヒイロ 「打算的! あ! だからお前、『8月8日(世界猫の日)』の話題にも触れないのか」

白狐 「……」(目逸らし)

ヒイロ 「それはともかくとして、この話の時間軸ってどうなってんの?」

白狐 「あくまでもリーゼントが8月26日だと主張しているだけで実は違うんじゃないかな?」

===

ヒイロ 「お約束だから一応聞いておくけれど、リーゼントが今日も頑なに背中を見せようとしなかったのは何故?」

白狐 「番外編だから…?」

ヒイロ 「どゆこと!?」

===

『全天21星』メンバー

1 シリウス

2 カノープス

3 リギル・ケンタウルス

4 アークトゥルス

5 ベガ

6 カペラ

7 リゲル

8 プロキオン

9 ベテルギウス

10 アケルナル

11 ハダル

12 アルタイル

13 アクルックス

14 アルデバラン

15 スピカ

16 アンタレス

17 ポルックス

18 フォーマルハウト

19 デネブ

20 ミモザ

21 レグルス


グループ内ユニット

『冬の大三角(Winter Triangle)』

シリウス、ベテルギウス、プロキオン

『夏の大三角(Summer Triangle)』

ベガ、アルタイル、デネブ


ヒイロ 「あれ? ベテルギウスって黒い豆粒にならなかったっけ?」

白狐 「ああ、500~600光年ほど離れているらしいからね。だから、あと500~600年くらいは過去の栄光に縋れる(輝ける)らしいよ」

ヒイロ 「何言ってんの?」


===

ムッチャン 「あれ? どうして、みんなのアイドル、ムッチャンがノミネートされてないの?」

白狐 「…あっ。………………ムッチャンは次世代アイドルではなく現役スーパーアイドルだからです」(目逸らし)

ヒイロ 「お前、忘れてただけだろ」

 ※書き終わった後に思い出しました。


===

コスプレミーア『警部』

挿絵(By みてみん)


===

おまけ

今日のミーア 『棚の上からじっと見つめる』

挿絵(By みてみん)


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