プロローグ
初めて書く小説です。
読みにくい箇所ばかりだと思いますが、ご指摘事項などコメントをもらえたら嬉しいです。
とりあえず今日は1時間ごとに3話投稿します。
それはどこにあるのか。
誰が持っているのか。
誰もが知っていたのに、今は違う。
◆
"宝くじが当たった"
そう文字にしたらたった8文字。
冗談で宝くじで5億円以上当たったら仕事を辞めると言っていたが、本当に当たると困惑した。
死ぬほどやめたかった仕事だったが、さすがに宝くじに当たったから辞めるとは言えず。
別の仕事をすることにしたと伝えて、不義理にならない程度に引継ぎもした。
ただ、可愛がってた後輩に「先輩、なんか機嫌いいですね」と言われたのには少し困ったが、何も言わないままやめることにした。もう会わなくなることに寂しさを覚えた。
仕事の最終日にはその後輩と飲みに行って少しだけ飲みすぎた。
◆
仕事を辞めて半年が経った。
いざ仕事を辞めてみると普段の生活がどれだけ仕事に依存していたか……
若い頃にやっていた武道や茶道に復帰したり、時間がなくて読めなかった本を読んだりもした。
2、3年前から出てきたVRゲームもがっつりやり込んでみた。
宝くじが当たって時間ができたらやろうと思っていたことは大体やった。
それでも時間が余った。世間は働いてる人を対象に時間が動いていた。働いていない人間には時間が余って仕方ない。
ゲームのイベントも毎日やる人向けには用意されていなかった。
田舎からでてから住んでる1k6帖の部屋で初めてぼんやりしてばかりだ。
もともと仕事中にしか吸わなかった煙草は一日に二箱も吸うようになって。
そんな時に突然田舎で一人で暮らしている母親から連絡が来た。
実家に帰っても何もやることはなかったが「お父さんもいないし帰ってきてゆっくり将来を考えたら」と言われると3年前に父親が死んでから何もしてしてこなかった自分が母親へ最後にできる親孝行だと思って実家に帰ることにした。
◆
愛知県の岐阜寄りにある実家に帰ったら、父親が使っていた書斎を引き継ぐことになった。
「お父さんもいないし使わないと勿体ないからあんたはこの部屋ね」
そう言われて本棚とベット、そしてVR装置が鎮座ましましている書斎に初めてはいることになった。
父ちゃん…VRをやってたのか…
筋肉ムキムキで機械には弱くて、私に教えてくれた武道と茶道しか趣味がないと思っていたのにハイカラな趣味でコメントし辛い。私ですらVRを初めてやったのは仕事をやめてからだったことを考えると、父親の方が先に始めていたことになり驚く。
そんなことを思いながら、初めて入る書斎を物色していると、机にある引き出しから手紙が出てきた。絶対母親は知っていただろうに何も言っていなかったが、気づかなかったらどうするつもりだったんだろう。その手紙は"バカ息子へ"と読ませる気のない言葉から始まっていた。
■
バカ息子へ
今仕事が楽しいなら続きを読む必要はない。そのまま仕事をがんばるといい。
ただよっぽどやることがなく。よっぽど暇で仕方ないなら続きを読んで彼を継いで欲しい。
この書斎は母ちゃんにさえ入らないように言っておいたからお前も初めて入るだろう。
俺が何を仕事しているのか、お前がずっと疑問に思っていたのは知っている。
お前と一緒に暮らしていた頃からここでずっと仕事をしていた。VRMMO、その前はMMO、その前はPBM。その前はお前のお爺ちゃんの頃でよく分からない。
ただゲームをする。だがそのゲームでなぜかお金を貰える。
それなのにデスゲームでもない。誰も死ぬ気ではやっていない。
面白おかしく、そう無責任に楽しむゲームだ。
俺のひいひいひいひいお爺ちゃんから引き継がれてきた彼にお前がなってくれるなら、嬉しく思う。
◆
手紙を読んで真っ先に思ったのは「あぁ、宝くじに当たったのはこのためだったのか」、最後の親孝行だ。ただそれだけだった。
だから迷いなく書斎で見たことのないVR装置を起動した。