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四十二話、眠る力



「だったら――――――僕がなんとかするよ」


グランゾールの戦場に転移し、仲間を助けようとして彼がそう言って振り向いた先には、この世の恐れの集合体とも言える悪魔的存在が、今まさに最後の一弾を放とうとしていた。


魔王ブラックレオは口元に集めた魔力の球体を更に巨大化させ、魔力による威力的な光でグランゾールを照らした。


「やめろエル。今回はお前のなかのやつでも無理だ。あれはこの世界の誰もが正しく化け物と言えるやつだぞ」


ミズチの言いたいことはわかる。目の前にいるあれは化け物のなかの化け物。生物としての本能から、逃げろというように身体がざわつく。


「ダメだよ。二人を置いてはいけない。だって僕は、二人を助けるためにここに来たんだから」


それが僕が望んだこと。やらないとダメだって思ったことだ。


たとえここで僕が死ぬことになっても、二人だけは助けてみせる。


エルは怯むことなく目を閉じ、心のなかの存在に語りかけた。


ナハト――――頼めるかい。


エルがそう聞くと、虚空から音が届くようになんとなくそう聞こえた気がした。


あいよ――――。


エルから伸びる影が巨人のごとく大きく広がり、エルを起点として縦に伸びていく。そしてやがて巨大な影は収縮してエルと一つになった。


そして――――ナハトとなった。


「はあぁぁぁぁぁぁ」


ナハトは身体に自身の持つほとんどの魔力を纏わせる。


次の瞬間、ブラックレオの波動弾がナハトに向かって放たれた。


ナハトはそれを両腕で受け止めた。だが、波動弾の威力に押されて、ナハトは徐々に後ろに下がっていく。


「くっ…………」


このままやられるわけにはいかない。後ろにはエルの仲間がいる。


ナハトは額に汗を滲ませて堪えるが、波動弾の威力が予想以上に強く、持続力も高い。


これではこちらが先にやられてしまう。


ナハトは自身のすべての魔力を両腕に集中させた。そしてそれを以てブラックレオの波動弾を打ち消しすまで耐えきった。


「はあっ……はあっ……はあっ」


ナハトはブラックレオの一撃に耐えきると、すべての力を使い果たして、やがて膝をつき、倒れた。


そこにいつの間にかシャドー化を解いたブラックレオが現れた。そして倒れたナハトに視線を落として口を開いた。


「まさかほんとうにいたとはな」


ブラックレオは驚きと好奇心を含んだ笑みを浮かべる。だがすぐにその表情は消えて、冷静なものに戻った。


「だが思ったほどじゃなかった。今度こそ会えると期待していただがな。同類に……」


ブラックレオは雰囲気こそ変わらないが、落胆した様子であった。


ブラックレオは倒れたナハトの顔面を掴むとそのまま上に持ち上げる。


「イレギュラーとかいったか。しかしこの程度で世界の破壊者とは笑わせる」


ブラックレオはナハトを掴んだまま力強く投げ飛ばした。


投げられたナハトは、その威力を以て地面を削り取るように飛ばされ、遥か遠くにある岩壁に打ち付けられた。


ブラックレオは転移魔法でナハトの元に即座に移動すると、もう一度今度は空高く放り投げ、それをブラックレオが弄ぶようにナハトの飛ぶ先々に転移魔法で移動して拳を叩きつけたり、蹴りを入れたりした。


「この俺を圧倒できずしてなにが破壊者だ」


ブラックレオは最後にそう言って波動弾をナハトに直撃させ、地に落とす。


そしてまたナハトの目の前に移動すると、挑発するように言葉を投げかけた。


「どうした……イレギュラーなんだろう。だったら力を見せてみろ。俺を圧倒しろ。俺を楽しませてみせろ」


そのとき、ナハトの姿が急に縮小していった。


ブラックレオの攻撃を何度も受けたナハトは、既に魔力が尽きたことでエルの姿に戻ってしまった。


ブラックレオは少しだけその変化に驚きはしたが、魔力の弱い勇者となった存在に興味を失った。


「こんなものか。これでは聖女のほうがまだ面白かったな」


ブラックレオは気を失ったマリアに目を向けると、次なる獲物に標的として変えた。


「あいつでもやはりダメだったか」


マリアの側で二人の戦いを見ていたミズチは、ブラックレオの次の標的がまたマリアとなったことを察知して、マリアの前に出た。


「邪魔だ。エセ神などでは役者不足だということがわからないほど、お前は力のない神なのか?」


「そんなことはわかってんだよ。だがな……ダチ公が俺たちを守ろうとしたとこみたら、次は俺の番だって思ったんだよ」


「美しき友情というやつか。私には面白味のない見せ物だ」


「アギトォ」


ミズチは魔力によって蛇のごとく硬質化させた腕でブラックレオを掴みにかかる。


ブラックレオはそれに対抗してミズチの迫る手を逆に掴み取ると、お互いに力を入れ合う。


「くそっ……なんてパワーだよ。俺のアギトを上回るなんてよ」


「お前もなかなかの筋力をもっているな。純粋な力だけならばいい戦いができただろう」


ミズチが残りの魔力を腕に集中させるが、お互いの位置は微動だにしない。


「とはいえ所詮この世は魔力の保有量が多い方が勝つ。圧倒的な魔力こそが力の差だということ思い知るがいい」


ブラックレオが腕に魔力を込めると、均衡していた力の差がはっきりと別れていった。勝敗が決まったところで、ブラックレオはミズチを退場させるように顔を掴み、真後ろに投げてやった。


「目を覚ませ聖女よ。さもなければお前の仲間、そして後ろにいる弱き人間たちから先に死んでいくことになるぞ」


ブラックレオはマリアに近づいて話すが、気を失っていてその声は届いていない。


それをわかっていても、ブラックレオは言葉を続ける。


「聞いているのか?」


ブラックレオはエルやミズチにしたようにマリアの頭を掴んだ。そして、ゆっくりじわじわと掴む手に力を込めていった。


マリアは気絶したまま頭を圧縮されるような痛みに苦しめられ、苦痛の声を上げる。


ブラックレオが力を弱めて目を覚ましたか確かめると、まだ気絶したままだった。


「起きないか……仕方がない。ではお前が起きるまでの間、力を入れ続けてやろう」


ブラックレオが手の力を上げていく。


「私は美味しいものから先に食べる派なんだ。だから他の輩はやはりその後に始末するとしよう」


マリアの体力はもう既に限界にきていた。ブラックレオがいくら刺激しようと、マリアは目を覚まさない。それを知っていながら、ブラックレオはやめようとはしなかった。


やがてマリアからは声にならない声が発せられるようになった。


後少しでがらくたになる。ブラックレオがそう思い、とどめを刺そうとしたとき、後ろから感じたことのない魔力の波動を感じた。


スッと血の気が引くような自身の魔力動きを感じ取って振り返ると、そこには一人の小さな勇者が立っていた。


「お前か――――イレギュラー」


生の物とは思えない。そんな異質さを感じたブラックレオは、目の前のなにかに目を奪われた。




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