脱出
「お兄さんはなんで精霊さんと一緒にいるの?」
ユアが不思議そうに首を傾げている。
俺はスキル【精霊視】を使って周りを見回してみる。確かに周りにわざわざ救出のために連れてきた精霊が飛んでいる。
つまり、この子には精霊が見えているのか。
「精霊が見えるんだね」
「お兄さんにも見えるの?」
ユアが純粋な目で尋ねてくる。
どうしよう。精霊が見えることはゲルムさんとリーレさんには言ってないんだけどな。
「うん。お願いしてついて来てもらったんだ」
俺は正直に見えることを話した。後ろでゲルムさんが首を傾げている。
「ユアを助けにきたんだ」
「そうなの?」
俺の言葉にユアは精霊に確認を取る。精霊はふわりっとユアに近づいて肩に座った。
『そうなの』
精霊がユアの耳元で答える。
「ついて行っても大丈夫なの?」
ユアが精霊に尋ねる。ああ、俺はユアに警戒されているのか。
『だいじょうぶなの。おかしやまりょくもくれるの』
精霊が安全性を保障してくれるけど、それだと俺がお菓子や魔力で誘拐しようとしているみたいだよ。
「お菓子なの!」
ユアの目が明らかに輝く。この子、簡単に誘拐される子だ。
「クッキー食べる?」
俺は空間魔法で取り出したクッキーを差し出す。
「クッキーなの!」
ユアは美味しそうにクッキーを食べ始めた。
「あんまり時間がないからそろそろ行こうと思うんだけど、いいかな?」
「はいなの」
出発することを伝えるとあっさり了承が貰えた。どうやら信頼を得られたようだ。ユアの【隷属の首輪】を外す。
再び俺が先導して出口に向かう。来るときに警備を眠らせてしまったから、帰りはもっと簡単だ。碌に警戒しないで歩ける。
「まさかこんなに簡単にいくとは」
「ラッキーでしたね」
店を脱出するとゲルムさんが茫然という。リーレさんも目を丸くしている。ユアは眠そうにしている。こんな時に平然としていられるユアが1番大物かもしれない。
そんな中俺は幸運であったかのように返す。簡単に警備が少ないルートが見つかったから、実際に幸運ではあったね。
「街の外に行きましょうか」
夜間は本来街の外には出られないんだけど、俺の魔法で何とかするつもりだ。透過してもいいし、飛び越えてもいいしね。
「まさか、厳重な警備があっさりと突破されるとは」
街の外に出ようとしていた俺たちに声がかかる。
例の奴隷商人が配下を従えている。歩いている俺たちと鉢合わせる形になった。そういえば、店の中は見ていたけど、外を気にするのを忘れていたよ。
「わが奴隷リーレよ!こっちに戻ってこい!」
奴隷商人が高らかに発言する。
しかし、その声は虚空に消え、何も起こらなかった。
「あの……首輪は外したのでリーレさんに命令はできませんよ?」
「なっ!?」
俺の発言に奴隷商人が驚愕する。
リーレさんの首元見れば分かると思うんだけどな。普通は【隷属の首輪】を外せないから仕方ないのかな。
「なんなんだ、お前は!ただの魔法使いかと思ったらエルフに肩入れしやがって!」
初手が潰された奴隷商人はいらだちを露にした。まさかの逆切れである。
別にエルフに肩入れしているつもりはない。ただ強制的に奴隷にするというやり方が気に食わなかっただけだ。
「しかも、この前お前に譲った奴隷も魔法を隠しやがって!分かっていれば譲ったりしなかった!」
さらにいちゃもんを付けられた。
譲った奴隷とはローリアのことだ。ローリアは別に魔法を隠していたわけじゃない。俺が教えただけだ。
「畜生!全部お前が悪い!野郎ども奴を殺せ!」
どうやら標的が俺に定まったようだ。もうエルフの奴隷とかどうだっていいんだろうな。それか俺を殺したらどうにでもできると思っているのか。
最初に突撃してきた男の攻撃を避けて蹴り飛ばす。男は後ろの数人を巻き込んで倒れた。
次に斬撃を加えようとしてくる剣士の振りかざしてきた手首をつかんで、奥の男に投げつける。
最後にうろたえているムンク風の男に急接近し、男の首に手刀を食らわせて眠らせる。
結局、剣を抜くことなく片付けることができた。
「あとはあなただけですよ。奴隷商人さん」
少しにやりと笑って奴隷商人に対面する。奴隷商人は後ずさりをして、明らかに怯えている様子だ。
「無理やり人を奴隷に落とすような人ですから、腕の1本や2本折ってもいいですよね」
奴隷商人に1歩近づく。
「それとも魔法で燃やしてもいいかな」
また1歩近づく。
「ひえっ…助けて、助けてくれえええ!」
奴隷商人は叫びをあげて逃げ出した。
少しは懲りただろうか?もともと奴隷商人は奴隷の管理をする職業だから、あんまり痛めつけて辞められたら困るし、これくらいでいいだろう。
強制的に奴隷にするのさえやめれば特に言うことはない。
「さて、戻りますか」
俺が振り向くとゲルムさんとリーレさんがドン引きしている。あれ?脅かしすぎたかな?
ちなみに、ユアは精霊と遊んでいた。この子、動じないな。
ユアと手を繋いで街の壁を透過して抜け出す。門なんてあってないようなものです。
街の外に控えていた仲間たちと合流する。
「なんでご主人様は私たちと離れると別の女の子を連れてくるんでしょうか」
ローリアが無表情で俺を見据える。
「リーレが無事なので構いませんが……」
アーレは何か言いたそうだ。
「ユイトなら仕方ないのかなって」
メリーは納得したかのような表情。それはそれでなんでだよ。
「ユイトがいいなら構わないわ」
アイリは俺が良いなら良いらしい。勇者は寛容だ
「とりあえず、ただいま。じゃあエルフの里にでも向かいますか」
とりあえず、西のエルフの里を目指すことにした。
「お兄さんはなんで精霊さんと一緒にいるの?」
ユアが不思議そうに首を傾げている。
俺はスキル【精霊視】を使って周りを見回してみる。確かに周りにわざわざ救出のために連れてきた精霊が飛んでいる。
つまり、この子には精霊が見えているのか。
「精霊が見えるんだね」
「お兄さんにも見えるの?」
ユアが純粋な目で尋ねてくる。
どうしよう。精霊が見えることはゲルムさんとリーレさんには言ってないんだけどな。
「うん。お願いしてついて来てもらったんだ」
俺は正直に見えることを話した。後ろでゲルムさんが首を傾げている。
「ユアを助けにきたんだ」
「そうなの?」
俺の言葉にユアは精霊に確認を取る。精霊はふわりっとユアに近づいて肩に座った。
『そうなの』
精霊がユアの耳元で答える。
「ついて行っても大丈夫なの?」
ユアが精霊に尋ねる。ああ、俺はユアに警戒されているのか。
『だいじょうぶなの。おかしやまりょくもくれるの』
精霊が安全性を保障してくれるけど、それだと俺がお菓子や魔力で誘拐しようとしているみたいだよ。
「お菓子なの!」
ユアの目が明らかに輝く。この子、簡単に誘拐される子だ。
「クッキー食べる?」
俺は空間魔法で取り出したクッキーを差し出す。
「クッキーなの!」
ユアは美味しそうにクッキーを食べ始めた。
「あんまり時間がないからそろそろ行こうと思うんだけど、いいかな?」
「はいなの」
出発することを伝えるとあっさり了承が貰えた。どうやら信頼を得られたようだ。ユアの【隷属の首輪】を外す。
再び俺が先導して出口に向かう。来るときに警備を眠らせてしまったから、帰りはもっと簡単だ。碌に警戒しないで歩ける。
「まさかこんなに簡単にいくとは」
「ラッキーでしたね」
店を脱出するとゲルムさんが茫然という。リーレさんも目を丸くしている。ユアは眠そうにしている。こんな時に平然としていられるユアが1番大物かもしれない。
そんな中俺は幸運であったかのように返す。簡単に警備が少ないルートが見つかったから、実際に幸運ではあったね。
「街の外に行きましょうか」
夜間は本来街の外には出られないんだけど、俺の魔法で何とかするつもりだ。透過してもいいし、飛び越えてもいいしね。
「まさか、厳重な警備があっさりと突破されるとは」
街の外に出ようとしていた俺たちに声がかかる。
例の奴隷商人が配下を従えている。歩いている俺たちと鉢合わせる形になった。そういえば、店の中は見ていたけど、外を気にするのを忘れていたよ。
「わが奴隷リーレよ!こっちに戻ってこい!」
奴隷商人が高らかに発言する。
しかし、その声は虚空に消え、何も起こらなかった。
「あの……首輪は外したのでリーレさんに命令はできませんよ?」
「なっ!?」
俺の発言に奴隷商人が驚愕する。
リーレさんの首元見れば分かると思うんだけどな。普通は【隷属の首輪】を外せないから仕方ないのかな。
「なんなんだ、お前は!ただの魔法使いかと思ったらエルフに肩入れしやがって!」
初手が潰された奴隷商人はいらだちを露にした。まさかの逆切れである。
別にエルフに肩入れしているつもりはない。ただ強制的に奴隷にするというやり方が気に食わなかっただけだ。
「しかも、この前お前に譲った奴隷も魔法を隠しやがって!分かっていれば譲ったりしなかった!」
さらにいちゃもんを付けられた。
譲った奴隷とはローリアのことだ。ローリアは別に魔法を隠していたわけじゃない。俺が教えただけだ。
「畜生!全部お前が悪い!野郎ども奴を殺せ!」
どうやら標的が俺に定まったようだ。もうエルフの奴隷とかどうだっていいんだろうな。それか俺を殺したらどうにでもできると思っているのか。
最初に突撃してきた男の攻撃を避けて蹴り飛ばす。男は後ろの数人を巻き込んで倒れた。
次に斬撃を加えようとしてくる剣士の振りかざしてきた手首をつかんで、奥の男に投げつける。
最後にうろたえているムンク風の男に急接近し、男の首に手刀を食らわせて眠らせる。
結局、剣を抜くことなく片付けることができた。
「あとはあなただけですよ。奴隷商人さん」
少しにやりと笑って奴隷商人に対面する。奴隷商人は後ずさりをして、明らかに怯えている様子だ。
「無理やり人を奴隷に落とすような人ですから、腕の1本や2本折ってもいいですよね」
奴隷商人に1歩近づく。
「それとも魔法で燃やしてもいいかな」
また1歩近づく。
「ひえっ…助けて、助けてくれえええ!」
奴隷商人は叫びをあげて逃げ出した。
少しは懲りただろうか?もともと奴隷商人は奴隷の管理をする職業だから、あんまり痛めつけて辞められたら困るし、これくらいでいいだろう。
強制的に奴隷にするのさえやめれば特に言うことはない。
「さて、戻りますか」
俺が振り向くとゲルムさんとリーレさんがドン引きしている。あれ?脅かしすぎたかな?
ちなみに、ユアは精霊と遊んでいた。この子、動じないな。
ユアと手を繋いで街の壁を透過して抜け出す。門なんてあってないようなものです。
街の外に控えていた仲間たちと合流する。
「なんでご主人様は私たちと離れると別の女の子を連れてくるんでしょうか」
ローリアが無表情で俺を見据える。
「リーレが無事なので構いませんが……」
アーレは何か言いたそうだ。
「ユイトなら仕方ないのかなって」
メリーは納得したかのような表情。それはそれでなんでだよ。
「ユイトがいいなら構わないわ」
アイリは俺が良いなら良いらしい。勇者は寛容だ
「とりあえず、ただいま。じゃあエルフの里に向かいますか」
とりあえず、西のエルフの里を目指すことにした。
精霊は見える人も少なければ、声が聞こえる人はもっと少ない設定です。
そしてユアの口調は精霊と同じ子供っぽい「~の」と語尾につく喋り方です。
次回はまた道中の話になります。




