まずは確認を
「ハーニカの街が見えてきましたね」
俺はゲルムさんに向かっていう。
「ああ、あそこにリーレが……」
ゲルムさんはリーレさんの心配をしているみたいだ。
もうすぐハーニカの街に着く。すでに少し懐かしいな。
「まずは私が奴隷商人を訪ねてエルフがいるか確かめます。エルフがいたら今夜助けます。すぐに逃げるために宿は取りません。宜しいですか?」
ゲルムさんに大まかな流れを説明する。宿を取ったら宿に迷惑がかかるかもしれないもんね。
「わかった。私は馬車で街の外で待っていればいいんだな?」
「はい」
エルフがいるか確認している間は、ゲルムさんには街の外で待機してもらう。エルフが訪ねてきたら奴隷商人は警戒するだろうからね。
街の近くに馬車を止める。
「よろしく頼む」
「はい。みんな行こうか」
ゲルムさんに応えて街に向かう。
ちなみに、俺たちはフードを目深に被った格好をしている。助け出す際に暴れても大丈夫なように姿を隠している。ハーニカの街では俺はちょっとした有名人だから目立つ。
ギルドカードを見せて街に入る。今日の門番はイーニアさんではなかった。騒ぎにならないからいいけど、元気にしているか気になる。
「奴隷商人のところに行ってくるね。みんなは街で買い物していて」
仲間にお小遣いを渡す。受け取ったローリアが仲間と目を合わせている。
「ご主人様は1人で行くんですか?」
「うん、あんまり大勢で行くような場所じゃないし、アーレはエルフだから行かないほうがいいし、ローリアも行きたくないよね?」
ローリアがコクンと頷く。アーレもなんだか申し訳なさそう。
「気にしないで。アイリに買い物や役に立つ知識を教えてあげて」
「わかりました。お任せください」
アーレが俺に応える。アイリがこの世界に慣れるためにも俺だけで行ったほうがいいだろう。
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奴隷商人の店に向かう。奴隷を扱っているだけあってあまり明るい所ではない。
「ごめんください」
店の扉を開いて店内に入る。この店に来たのはローリアを迎えて以来か。
「いらっしゃい」
奴隷商人がこちらを訝しんでみる。フードを目深に被っているから仕方ないか。
「どうもおひさしぶりです」
俺はフードを脱いで顔を晒す。
「おやおや、いつかの魔法使い様でありませんか。どのようなご用件で?」
俺のことを覚えていたようだ。この人には魔法のことは言っていないが、俺が広場で曲芸を見せたのを知っているのだろう。
「奴隷を見に来ました」
「おや、この前の奴隷ではお気に召しませんでしたかなぁ?」
この前の奴隷っていうのはローリアのことか。もちろんそんな用事ではない。
「いえ、役になっていますよ。ですが、愛玩奴隷がほしいんですよ。例えば、エルフのような麗しいのが」
エルフという単語を出してみる。
「愛玩奴隷ですか。エルフでなくても揃っていますよ」
「いえ、私はエルフのような端正な顔立ちが好きなんですよ。できればエルフがいいです。お金なら貯めてきましたから」
奴隷商人の言葉に俺はお金ちらつかせながら答える。本当はエルフを買うだけのお金なんてないけど、お金があるように印象付けるためだ。
奴隷商人がにやりと笑う。
「では、ご案内しましょう。ちょうど1人エルフが入っていますよ」
カモかと思われたかな。まあ、見せてくれるならちょうどいいかな。
「ええ、おねがいします」
俺も少し悪い顔をして答える。
奴隷商人について店の奥に進む。
店の奥は牢屋のようになっており、中には何人か奴隷がいる。あんまり衛生的には見えない。奴隷の扱いは酷いものだ。ローリアもこうだったんだろうな。
「こちらですよ」
更に奥の部屋に入る。
奥も牢屋のようになっているが、こちらは衛生的のようだ。牢屋の中を見ると広くはないが1人1部屋のようだ。
こちらは特別な奴隷がいるのだろう。
「エルフはこいつだけです」
1つの牢屋の前で止まる。中には端正な顔立ちをした奴隷が1人いた。耳が尖っており、なんとなくアーレに似ている。エルフってみんな似たような顔をしているんだな。
エルフは自分の身体を抱きしめるように身体を隠して、こちらを睨みつけている。エルフは肌を見せるのを嫌うからこの反応は仕方ない。申し訳ないけど我慢してもらおう。
俺はエルフに【アナライズ】使う。これでリーレさんか分かるだろう。
名前:リーレ・プレリーク
種族:エルフ
年齢:212
レベル:23
状態:良好
ステータス
MP:B
魔力:B
攻撃力:D
守備力:D
魔法攻撃力:C
魔法防御力:C
敏捷力:B
ラック:40%
〈スキル〉
―魔法―
精霊魔法:雷(3)、
―戦闘―
体術(3)、剣術(3)、弓術(5)
―技術―
裁縫(2)、演奏(5)料理(3)、家事(4)夜目(4)、回避(3)、御者(3)、歌唱(2)、自己治癒(2)
―耐性―
毒耐性、麻痺耐性、
〈適正〉
弓術、精霊魔法:雷
「確かにエルフみたいですね」
「ええ、手に入れるのに苦労しましたよ」
奴隷商人が俺の言葉に反応した。どう苦労したのか気になるが、ここで聞いたら不自然かな。
「素晴らしいですね」
「ほう。では?」
「いや、購入は考えさせてください。安い買い物ではないので」
「確かに、では是非ご検討ください」
上手く話を購入しない方向にずらせた。こうしている間にもエルフはこちらを睨んでくる。居心地が悪いな。
「他の奴隷も見ていかれますか?」
「いえ、エルフを買うか決めるまで無駄遣いはできませんよ。今日はこれで失礼します。お手数おかけしました」
「また起こし下さい」
奴隷商人に探りに来たことを悟られないように会話して帰る。
この店にリーレさんがいることは分かった。とりあえず、目標は達成だな。
【マップ】で仲間の居場所を確認して合流する。
「ユイト、どうだった?」
俺を見つけたアイリが尋ねてきた。
アイリたちは買い物を楽しんだ様子だ。道中の食料の買い物も任せてあるから荷物が多そうだ
「リーレさんいたよ。早速ゲルムさんに報告しようか」
俺はメリーから荷物を預かりながら答える。最も重そうだったからね。
「よくリーレだと分かりましたね」
「そこは魔法でね」
俺は指を振ってアーレに応える。アーレの目元が少し緩んでいるから、きっと苦笑いしているかな。
馬車に戻ってゲルムさんに報告したら、予定通り今夜助けることになった。ゲルムさんはリーレさんが気になって仕方がないようだった。
※キャラクターのステータスは後に変更されることがあります。
リーレのステータスは本編に強く影響しないかと思いますが、不都合があった場合変更する可能性があります。
次回、リーレを助け出します。




