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異世界魔法で曲芸士!  作者: 常世 輝
ハーニカの街
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初戦闘

森に歩いて約10分、俺は楽しくなってきた。


元いた世界では病弱で森の獣道を歩くなんて経験はしたことがなく、身体の調子が良い時でもこれほど身体が軽くて気分が良い時はなかった。

森は鬱蒼としていても、俺の気分はとても晴れ晴れとしていた。


森には元の世界では見たことがない植物が多くあった。中には、元の世界の常識では考えられないような植物もあった。

元の世界の動物に特殊な特徴が加わった動物みたいなのがいて、ファンタジーを感じさせる光景に俺の気持ちは高揚していた。


綺麗な花に惹きつけられた。

花を手折ってみる。花弁が尖っている黄色い花だ。中学の頃に習った単子葉類っぽい葉っぱをしている。


「【アナライズ】」

自分のステータスを調べた時のように植物に魔法を使ってみる。この植物を知りたいと思いながら魔法を使った。


名前:痺れ花


概要:花には麻痺にする毒がある。花を乾燥させてすり潰すと強い痺れ粉になる。葉っぱには麻痺を治す作用があり、煎じると麻痺回復ポーションになる。虫に食べられないように麻痺の毒を作り出すように進化したといわれている。


……まさか、活用法と進化の由来まで調べられるとは思っていなかった。今度からはもっと魔力を抑えて調べよう。進化の由来まで知らなくていい。


そのあと【アナライズ】をしながら森を歩いた。魔法の練習とこの世界のいろいろなものを知りたかったからだ。

途中に薬草を見つけたので痺れ花と薬草は採集した。


鑑定をしながら【アナライズ】について分かったことがある。

【アナライズ】は魔力を込めるほど詳細に鑑定ができる。そして、知りたいことを思い浮かべながら発動するとそれを調べることができる。人間を【アナライズ】するときは気を付けよう。下手をしたら個人情報が筒抜けだ。さすがに不味いだろう。


さらに森を南に進むと大きな音が聞こえた。ちいさな動物がこちらに駆けてくる。俺には目もくれず一直線だ。


訝しく思っていると動物たちが逃げてきた方向から大きな動物が現れた。森の中で見た動物とは違い禍々しい感じがして、他の動物とは明らかに一線を画していた。これがきっと魔物だろうと思った。


見た目はイノシシのようだが、過剰なほど大きい。そして全身が黒っぽい。魔物がこちらに気づく。こちらを睨みつけて今にも襲ってきそうだ。


「【アナライズ】!」


名前:ブラック・ボア

魔物

ランク:B

種族:ボア種

 概要:一般的に黒色のボア種のことをいう。他のボア種よりも嗅覚が非常によく、食料を見つける能力が高い。そのため身体が巨大になる個体が多い。戦闘能力が高く、突進を得意である。興奮状態になると突進により周辺のものをなぎ倒しながら進む。肉は良質で旨味がある。巨体であるため、飢饉の際にブラック・ボアを狩ったものが村を救い英雄となった逸話がある。

 

初めて見る魔物に興奮してしまってまた魔力を込めすぎてしまった。逸話まで調べる気はなかった。あと旨味があるんだね。


俺は腰に差してあった片手剣を抜いて構えた。構えはゲームの構えを参考にしたが、違和感があったので腰を低く落とした。違和感がなくなったので魔物を見据える。


魔物が突進してくる。巨漢に見合わずすごいスピードで迫ってくる。

慌てて走って魔物の進路から離れる。俺のスピードは自分でも驚くほど速かった。魔物が止まり、振り返ってこちらを睨みつけてきた。


もう1度魔物が突進してくる。

今度はぎりぎりまで待ってから左に紙一重で避けた。避けた際に剣で斬りつける。刃は魔物を斬りつけたが、魔物が巨大すぎて致命傷にならなかった。魔物が痛みからか叫びをあげる。


魔物が再び振り返える。

動きを止めている間に俺は魔法を試してみる。左手を地面につき魔力を込める。地面に魔力を通し、地面を起伏させるイメージだ。


魔物の下から土の柱が伸び魔物の身体を押し上げる。

魔物は空中に投げ出され、10メートルくらい飛んで自由落下した。自分の体重のせいでかなりの勢いで地面に打ち付けられたようだ。それでも、魔物はよたよたと立ち上がる。


俺は魔物が動けないでいるうちに次の魔法を使うことにした。次は風魔法だ。空気を圧縮して飛ばすイメージをして、さらにイメージを確固たるものにするため呪文を唱える。


「【ウィンド・カッター】!」


圧縮された風の刃が魔物に飛ぶと、呆気なく魔物を両断した。

両断された魔物の光景はグロテスクだったが、すでに人間を殺してしまっている俺はあまり動揺することはなった。


空間魔法で魔物を収納する。血抜きをしたほうがいいだろうが、空間魔法なら時間も経過しないから後でいいだろう。食べるのが楽しみだ。


戦闘について考察してみる。

俺の身体能力は非常に高い。身体は素早く思った通りに動く。

魔法の威力も高い。魔物の巨漢を10メートルも押し上げるとは勢いの乗った土魔法だったのだろう。風魔法もまさか一発であの巨体を両断できるとは思っていなかった。


そして、ブラック・ボアがBランクである。テンプレではS、A、Bランクと下がっていく。つまりテンプレ通りなら上から3番目のランクをあっさり倒してしまったのだ。


強いやつを屠れる者として有名になりたくない。俺の夢はあくまで曲芸師なのだ。


自分の過剰な力に少し困惑しながら南に歩き始めた。

最終的には防衛の力があるから抑えて使えばいいかと納得した。諦めたともいう。


歩いて一時間ぐらいで森を抜けた。もともと森が暗かったため気づかなかったが、すっかり夜になっており、今日は野営をすることにした。


道具袋からテントを取り出す。森の民の住宅にあったものだ。悪戦苦闘しながらもなんとか組み立てることができた。


テントの中で食料と調理器具の魔法道具と布団を取り出す。すべて森の民のものだ。ありがたい。森の民を代表してクルスに心の中でお礼を言った。


ベーコンと卵を塩と胡椒をして焼いて、パンをトーストのようにしてベーコンと卵を乗せて食べた。うん、美味しい。胡椒のストックはあまりないけど使ってよかった。


食べたら眠くなってきた。食べたら安心して疲れが出たようだ。


「【クリーン】」

身体と布団綺麗になるようにイメージして魔法をかけた。聖魔法により身体と布団が淡く光る。聖魔法であったことに驚いたが、なんとなくすっきりした。


寝ている間に魔物が来ることを予想して罠のために魔法を使うことにした。テントの外に出て魔法を唱える。


「【トラップ】!」

周りの生物に反応するセンサーをイメージして魔法を唱えた。念のために呪文と気合を付けた。闇魔法だった。


魔法で魔力を使った疲れから溜息をついてから空を見上げた。

空には爛々と星が輝いており、月明かりが世界を照らしていた。

病弱で田舎で療養したときでもここまで綺麗に見えたことはなかった。星々の微妙な色の違いも分かるようで、まさに満天の星空といった感じだった。


俺は星空を十分に満喫してから就寝した。


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