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異世界魔法で曲芸士!  作者: 常世 輝
王都ユーラング
69/87

ハーニカへの道のり 模擬戦

10/14の18:00頃に一度投稿しています。

読んでいない方はそちらも読んでいただければ幸いです。


「ユイト!勝負しよう!」

 メリーが俺に提案した。


 今は馬を休めるために休憩している。


 メリーは戦いが好きな一面がある。魔物と遭遇した時には率先して戦う。


 バトルジャンキーというやつかもしれない。活発な子だ。


「模擬戦だね。いいよ」


 せっかくだから仲間の戦闘を確かめておこう。【アナライズ】でステータスは分かるけど、戦い方までは分からないからね。


 メリーが道具袋から【ミスリルの短剣】を取り出した。俺も腰に差している【霊剣ヤタガラス】を抜く。


 ゲルムさんもいるから、魔法は禁止だ。


 ゲルムさんには火魔法が使えるとは言ってあるけど、どの程度使えるかは言っていないからね。


「この前の僕だと思ったら大怪我するよ!」

「お手柔らかに頼むよ」

 お互い構えて声をかけあう。


 最初に会った時メリーは、駆け出しのFランク冒険者だった。今ではCランク冒険者になっていて、わざわざ俺を追いかけてくれた。


 どんな戦い方をして、どれくらい強くなったのか楽しみだ。


「ローリア、合図をお願い」

「はい。怪我はしないでくださいね」

 ローリアに合図をお願いする。今日もローリアはいい子だ。


「はじめ!」

 ローリアの合図に聞こえた瞬間、メリーが駆けだした。


 素早い!あっという間に俺に肉薄する。


 俺の剣とメリーの短剣が重なる。


「簡単に止めちゃうんだもんなっ!」

 メリーが愚痴を漏らしながら次々と連撃を加えてくる。


 メリーは素早く相手に近づいて、圧倒的な手数で相手を翻弄する戦い方をするのか。


「かなり強くなったね」

「なんで余裕なのさ!」

 俺が褒めたらメリーに怒鳴られた。


 メリーは手数こそ多いものの、その分だけ一撃が軽い。【ミスリルの短剣】のお陰で魔物には攻撃が通るだろうけど、俺だと剣を合わせるだけで弾けてしまう。


「まだまだっ!」

 メリーが跳ねた。俺の頭上を前転宙返りしながら越える。


 小柄なメリーらしい身軽さを生かした後ろの取り方だな。


「よっと!」

 振り返って、メリーの斬撃を受け止める。


「もうっ!」

 受け止められたことにメリーは少しイラついているみたい。


 メリーは再び跳ねる。


 今だ!


 俺は空いている左手で、俺の頭上で回るメリーの右腕を掴む。

「え?」


 そのまま引き寄せて、俺の両腕で受け止める。所謂、お姫様抱っこだ。


「参った?」

「うぅ……、参りました」

 メリーの短剣を持った右腕を俺が抑えているから、メリーは攻撃できない。


 俺もメリーを受け止めるために霊剣を置いたけど、この状況では明らかに俺の勝ちだろう。


「メリーはみんなで戦っている中に紛れて、不意を打つのもいいかもね」

「考察はいいから下ろしてよー!」

 意見を述べていたら、メリーから抗議がはいった。


「ごめんごめん」

「もう、お姫様抱っこは勇者様の特権だよ!」

 そういいつつ、メリーが抱き着いてきた。お姫様抱っこは駄目で、ハグはいいのか。乙女心は分からないな。


 勇者の物語が好きなメリーなりのこだわりがあるのかもしれない。


「次はアイリも戦う?」

「あたしも?」

 戦いの様子を黙って見ていたアイリに尋ねる。


 勇者とも戦いたいよね。俺と同じスキル【勇者剣技】があるからいい戦いになるんじゃないかな。


「うん、やるわ」

 アイリは少し考えてから大剣を取り出した。


 アイリは勇者なのでゲルムさんにも魔法が使えることがバレている。


 だから、いくら珍しい空間魔法を使っても気にしない。


「じゃあ、またお願いね」

「はい、ご主人様」


 ローリアに合図をお願いして構える。


 アイリは華奢な身体には不釣り合いな大剣を構えている。


 元の世界で病弱だったとは思えない。いや、それは俺もなんだけどさ。


「はじめ!」


 ローリアの合図が聞こえると、アイリが跳ねた。


「てやぁあ!」

 大きく飛び上がったアイリは、大剣を振り下ろしてきた。


 大剣の重さを利用したいい攻撃だ。


「あぶなっ!」

 俺は落下してくるアイリの攻撃を横に跳ねて避ける。


 下手に受け止めたらせっかくの霊剣が折れそうだ。


 アイリがまた跳ねた。


 今度はメリーと同じように俺の頭上を越える。メリーとの戦いを見て考えたのかな?俺は後を追って振り返る。


 アイリが着地したと同時にまた飛び跳ねた。再び俺の頭上を越える。


 俺は慌てて振り返ってアイリに向き直る。


 そして、再びアイリが跳ねた!

「アイリ?」


 初撃以外、さっきからアイリは俺の頭上を飛んでばかりだ。


「もしかして、お姫様抱っこを狙ってる?」

 俺の指摘にアイリの動きが止まる。


「……」

「アイリ?」

「……うん」

 アイリが認めた。


「だって!私がユイトを本気で切れるわけないもん!」

「え?」

 突然そんなこと言われてもな……。


 ざくっ


 アイリが大剣を地面に突き刺した。それ聖剣だよね?そんな扱いでいいのかな。


 アイリがこちらに両腕を伸ばす。

「はい」

「何その腕と、声は?」

「お姫様抱っこよ」


 さも当然のように俺にお姫様抱っこを要求してくる。


「ちゃんと戦わなかった子には、なし」

「えぇ!」

 アイリが大げさにがっかりした。


 アイリは俺とでは本気で戦えないか。


「じゃあ、メリーと戦ってみてよ」

「僕と?いいよ!」


 戦いが好きなメリーは戦いたいみたいだし、ちょうどいいな。


「勝ったらお姫様抱っこね?」

「分かったよ」

 アイリはどうしてもお姫様抱っこされたいらしい。乙女の夢なのだろうか?


「じゃあ、はじめ!」

 今度は俺が合図をする。


 メリーが素早くアイリに近づいた。


 アイリは大振りに大剣を振り回す。


 アイリが大剣の重さを感じさせない速度で攻撃するが、メリーがそれを上回る速度で動きまわる。


「本気で人が戦うと曲芸のようにみえるんだな」

「ご主人様。たぶん、あの2人だからです」


 アイリはメリーを近づけないように大剣を振るい、メリーはアイリの攻撃を素早く避けている。


 俺にはこの光景が1つの演目にさえ見えた。


「ユイトにお姫様抱っこしてもらうんだから!」

「僕がしてもらう!」


 何か聞こえるけど気にしないでおこう。メリーはお姫様抱っこ反対派じゃなかったのか。やっぱり乙女心は分からない。


「アーレ、彼らはなんであんなに強いの?」

「……さぁ?」


 ゲルムさんは頬杖を突いている。アーレは少し呆れている。


 まぁ、仲間の魔法使い以外の戦闘能力が確かめられたから、いいか。


 そろそろ、ハーニカの街につくかな。


今回は戦っていませんが、アーレもなかなかに強いです。

ローリアはまだまだ修行中

そんな感じの設定になっています。


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