王都の演劇
今日は2話連続で投稿しています。
前回を読んでいない方は、読んでいただけると嬉しいです。
俺は身体に違和感を覚えて目を覚ました。
微睡みの中で違和感の正体を探る。何かが俺にくっついているみたいだ。
(ローリアかな?)
俺はいつも通りローリアと一緒に寝た。
ローリアは寝ているとき俺に抱き着いたり、身体を丸めて俺の懐に潜り込んだりと寝相の少し悪い子なのでたまにあるのだ。
俺は再び眠りにつくことにした。いつもより早いぐらいだから、もう少しだけ寝よう。
俺が再び寝ようとすると、今度は抱き着かれた。キュッと力が入れられていて身体が密着する。
怖い夢でも見ているのだろうか?いつもよりも力強くて柔らかい感触が伝わってくる。
柔らかい感触が伝わってくる?
ローリアはないわけではないが、どちらかというと貧乳だ。今まで抱き着かれたときに、これほど感触が伝わってきたことがあっただろうか?いや、ない。
微睡みの中俺は目を開けた。ぼやけた視界にはすやすやと眠るローリアの姿があった。
では、俺にしがみついているのは?
俺は優しい抱擁の拘束を解いて身体を起こす。
「メリー?」
俺に抱き着いてきたのはメリーだった。
「メリー、起きて、ベッド間違えてるよ」
俺はローリアを起こさないようにメリーを揺すって起こす。
「ん……ユイト?」
寝ぼけ眼でメリーが見つめ返してくる。
「ベッド間違えてるよ」
俺は再びメリーにいう。
2人部屋を取ったので、ベッドは2つある。1つは俺とローリアで、もう1つはメリーという風に分けた。
こちらは俺たちのベッドのはずだ。その証拠にローリアが寝ている。
「んー?いいよ~寝よ?」
メリーが眠そうに俺に抱き着いて寝息を立て始めた。
もういいか。俺も眠いし。
俺はそのまま倒れて寝ることにした。
まあ、別にいいよね……
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「ご主人様。ご主人様!」
「ん?」
ローリアに起こされる。まだ起床にはいつもより少し早いくらい。
「おはよう、ローリア」
「おはようございます」
挨拶をかわす。
「ご主人様!なんでメリーさんと抱き合って寝ているんですか!?」
ローリアにしては珍しく激しい剣幕だ。
「違うんだよ。ローリア、あのね……」
俺は出来るだけ誤解がないように弁解した。
この弁解に時間がかかった。いつも起床する時間になるくらいには……
「わかりました」
「納得してくれたようで何よりだよ」
上手く弁解出来て良かった。仲間の関係が気まずくなったら嫌だもんね。
「メリー、起きて。メリー」
メリーを揺すって起こす。俺がローリアに弁解している間、全然起きなかった。
「うーおはよう。ユイト」
瞼を擦りながらメリーは起きた。今度はちゃんと起きそうだな。
「出かける準備をしようか」
ローリアと眠そうなメリーに声をかけて準備を始める。
今日は全員で演劇を見に行く予定だ。
ローリアとした約束だが、アーレとメリーを誘ったら全員で行くことになった。
こういうのはみんなで楽しんだ方がいいよね。
出掛ける準備をしていると、扉がノックされた。
「失礼します」
アーレが入ってきた。
「おはよう、アーレ」
毎日、【クリーン】と【コンディショナー】と【フレグランス】をかけているから、アーレが訪ねてくるのはすっかりお馴染みの事だ。
「じゃあ、寄って。メリーも」
ローリアとアーレはいつも事なのですぐに近づいてくれた。メリーは初めてなので手招きして呼ぶ。
メリーは俺に近づいてポスッと俺の胸に収まった。この子はパーソナルエリアとかはないのだろうか?
「よしよし。【クリーン】、【コンディショナー】、【フレグランス】」
胸に収まったメリーの頭を撫でてから魔法をかける。
3人の髪がふわりと動く。今日の【フレグランス】は少し甘い林檎の香りだ。
メリーが【フレグランス】の香りを嗅いでいる。
「いい香り~」
メリーが俺の胸に顔をうずめたまま感想を述べた。
メリーは【コンディショナー】で髪が綺麗になったことよりも、良い香りが付いたことが嬉しいみたい。
「じゃあ行こうか」
俺は声をかけて出発することにした。
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「席を4つお願いします」
俺は演劇を見る席を購入する。ローリアと約束した演劇をみんなで見に来た
貴族も見るような演劇のため少し高いが、誘ったのは俺なので全員分支払った。
仲間で楽しむための必要経費だよね。
今日見るのは初代の勇者様の冒険を題材にした物語だ。勇者ということは俺のように別世界から来ただろうから、俺はとても楽しみにしている。
もしかしたら、初代勇者も同じ日本人かもね。
「楽しみだね!ユイト!」
メリーは言葉通りとても楽しみにしている。メリーはこの物語が好きらしい。とても有名な絵本もあって、それを愛読していたそうだ。
「ああ、でも大きな声をださないようにね」
たぶんメリーは見ていて声を出すタイプだろう。
「そんなことしないよ~」
そういうなら信じようか。
俺たちは購入した席に座った。俺の右にローリア、俺の左にメリー、ローリアの右にアーレが座る。
つまり、左からメリー、俺、ローリア、アーレの順番だな。
「本日はお越しいただいてありがとうございます!」
衣装を着た男性が出てきて、口上を言って恭しく頭を下げた。座長のような人だろうか?
観衆は彼に向かって拍手する。俺たちも混ざって拍手をした。
「本日の演目は勇者の中でも最強と謳われている初代勇者カズヤ様の冒険譚です。ぜひとも、楽しんでください!」
初代の勇者はカズヤというらしい。初代で最強とは主人公って感じがしていいよね。
まず、この物語の始まりは勇者が召喚されるところから始まる。
世界には強力な魔物が跋扈していて、人々は魔物に怯えながら暮らしていたそうだ。
そして王都は強力な魔物の軍勢に攻められているところに、カズヤは勇者として召喚された。
いきなり召喚された勇者カズヤは、王都が攻められて人々が蹂躙されていることを聞くと、剣を取って魔物と闘った。
満身創痍になりながらも勇者として恵まれた能力によって魔物を退けた。しかし、王女が攫われてしまう。
ここで場面が変わる。
魔物を退けたカズヤは身体を休め、仲間探しの旅に出た。
王女を救うために立ち上がった英雄。
最も優れた精霊魔法使い。
聖剣を唯一打つことが出来る鍛冶師。
勇者に剣術や体術を教えた剣士。
慈悲深く、優れた回復魔法を扱う聖女。
水魔法を得意とした魔法使い。
世界中から集まる大会で優勝した武道家。
カズヤは多くの仲間に恵まれて、技を磨いていた。
仲間を集め終わるころには、カズヤは右に出る者がいないほど優秀な魔法剣士になっていた。
そして、仲間たちと共に神がこの世界に落とした伝説の剣を見つけ、引き抜くことに成功した。
また場面が変わる。
勇者カズヤは数々の困難を乗り越えて魔王の元にたどり着いた。
仲間たちと力を合わせて辛くも勝利し、世界を救った。
そして、震えて助けを待っていた王女に向かって言う・
「さあ王女様、魔王は倒しました。私の手をお取りください」
手を伸ばした勇者に王女は抱き着いて2人は結ばれる。
そして勇者は世界を救い、王女を助け出した。よって今でもカズヤは最強の勇者として崇められている。
「面白かったな」
「ね!僕の言う通りでしょ?」
メリーは少し誇らしそうだ。メリーは大きな声は出さなかったものの、途中途中で声が漏れていたので、最初に釘を刺しておいてよかった。
ストーリーも良かったが、それ以上に演出が素晴らしかった。魔法道具を使って光などのエフェクトがつけられていて、この世界じゃないと出来ない表現だった。
俳優の演技も素晴らしく、剣を使った戦闘には緊迫感あった。本物の剣を使っているんだろうな。
そして、音楽も演技を引き立てていた。
エフェクトと音楽が最もよかったのは勇者が伝説の剣を引き抜くシーンと王女に手を差し伸べるシーンだろう。あれは良かった。
全体的に見て、とても完成度の高い舞台だった。
俺の曲芸にも生かせそうなことがあったから、良い経験になったな。
一応今回で伏線を貼っているつもりです。まぁいつ回収するかわかったもんじゃないですが...
活発な娘はかわいいですね。




