メリーのことと部屋割りのこと
先週投稿し忘れていたので2話連続で投稿します。
「ユイト~」
可愛い生物が俺の胸に頭をぐりぐりと押し付けてくる。まあ、メリーなのだが。
一緒に旅をすることを了承して、抱き着かれて、現在に至る。
「ユイトさん、その方は?」
アーレが俺にメリーについて尋ねてくる。そういえば、アーレとメリーは面識がなかったか。アーレはすでに顔を隠してあるな。
俺はメリーをアーレとローリアに対面させる。
「メリーだ。ハーニカで出会った冒険者」
「メリーだよ。獣人族です。よろしくね!」
俺の紹介に続いてメリーが自己紹介をした。
「アーレです。エルフです」
「ローリアです。小人族です」
アーレとローリアがそれぞれ種族名を述べた。2人らしい飾りっ気のない自己紹介だな。
「ユイトは異種族が好きなの?」
メリーが見当違いをしている。
「いや。そういうわけじゃないよ。特に偏見がないだけかな」
俺は自分の解釈を素直にいう。
異種といっても前世の人種くらいの違いしかないから、特に気にしていない。この世界では人族が他種族を嫌っているから俺は珍しいのかな。
第3王女を可愛いと思うくらいだから人族が嫌いというわけじゃない。拘りや偏見がないだけだ。
「でさ、メリーも仲間に加えたいんだけどいいかな?」
俺はアーレとローリアに尋ねる。アーレは事情が複雑だし、確認しておいた方がいいだろう。
「私は構いません」
ローリアは問題なし。
「はい。私も大丈夫です」
アーレも問題ないようだ。
「えへへ。よろしくね!」
2人が了承してくれてメリーは嬉しそうだ。
「メリーはこの街に着いたばかり?」
さっき抱き着かれたときに汗のにおいがした。たぶん、着いたばかりだろう。
「うん!」
「じゃあ、これからギルドにでもいくか?」
冒険者が街に来たのならまずはギルドに寄るだろう。冒険者を続けるのならば、ギルドに国が変更になったことで手続きをしないといけない。
「ううん。もうやらないから行かなくていいよ」
「え?」
俺の予想とは外れたので思わず聞き返す。
「Cランクになったら指名依頼や強制依頼があるから、ユイトと一緒にいれなくなっちゃうもん。だから、僕はここでは冒険者にならないよ!」
メリーが今度は明確な理由を上げてきた。
後から聞いた話だが、獣人族はCランクになったら人族に馬鹿にされないから、メリーはCランクになってから俺を追って来たらしい。Cランクにあげたら出ていかれたハーニカのギルドマスターは少し不憫だ。
「そうか」
俺は無難な答えを返す。実際は献身的なメリーな言葉に照れたのを誤魔化しただけだ。
「ユイトは今何してるの?」
メリーが尋ねてくる。これはたぶん、ここで何しているのか?という質問だな。
「買い物が終わって、今は昼食だよ」
そういえば昼食として食べ歩きしている途中だった。メリーの出現で忘れてたよ。
「そういえばお腹空いた!僕も何か食べよ」
そういってメリーはきょろきょろと周りを見渡した後、小走りで串にささった肉を買いに行った。
「嵐のような子です」
少し呆れたような口調でアーレが俺にいった。
「そうだな。元気な妹ができたような気分だ」
前世で俺には妹がいなかったから、実際にいたらこんな風なんだろうと思う。
「ご主人様にとってメリーさんは妹ですか」
ローリアが呟く。
「ユイト!これ美味しいよ!」
串に刺さった肉をもって元気にメリーが戻ってきた。
口の周りに少しタレを付けながら食べるメリーの姿は、まさに手のかかる無邪気で微笑ましい妹のような感じだろう。
「ほら、タレがついてるぞ」
俺は道具袋からタオルを取り出してメリーの口元を拭く。
「えへへ、ありがとう!」
メリーは嬉しそうに笑顔を咲かせた。
世話の焼ける子だな。まあ、悪い気はしないけどね。
「メリー、宿屋はもう取った?」
「ううん」
俺の問いにメリーは首を振って答える。
「じゃあ、俺の泊まってる宿屋でいい?一旦戻っていいかな?」
俺はメリーに提案した後に、アーレとローリアに許可を得る。
「うん!」
「わかりました」
「はい。構いません」
メリー、ローリア、アーレの順番でそれぞれ承諾してくれた。
俺たちは宿屋に戻ってきた。
宿屋のおばちゃんに確認を取ると部屋は空いているそうだった。
まあ、それは良かったのだが。
「部屋を3つ取って、ローリアとメリーが2人部屋で、俺とアーレがそれぞれ1人部屋でいいか」
俺は3人に提案した。
メリーが来たし、俺とローリアがもう一緒に寝る必要はないだろう。
「ご主人様、奴隷と主人が別々の部屋というのは対外的によくありません。私とご主人様を一緒にしましょう」
ローリアが珍しく意見を述べてきた。
確かに、主人と奴隷が部屋を分けるのは、主人が奴隷を嫌っている場合ぐらいだろう。でも、またローリアには狭い思いをさせてしまうのではないだろうか?
「私は、ご主人様と一緒でも大丈夫ですから」
ローリアがまるで俺の心を読んだかのようにいった。
「僕もユイトと一緒でいいよ」
少し恥ずかしそうにメリーがいった。
「いや、それだと狭いよ」
流石に、1人部屋に3人は狭いだろう。ベッドだって1つしかないから身動き1つ出来ない。
「すみません、私のせいで。私が問題なければ4人部屋を借りればよかったのですが……」
アーレが申し訳なさそうにいった。
「アーレのせいじゃないよ」
お互いの事情はしっかり踏まえないとね。
「じゃあ、こうしようか。1人部屋と3人部屋を借りるってことで」
俺は最後とばかりに提案した。俺と一緒の部屋であることにメリーとローリアは文句なさそうなので、これが狭くなくていいだろう。
「ご主人様、2人部屋にしましょう」
ローリアは頑なに意見をかえない。俺が言うと大抵賛同するのに、珍しい事はあるものだ。
「ローリア、奴隷とかは気にしなくていいんだよ?」
俺はローリアを優しく諭す。
俺はローリアが奴隷だからといって、それらしい扱いをするつもりはない。ローリアが少しでも嫌だと思うなら、別に部屋をとっても構わないくらいだ。
「2人で部屋の方が安く済みますし、私はちっとも嫌ではありません!」
ローリアが強く主張してきた。
確かに、経済的ではあるな。
「じゃあ、1人部屋と2人部屋にしようか」
ローリアはしっかり考えてくれていたんだな。本当にいい子だ。
結局、俺とローリアとメリーで2人部屋に泊まり、アーレが1人部屋に泊まることになった。
俺とローリアが一緒に寝ることになってしまった。ローリアが嫌がるそぶりを見せないのが救いだな。
いつになく積極的なローリアですね。
せっかくメリーが再登場したのに1週間開けてしまった…




