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異世界魔法で曲芸士!  作者: 常世 輝
王都ユーラング
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ストリートパフォーマンス

 今日は昨日チェックしておいた広場に来ている。ローリアと2人だ。アーレはエルフの知り合いに会いに行っている。


「じゃあローリア、打ち合わせ通りにね」

「わかりました」

 俺はそういって少し距離を空ける。この場には小さな籠を置いてある。


「【ファイアー・ボール】!」

 ローリアが掌サイズの火の玉を出現させる。


 往来の人はその様子に気づいて様々な反応をした。興味津々に見入る者もいれば、腰を抜かして逃げ出そうとする者もいる。珍しいから仕方ないか。


 でも、叫ぶのは止めてほしい。


 ローリアは火の玉を彼女の身体を中心にグルグルと回し始めた。


 その様子に往来の人は見世物であることに気が付いたようだ。小さな籠に銭貨や銅貨を入れる見物人が出てきた。ローリアはお金を入れてくれた見物人に軽く会釈した。


 そう、俺たちがここに来たのは、ストリートパフォーマンスとして曲芸をしに来たのだ。


 火の玉に合わせてローリアもくるくると回る。みんな可愛い少女がするパフォーマンスに皆釘付けだ。

 ちなみに、今日のローリアはスカートではない。くるくる回るのに、ローリアの持っているスカートやワンピースは論外だ。今日のために買ってきた。


 ローリアが火の玉に勢いをつけて飛ばした。


 その光景に周りの血の気が引く。その先には1人の青年が立っていたからだ。まあ、俺なんだけどね。


 俺は飛んできた火の玉をスキル【魔力応用】で支配する。そして、俺も同様に身体を中心に回した。


 血の気が引いたり、悲鳴を上げていた見物人が唖然とした後に、大きく拍手して指笛を鳴らした。小さな籠に入れられるお金が増えた。俺も会釈して答える。


 俺は右手をタクトのように振って火の玉を操りながら、左手でもう1つ掌サイズの火の玉を作る。出来上がった火の玉を同じようにグルグル回した。今は2つの火の玉が回っている状態だ。


 足を止める見物人が増えて、上がる歓声も大きくなってきた。


 火の玉の1つをローリアに投げる。ローリアは掌を向けてスキル【魔力応用】で火の玉を支配した。そして、またグルグルと回す。


 火の玉を操る2人に見物人は熱狂する。周りにいる大道芸人がかわいそうなくらいだ。


「いくよ。ローリア」

「はい。せーの!」

 短く会話してお互いに火の玉を飛ばす。


 火の玉は弧を描いて交換された。そのまま2つの火の玉でキャッチボールをする。


 最後に火の玉を打ち上げて爆発させた。天高くでの小さな爆発なので問題ないだろう。


 空を見上げて爆発を見ている見物人を横目にローリアに近づいて肩に手を置く。


 2人そろって見物人に一礼する。肩に手を置いたのは礼の合図だ。


 空を見上げていた見物人が俺たちの一礼に気が付いて。割れんばかりの拍手を送ってきた。さらに、お金が投げ込まれる。


 見物人がいて届かないから投げるのはいいが、こちらに投げずに小籠に投げてほしい。ローリアに当たるでしょうが。


 --------------------


「お疲れ様。ローリア」

「お疲れ様です。ご主人様」

 俺はローリアに飲み物手渡した。


 見物人の騒ぎが収まった後にベンチに移動して休憩をしている。俺はともかくローリアは1回曲芸をすると結構疲れるようで、こうして休憩する必要がある。


「どうだった?」

「楽しかったです」

 俺の質問にローリアが答える。少し汗ばんでいるようで、気持ちも高揚しているようだ。


「ご主人様と一緒に曲芸をしていると楽しくって、私が奴隷であることだって分からなくなるくらいなんです。あ、ご主人様の奴隷が嫌なわけじゃないんです。本当です!」

 俺がローリアを奴隷にしていることを気にして苦笑いすると、ローリアが弁解してきた。良かった、嫌われていたのかと思った。


「ご主人様のお役にも立てていますし、今まで何もできなかった私がちゃんと出来ていると思うと嬉しいんです」

 ローリアはそういってこちらを向いて小さく微笑んだ。


 何だ、この健気な良い子は。超可愛いな。


 とりあえず、俺はローリアの頭を撫でた。可愛い子は愛でるべきだ。

「えへへ」

 ローリアは可愛く笑う。もっと表情が柔らかくなったら100点だな。


「さてと、せっかくだし、何か欲しいものはある?」

 俺は銭貨や銅貨でいっぱいの籠を持ち上げた。銀貨も1枚混じっていて少し嬉しい。


 本当はもっと投げられたのだが、沢山人がいると拾う人もいるから減ってしまった。


 まあこれはそういうものだ。あまり気にしていない。


「ご主人様は奴隷に物を与えすぎです。普通は奴隷で稼ぐものです」

 何故か注意を貰った。何かまずかっただろうか?


「そうかな?ローリアの服は今日の曲芸で使うから必要だし、飲み物も体調管理に飲まないといけないし、全部必要なものだと思うんだけど」

「もういいです。ご主人様は優しいご主人様のままでいてください」

 ローリアが呆れているのが口調で分かる。何故だ。


 でも、ローリアがそういうことが言えるようになったのは嬉しいな。


「で、何か欲しいものはある?」

 俺は再びローリアに尋ねる。


 ローリアはじーっと一点を見つめて考えている。すぐには思い浮かばないのか。無欲な子だ。俺も思いつかないからローリアに聞いたんだけどね。


 ローリアは妙案を思いついたように手を叩いた。

「今度、王都で演劇が開かれるそうです。その演劇を見に行きませんか?」

 ローリアが提案してくれた。


 アーレもそうだったけど、ローリアもこの王都について詳しいな。調べたのだろうか?


 ローリアだけが楽しいのではなく、俺も楽しめるように考えて提案してくるのが嬉しい。


「うん、じゃあその演劇を見に行こうか。それまでこのお金はしまっておくか」

 俺はお金入りの小籠を空間魔法に仕舞った。道具袋で誤魔化したから、周りの人には気づかれていないだろう。


「ご主人様はやっぱりすごいですね」

 ローリアは俺が空間魔法を使ったのが分かったようだ。


 ローリアにはスキル【魔力支配】があるからわかったのだろう。


「また教えるね」

 俺は口に人差し指を当てて答える。秘密のポーズだ。


 王都では火魔法を使って曲芸をするつもりだ。だから、俺が無魔法を使えることは内緒だ。


「はい」

 ローリアも俺の真似をして口に人差し指を当てた。うん、かわいい。


 もう1度ローリアを撫でた。和やかな日だった。



久しぶりに曲芸をしましたね。

上手く描写できてればいいんですが



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