3人で休日を
本作は木曜日更新ですが、今週は火曜日にも投稿しています。
まだ見ていない方は、ぜひ、そちらも読んでいただけると話が繋がります。
「今日はどうするの?」
昨日俺はローリアとアーレに任せてしまったので、今日の予定を把握していない。
「今日は朝から夕食まで考えてあります。ローリアさんも私たちと同じ食事をしてもらいますので、少々お金がかかってしまうのですが、よろしいでしょうか?」
アーレがまず確認を取ってくる。
「いいよ」
ローリアが俺たちを同じ食事をとるのは当たり前だし、たまに休日にするなら少し奮発してもいいだろう。
お金が無くなったら、また冒険者としてお金を稼げばいい。
「ありがとうございます。ご主人様!」
許可が出てローリアは少しうれしそうだ。
「では、まず塔に行きましょう。王都を一望できます」
アーレがそういって歩き出した。俺はローリアと手を繋いでついて行った。
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この王都で1番高いのは城だが、それに次いで高いのがこの塔だ。王都の全貌が見渡せて、王都の外の様子も見ることが出来る。
「おお!眺めがいいな!」
俺は王都を見渡しながら感想を漏らす。高い所からの景色は心を昂らせる気がする。風が気持ち良くて、心地良い場所だ。
「この塔は魔物や盗賊の侵入を事前に防ぐための塔でもあるようです」
アーレが説明してくれる。
王都の外まで見える塔なら、外の監視もできる。
「時間を知らせる鐘もここで鳴らされているんですよ」
ローリアが補足を入れる。
鳴っているとは思っていたけど、ここで鳴っていたのか。
「あっちに見えるのは何なんだ?」
俺は塔から見える大きな施設を指さして尋ねた。
「あれは闘技場です。4年に1度大会が開かれます。普段はお金を払えば訓練場として使用できます。訓練をするならばギルドか闘技場です。」
アーレが答えてくれた。
4年に1度って前世でもあったな。俺は流石に大会には出てはいけないだろう。勇者が言うには、俺はチートらしいからな。大会を荒らすだけだ。
「いかがですか?ご主人様」
「ああ、そうか」
「?」
俺はローリアの問いかけで、ローリアを見て反省した。
ローリアは身長が低いから景色が見えづらい。こんなことに気が付かないなんて、主人失格だな。
ローリアは俺にじっと見られて首を傾げている。
「ローリア、ちょっとごめんね?」
「え?きゃ!」
俺は一声かけてからローリアを持ち上げた。景色が見えるように俺の右腕に座らせる体制だ。
ローリアが小さく悲鳴を漏らした。驚かせてしまったかな?
「どう?見える?」
「あい!ご主人様!」
やっぱり驚かせたようで、返事が少しおかしい。
少し見た後に、ローリアを下ろした。
「驚かせてごめんね」
「いいえ。ありがとうございます」
若干紅潮しているし、ローリアは景色に満足しているようだから、許してもらえたかな。
「次に行きましょうか」
アーレがそういったので、またアーレについていくことにした。
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着いた場所は商店街だ。いろいろな屋台が出ていて、様々な食べ物が売られている。漂ってくる匂いが食欲を誘う。
「昼食はここで食べ歩きにします。ここには様々な食べ物が集まっていますので、楽しめると思います」
アーレが説明してくれる。様々な地方の料理があるようで、米などの和食の食材も売っているようだ。
「アーレは何が食べたい?奢るよ?」
俺はアーレに提案する。いろいろ説明してくれるお礼だ。
ちなみに、うちのパーティーでは俺・ローリアとアーレの支払いはいつも別々だ。
「では、あちらの焼き鳥を」
アーレが指さす方向には美味しそうな焼き鳥が焼けている。
もっと高いものでもいいんだけどな。
「焼き鳥を3つお願いします」
「はいよ!」
俺は人数分注文した。
「はい、アーレ」
「ありがとうございます」
1本アーレに手渡す。
「ローリアも」
「ありがとうございます」
俺がしゃがんで差し出すと、ローリアはお礼を言って受け取らずに、そのまま食べた。
なんで俺があーんしたみたいになっているのだろう?
「ローリア?受け取って全部食べていいんだよ?」
「あ、すみません!」
俺がそういうと、ローリアは直ぐに離れた。
「すみません!今まで全部貰ったことなんてありませんでしたので!」
なかなか勢いのある謝罪をされてしまった。
「ローリア、気にしなくていいから。ほら、食べて?」
そういって俺は焼き鳥を手渡した。
「美味しい?」
「はい……」
質問すると、元気のない肯定が返ってきた。
美味しそうに食べてはいるが、元気がない。
「気にしない。気にしない」
そういってローリアの頭を撫でた。小さい子にはついやってしまう。
「はい」
大丈夫そうだ。
こんな感じで食べ歩きをしていると、柄の悪い人に絡まれた。
「おいお前エルフだろ?一晩相手してくれよ」
アーレが絡まれたのだ。
「あなたのような下賤な人とは話したくもありません」
「あん?エルフの分際で人族になんだその口は!」
アーレは辛辣に返すが、その態度に相手は激怒したようだ。
仕方ない。
「すみません。何か用ですか?」
「あ?」
俺が割って入る。
「なんだてめぇ?エルフの肩持つのか?」
こいつは典型的な人族至高主義者か。俺の嫌いなタイプだ。
「ええ。下賤な男に絡まれているようなので」
「てめぇ」
俺の言葉に男は額に青筋を浮かべる。
男が俺に殴りかかってくる。俺殴りかかられてばかりだな。
「えい!」
パチンッという音が響く。俺のフィンガースナップの音だ.
フィンガースナップと同時に魔法で花を出現させる。
そしてその花を男の顔に押し付ける。男は面を食らった様子でかたまり、ぱたりとたおれって鼾をかき始めた。
はたから見たら、男は花を押し付けられて眠ったように見えるはずだ。実際は花を出現させて、別で魔法をかけて眠らせただけだ。
少しキザだが,パフォーマンスに使えると思って練習していたフィンガースナップからの花を出す動作が役に立った。
「こんなところで寝たら、誰かにお金取られちゃいますよ?」
少し大きめの声で俺は言った。こいつが誰かに何されても自業自得だろう。
それが俺の声を聴いて目を輝かせた物取りがいたとしても。
「アーレ。大丈夫?」
「すみません、ユイトさん」
片付いたのでアーレに声をかける。アーレの顔が服で隠れていても、気にしているのが分かる。
「気にするな。何かあったら頼れって言っただろ?」
俺はそういってアーレの肩を叩いた。
「ありがとうございます」
アーレの目じりが下がった。隠れていて分かり辛いけど、笑ったのかもしれない。
その後、いくつか観光名所をまわった。
途中で曲芸を披露するのにちょうど良さそうな広場があったので、チェックしておいた。
「ほとんど説明してもらったけど、楽しかった?」
俺は2人に尋ねる。
今日はほとんど2人に説明してもらってしまった。今日は2人が行きたいところに行くつもりだったのだが、楽しめたのだろうか?
「ご主人様は楽しかったですか?」
俺の質問にローリアが質問で返してきた。
「楽しかったよ。2人のお陰だ」
俺は心底そう思う。
塔や食べ歩きはもちろん、他の観光名所も楽しかった。2人が説明してくれたからより一層楽しめたのだろう。
「なら、私たちも楽しかったです。ね?アーレさん」
「はい」
そういって2人は顔を見合わせた。笑っているっぽい?
俺にはよく分からなくて首を傾げた。
まあ、楽しんだみたいだし、いいか。
絡んできた男を眠らせたところは、本来ただ眠らせるだけにするつもりでした。
でも、せっかくなので、曲芸士ぽい感じで撃退してみました。
私は好きですが、少しキザッたるいですね(笑).




