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異世界魔法で曲芸士!  作者: 常世 輝
王都ユーラング
51/87

勇者の家族に形見を

前回の更新で月曜日に次話を挙げるかも、みたいなことを言いましたが、

疲れてしまって火曜日になってしまいました。


「今日は勇者ホーヤの家族に形見を渡しに行くよ」

ローリアとアーレに俺の今日の行動の説明をした。


俺はホーヤの息子のエドワードに形見を渡すことを約束した。まずは最優先で約束を果たそう。


「分かりました」

「はい」

2人とも異論はないようだ。


「今日は、2人とも休んでいるといい。明日は2人の行きたいとこにいこう」

俺の用事ばかりに付き合わせては申し訳ない。

「いいんですか?」

ローリアが尋ねてくる。


「うん。最近訓練ばかりしてたしね。休息や息抜きも必要だよ」

ずっと働いていたら疲れてしまう。ガス抜きも必要だ。


「だから2人とも相談して行きたいところ決めておいてね」

そういって、エドワードに形見を渡しに向かった。


俺は明日の予定を2人に任せることにした。俺が介入したら、ローリアは俺の意見に賛同してしまう。行きたいところを選べなくなるかもしれないから、俺は居ないほうがいいだろう。


―--------------------


俺たちは勇者の家、つまり法弥の家に来た。法弥の家は貴族区にあって、大きな洋館のような豪華な屋敷だった。流石は多くの武勲を立てた勇者といったところか。


「どちらさまですか?」

メイド服を着た女性に声をかけられた。使用人の方だろうか?


「勇者ホーヤ様の古い知人でユイトと申します。ご子息のエドワード様に御用があって参りました」

俺は出来るだけ丁寧に要件を述べた。俺は敬語にあまり慣れていないが、スキル【異世界言語】で敬っているニュアンスが伝わるだろう。


「エドワード様はホーヤ様の死に大変心を痛めております。ですので、誰にもお会いできません。申し訳ありませんが、今日はお引き取りください」

メイドはそういって頭を下げた。


父親の死に衝撃を受けない子供はいないだろう。メイドは淡々と話すから、相当対応に慣れているようだ。他にも面会を求める者が多いのだろう。


「では、こちらをエドワード様にこちらをお渡しください」

俺は【疾風のネックレス】を取り出して、差し出した。


「これは……少々お待ちください」

そういって、メイドはネックレスをもって屋敷に走って行った。表情には出なかったが、かなり慌てて走っている。法弥のネックレスだということが分かったのだろう。



しばらく待つと、メイドが帰って来て一礼した。

「エドワード様とメイリーン様がお会いになるそうです。ご案内します」

どうやら、面会を許されたようだ。メイリーンとは法弥の妻の名前だ。


メイドについていき、屋敷に入った。内装も外見と同じく豪華で、勇者の偉大さを感じる。


応接間に通されて椅子に座って少し待つと、法弥に似た少年と金髪の大人しそうな女性が入ってきた。この2人がエドワードとメイリーンだろう。


「はじめまして、ホーヤ様の古い知り合いのユイトと申します」

まず、俺は椅子から立ち上がって自己紹介をする。こちらの世界の礼儀作法は知らないが、出来るだけ礼節を尽くそう。


「ホーヤの妻のメイリーン・ヤマトです。こちらは息子のエドワード・ヤマトです。」

メイリーンさんが紹介してくれた。とても落ち着きのある人だな。


再び椅子に座って対面する。エドワードの表情が優れない。かなり落ち込んでいる様子だ。


「いきなりで申し訳ないのですが、何故あなたがホーヤのネックレスを?」

前置きをしてからアイリーンさんが質問してきた。少し慌てた様子だ。警戒もされている。


法弥が死んでからすでに半月ぐらい経っている。今更、しかも知らない人が夫の形見を持ってきたら警戒もするだろう。


「私には【霊視】というスキルがあります。そのスキルによって、シューウの森でホーヤ様の霊と会話しました。そして、そのネックレスを託されました」

俺は簡潔に話した。ネックレスはエドワードが持っている。


俺が勇者と同郷であることや剣を教わったことは話す気はない。あまり力を吹聴するのは厄介ごとの始まりだ。迂闊には話さない。


「その荒唐無稽な話を信じろと?」

エドワードが俺に疑いの目を向けてくる。


普通は幽霊なんて見えない。俺が特殊なだけで、幽霊と話したと言っても笑われるだけだ。


「そのネックレスでは証拠になりませんか?そのネックレスはメイリーン様がホーヤ様にお守りとして渡したそうですね。ホーヤ様が引退するときにエドワード様に譲ることになっていたとか。」

俺はネックレスを指さす。俺がネックレスを持っていることが何よりの証拠だろう。


「まさか……本当に?」

メイリーンさんが口を覆った。その様子から驚愕していることわかる。


「お父様……」

エドワードはネックレスを握りしめて泣き出した。


「ごめん、これがホーヤ様からの伝言です。家族を残して逝くことに大変心を痛めている様子でした」

法弥からの伝言をいう。言葉足らずだと思ってその時の様子も付け加えた。


確かに伝えたぞ。法弥。


「あなた……」

そういってメイリーンさんも泣き出した。あなたというのは夫の法弥を意味している。


「要件は以上です。帰ります」

俺は簡潔にいった。少し言い方がきついが、家族の死を悲しんでいるときに俺がいては邪魔だろう。


「すみません。取り乱してしまって。何かお礼を」

「いいえ、いりません。当然のことをしただけですから」

俺はそれだけ言い残してメイドに案内されて帰った。


俺にとって法弥は友達だ。友達の遺品を届けてお礼を求めるのは気が引ける。

しかも、あの家族の収入源の大黒柱が死んだのだ。これからが大変だろう。俺にお礼をするぐらいなら、生活資金にあててほしい。


宿屋に戻って部屋に入るとローリアとアーレが地図を広げて議論していた。地図にはいくつか印がついている。明日の計画を立てているのだろう。


この2人は真面目で、どこか似ているな。


「ただいま」

俺は軽く声をかける。

「おかえりなさい。ご主人様」

「おかえりなさいませ」

ローリアとアーレも挨拶を返してくれる。


「明日の計画は決まった?」

明日は2人に付き合うつもりが、俺も一緒に行くから気になる。


「はい、計画は立てました」

「完璧です」

アーレが簡潔に答えて、ローリアは少し自信ありそうだ。

俺は内容を知りたかったんだけど、明日の楽しみにしよう。


その後、いつも通り夕食を食べて、魔法の練習をして、魔法で綺麗にして就寝した。


2人がデートのつもりでいることをユイトは知らない。




次回はデート回になりそうですね。

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