幕間4 勇者との少し残念な話
下ネタを含みます。苦手な方は注意です。
主人公と勇者ホーヤの会話です。ホーヤは成仏前の話です。
スキル【勇者剣技】の練習をしにシューウの森に来ている。
今は、法弥に実践形式で教えてもらい、休憩をしているところだ。
「なぁあれはお前のこれか?」
法弥が俺に小指だけ跳ねさせて手を向けてくる。彼女を表しているのだろうけど、少し表現が古臭い。
法弥の視線の先にはローリアが魔法の練習をしている。球体の炎を操って身体の周りを飛ばしている。俺が練習するように頼んだ魔法だ。スキル【魔力応用】の練習になる。
「いや、ローリアは俺の奴隷だけど」
「おー愛玩奴隷か?お盛んだね」
法弥が馬鹿げたことを言ってくる。ローリアが愛玩奴隷なわけがないだろう。
「違うから。弟子みたいなものだから!」
「あっはっはっは!」
俺は強めに弁解するが法弥は笑って受け流される。
「じゃあ、あっちか?」
今度はアーレを小指で指さして法弥が言った。
アーレも身体の魔法陣を発動させて魔法の練習をしている。身体から溢れる赤い粒子が綺麗だ
「いや、アーレは旅の仲間だ」
そもそもアーレは俺のことを恋愛対象と思っていないだろう。
「あいつエルフだろ?綺麗なお姉さんが近くにいるのに、お前は奥手なのか?」
また馬鹿げたことを言ってくる。その表情は本当に不思議そうだから、責めるに責められない
俺は魔法陣を刻んだ後にまじまじと見てしまったアーレの身体を思い出して、首を振って消す。
「いや、まぁ色々複雑でな」
「なんだそりゃ?」
俺が誤魔化すと、不思議そうなまま笑われた。
アーレは身体に魔法陣を刻んでいることを気にしているから、手を出そうものなら絶対嫌われるだろうし、嫌がるようなことをしたくない。
そもそも、そういうことは相思相愛のカップルじゃないと駄目だと思う。そう思うのは前世の俺が生涯童貞だったからかな。
「じゃあ、お前溢れ出るリビドーをどうしてるんだよ?」
リビドーって、オブラートに包んでいるつもりかもしれないけど、だいぶストレートだな。
「魔法で抑えてる」
基本的に魔法でなんでもできる。よく言われる食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求についても同じだ。
食欲は飢餓の状態じゃなければ誤魔化せるし、睡眠欲も気を失うまで誤魔化せるだろう。性欲も言わずもがな。
「まじか。お前の魔法超便利だな」
褒められているが、法弥は爆笑だ。
「ほっとけ」
笑いながら褒められてもありがたくないので、ぞんざいに返す。
俺はその例の魔法をローリアと一緒に寝る時からかけ続けている。流石に、見た目が幼くても、性の分別のある女性と同衾するのは俺にはハードルが高い。
ローリアだって何とは言わないが、当たれば柔らかいし、寝ているときに抱き着かれると温もりを感じるし、寝汗をかけば匂いもする。
俺は良いご主人様像を守るために必死なのだ。
「そういうお前はどうしてたんだよ?」
俺は意趣返しと言わんばかりに返す。
「俺は妻がいるからな」
法弥は得意げだ。彼の顔からどや顔という言葉が生まれたとさえ思える顔だ。
「そういえば、1児の父だったな」
【アナライズ】で見た時に分かっていた。しまった。意趣返しがスマッシュで返された。
「だから妻に、な?」
そういってニカッと笑った。露骨な下ネタだ。殴りたい。
「結婚ねー」
そういって俺は話を逸らした。
「お前だったら何人か囲えるんじゃないか?俺は妻が嫉妬するから無理だけど」
法弥がとんでもないことを言った。
俺は前世でラノベを愛読していたから一夫多妻制にある程度理解がある。異世界ファンタジーのラノベでは、そういうのは多かった。テンプレだ。しかし、日本人としては倫理的に抵抗がある。絶対に妻を悲しませると思う。
「いや、だめだろ」
「はー硬いねーまあ、気が向いたら貴族になってから囲うんだな。じゃないと世間体がやばい」
確かに、同じ立場の人間が何人も女を囲っていたら嫉妬するだろう。リア充爆発しろってやつだ。
「はいはい」
また、ぞんざいに言って話を打ち切る。
「そうだ!だったら王都に娼館があるぞ!」
法弥が手を叩いて妙案を思いついたとばかりに叫んだ。アーレとローリアには聞こえないからといって、大きな声で娼館なんて言わないでほしい。
「いや、俺は曲芸士だからそっちにお金を当てたい」
曲芸士はあまり稼ぎの良い仕事ではないだろう。スポンサーとかパトロンがいないなら無駄使いをするべきではない。
そもそも、娼館で相手をしてもらった人に曲芸も見られて、「あの人、私と寝たことあるんですよ」なんて言われたら死んでしまいたくなる。
たぶん、彼女たちもプロだろうから吹聴することはないだろうけど。
「あー夢のためなら仕方ないか」
俺の理由に納得してくれた。ちなみに、俺の夢が曲芸士として大成することというのは話してある。
「ならどうするんだ?女2人と旅なんて辛いだろ?見てみろよ」
そういって法弥が俺の視線をローリアに向けさせる。
「小さな体で一生懸命にご主人様って慕う健気な子だ。胸も小さいけどないわけじゃない。茶色の髪も綺麗じゃないか。お前が綺麗にしてんだろ?お前がギュッとしてキスしたら可愛い反応をするはずだぞ?ほら、エルフの子も見てみろよ」
ローリアを一通り褒めて俺を煽った後に、法弥はアーレに俺の視線を向けさせる。
「エルフは綺麗な顔をしているし、あの子は身長も高くてスレンダーだ。きっと麗しいだろう。たまに見える綺麗な白っぽい緑の髪もお前が綺麗にしているんだろ?エルフは貞操観念がしっかりしてるから初物だぞ」
今度はアーレを魅惑的に表現して俺に語る。
「知った風に馬鹿言うな」
俺は冷たく返す。声色が冷たくなったのは無意識だ。
ローリアは普段は無表情だが、笑うととてもかわいい。
アーレも裸を見られて顔を真っ赤にする初心な反応が可愛かった。
知った口をきかないでほしい。
ちがうちがう、そうじゃない。
「あー!」
俺は自分に魔法をかけて抑える。この魔法に名前を付けていない。つけてしまったら何か悪いことをしてる気分になる。嫌らしいことを考えてしまった罪悪感に苛まれると思う。
「でもな、男なら味わてみるべきだぜ?愛を感じることだ」
俺の魔法を使ったのを見て、法弥はまた得意げな顔だ。殴りたい。けど、幽霊だから殴れない。今度どさくさに紛れて霊剣で斬ってしまおうか。
「なんか怖い顔してるぞ。結糸」
法弥が顔を引きつらせている。おっと、いけない、いけない
「じゃあ、特訓の続きをしようか。今度は少しステータスを利用して攻めようかな?霊剣で斬ってしまうかも」
俺は霊剣を強調して言う。
「待て!いや、待ってください!お前まだスキル覚えてないから!斬られたらたぶん俺消えるから!」
「はじめようか?戦いを」
「うわあああああ!!」
こうして再び訓練を開始した。自制心を使って何とか斬らずに済んだ。
せっかくラノベっぽく書いてるので下ネタもあってもいいよねってことで,下ネタ回でした。
主人公はハーレムを作る気ない感じの発言をしていますが、この小説はハーレムものです。
月曜日に次話を投稿するかもしれません。




