勇者に別れを
お陰様で総合評価が100ptを超えました。
有名な作者と比べたら少ないですが、最初の方は全然増えない状態だったので、嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
「やめ!」
法弥がいつものように休憩の合図言った。
「ふう」
俺は息をついて休憩する。
訓練を始めてから15日が経った。毎日来ては特訓して、俺には訓練がかなり身になっている実感がある。
「そういえば、結糸はスキル【勇者剣技】何レベになった?」
法弥が首を傾げて質問してくる。
「【アナライズ】」
そういえば、俺も確認していなかったなと思って【アナライズ】を発動する。
名前:世良 結糸
種族:人族
年齢:15
レベル:96
状態:良好
ステータス
MP:SSS
魔力:SSS
攻撃力:SSS
守備力:SSS
魔法攻撃力:SSS
魔法防御力:SSS
敏捷力:SSS
ラック:63%
〈スキル〉
―魔法―
全属性魔法(10)、
―戦闘―
体術(9)、勇者剣技(10)、剣術(8)槍術(4)、斧術(2)、鞭術(3)、棒術(5)、杖術(3)、盾術(5)、鎌術(1)、弓術(5)、棍術(5)
―技術―
魔力応用(10)、魔法陣(8)、鍛冶(6)、装飾(7)、裁縫(6)、演奏(7)、歌唱(7)、算術(7)、錬金術(6)、料理(8)、家事(8)、薬学(6)、舞踏(8)、鑑定(8)、手加減(7)、夜目(9)、回避(8)、御者(7)、歌唱(6)、絵画(6)、演劇(6)、自己治癒(8)、剣舞(9)
―耐性―
毒耐性、魅了耐性、麻痺耐性、恐怖耐性、全属性耐性、
―その他―
異世界知識(中)、言語理解(上)、霊視、精霊視、魔力視、
〈適正〉
全魔法、全武器、魔法、演奏、片手剣、
え?
俺の時が止まった気がする。絶句してしまったのだ。
ステータスが大変なことになっている。高すぎる
レベルが96というのも高すぎる。
スキルのレベルもいくつか上がっているし、スキル【剣舞】がレベル9で追加されている。
スキル【勇者剣技】もすでに10レベルだ。
称号の街を救った者っていうのは、ハーニカの街の事か。
「おーい。おーい。結糸?結糸さーん」
「あ、ごめん」
呼び掛けてくれた法弥に礼いう。
「どうした?」
「実は……」
俺は全て話した。
「やっぱりお前のほうがチートじゃねえか!」
話を聞いた法弥が絶叫を上げた。
「お前がいたらこの世界の勇者いらねえよ!」
そしてテンションが高い。メロさんを思わせる反応だ。
「いや、俺もこうなってるとは思わなかった」
「なんでお前のほうが唖然としてんだよ!」
俺が惚けていると法弥から突っ込みが入った。
どうせ大抵の相手に勝てるステータスだと思っていたし、特に確認する必要がなかったから全然気づかなかった。
「あーあれか。もうお前には教えることはないってやつか」
そういって法弥は項垂れた。もうすでにスキル【勇者剣技】はレベル10だ。教わる必要はないだろう。
「なんかすまない」
「あーもういい。気にすんな」
そういって法弥は気持ちを持ち直した。切り替えの早いやつだ。
「じゃあ、成仏するか。もう教えたし」
法弥はさっぱりとした様子でいった。
「何か未練はないか?出来ることなら頑張るぞ?」
何か未練があるなら俺が晴らしてやろう。法弥のためなら努力するくらい仲良くなった。
「あーあるけどな。妻と息子とは話せないしな」
そういう法弥は王都の方向を向いて遠い目をした。その表情には憂いを感じる。
法弥は地縛霊みたいな存在になっており、どうしても森を離れられない。もし可能ならば、俺は王都で法弥を発見していただろう。
「そうだ。ついて来てくれ」
そういって法弥はふわふわと移動した。すっかり幽霊に慣れているみたいで、足を動かしていない。クルスさんと同じだな。
ついて行って森を進むと、拓けた場所に出た。
地面には隕石でも落ちたかのような窪みがいくつもあって、周囲の木々もなぎ倒されていて、明らかにここら一帯だけ異常だ
「ここは?」
俺は連れてきた張本人の法弥に尋ねる。
「悪魔との死闘の場所、俺の死んだところ」
そういって、法弥は茂みに入っていった。
「あった!ゆいとーこっちきてくれー!」
茂みをキョロキョロと探した後に、俺を呼んだ。俺は言われるまま近づいた。
「これ。これを俺の息子のエドワードに届けてくれ」
そういって法弥は落ちている1つのネックレスを指さした。法弥の息子の名前がエドワードだというのは初めて知った。
「これは?」
俺はネックレスを拾って法弥に尋ねた。
「【疾風のネックレス】だ。まあ、妻にお守り代わりに貰った。俺が引退するときにエドワードにあげることになってたんだ。俺の形見だな」
そういって不適に笑った。
「わかった。必ず届ける」
俺にしかできないだろう。今まで俺と勇者の面識がなかったので、俺があらぬ疑いをかけられる気がするが、それくらいなら引き受けてやろう。
「ああ。頼む」
そういって法弥は頭を下げた。今までにない神妙な気配だ。
俺も前世で死ぬときは悲しかった。俺は家族に看取ってもらえたが、法弥はそうはいかない。
「ああ。まかせろ」
俺はそう強く答えた。
「じゃあ、成仏させてくれ」
法弥は顔を上げるとそういって笑った。
「いいのか?」
成仏させると言ったのは俺だが、ここまであっさり言われると聞き返してしまう。
「早くしてくれ。決心が鈍る」
法弥はそういって腕を少し広げた。魔法を受け入る態勢だろう。
「わかった」
そう答えて、俺は手を組んで祈りの体制に入った。成仏させるための魔法に名前を付けていない。クルスさんの時と同じように、魂が癒されるように祈った。
法弥の身体から白い光が溢れる。魔法が発動している証拠だ。
「おーこんな感じなんだな」
法弥は身体を見下ろして感想を漏らした。
「あー死ぬんだな。いやもう死んでるのか」
法弥はボロボロと涙を零した。
「ありがとうな。結糸」
こちらに笑顔を向ける。涙を隠そうともせず、拭う様子もない。男泣きだ。
「最期にお前に会えてよかったよ。あとさ」
そういって歯を見せて笑った。
「家族にごめんって伝えてくれ」
そして、法弥は目を閉じた。もう思い残すことはないのだろう。
法弥の身体が足から光に変わって天に昇っていく。
「まかせろよ」
俺はその光に、法弥が背を向けて去っていく様子を幻視して、その背中に声をかけた。
法弥がこちらを向かずに、手だけ上げて返事をしたような気がした。
「……ローリア、アーレ、王都に戻ろうか」
俺は感傷に浸ってから、2人に声をかけて王都に戻ることにした。
主人公のステータスを爆上げしました。驚かせようと思ってこの回までステータスを表示しませんでした。
詳しくステータスを覚える必要はありません。めちゃめちゃ強いことが分かれば大丈夫です(笑)。
これだけ強ければ旅を満喫できますね。




