勇者ホーヤとの出会い
うっかり木曜日更新忘れていました。すみません。
「2人とも大丈夫?」
悪魔が逃げた後、2人に声をかける。
2人はガタガタと震えており、相当の恐怖を感じたようだ。
「ご主人様……」
ガタガタと身体を震わしながら、ローリアが俺を見上げる。腰が抜けているのか立ち上がる様子もない。
俺はローリアを抱きしめた。そして頭を撫でる。
「大丈夫。もう恐くないから」
ローリアが少しでも安らいでくれるように囁いた。俺の身体にローリアの震えが伝わる。
「大丈夫。大丈夫だから」
何度もそう囁いて頭を撫でた。
徐々にローリアの震えが収まってきたのがわかる。
「もう大丈夫ですご主人様。後はアーレさんを」
そういってローリアは離れた。もう震えている様子はないが、まだ心配だ。
しかし、アーレも身体を抱えるようにして座って震えたままだ。このままにしておくわけにはいかない。
「アーレ!アーレ!」
アーレの肩を掴んで小さく揺する。
アーレの目は焦点が合っていないように見えて、とても声が聞こえているように見えない。
「ご主人様。私の時みたいに抱きしめてあげてください」
「え?」
アーレを抱きしめていいのだろうか?
ローリアは俺の奴隷だし、泣いた時は何度も抱きしめている。
しかし、アーレは仲間だが簡単に抱きしめたりしていいものか迷ってしまう。
「ご主人様!」
ローリアに急かさせる。アーレも震えたままだ。
どうにでもなれ!
俺はアーレを抱きしめた。
「アーレ!アーレ!」
抱きしめながら何度も名前を呼ぶ。まずはアーレに正気に戻ってもらわないといけない。
ガタガタと震えが伝わってくる。
「ユイトさん……」
正気に戻ったのか、アーレは俺の名前を呼んだ。
「アーレ、大丈夫か?」
抱きしめたまま出来るだけ安心できるように優しく声をかけた。
「はい。もう大丈夫です」
そういってアーレは俺から離れた。やっぱり迷惑だったかな。
アーレは立ち上がろうとして、体勢を崩した。
俺はそれを受け止めて、今度は立った状態で抱きしめる形になる。
「あ、ごめん」
「待ってください」
そういって俺はアーレの肩を掴んで離そうとしたときに、アーレから声がかかった。
「腰が抜けて立てません。待ってください」
アーレから静止がかかる。
アーレの頭が俺の胸にあって、俺の肩に手が乗っている。
「座ろうか」
アーレに声をかけて抱きしめたままゆっくりと座った。腰が抜けたなら無理に立たせないほうがいいだろう。
未だにアーレは少し震えている。しばらく立てないだろう。
「大丈夫。大丈夫」
そういってローリアの時と同じように頭を撫でた。
「今度こそ大丈夫です」
しばらくしてアーレがそういったので解放した。アーレはしっかりと立つ。
「ローリアも大丈夫?」
アーレの介抱している間、ローリアには何もできなかった。
「大丈夫です」
ローリアも大丈夫のようだ。
「じゃあ、勇者の捜索の続きをしようか」
今回この森に来たのは勇者の霊を探すためだ。【マップ】で場所も分かっているので会ってから帰りたい。
「ローリア、手を繋ごう」
アーレの介抱している間に、何もできなかったせめてもの罪滅ぼしだ。
俺たちは勇者の霊のいる方向に歩き始めた。
「ご主人様は大丈夫ですか?」
手を繋いでいるローリアが俺を見上げて聞いてきた。
「大丈夫だよ」
俺は不思議と平気だ。たぶんスキル【恐怖耐性】があるからだろう。それか、無駄にステータスが高いから余裕が生まれているのかもしれない。
「ご主人様は凄いですね。私はあの化け物を見たら身体が震えてしまって」
どうやらローリアは心底恐怖したようだ。
「ご主人様。良ければ私に訓練を付けてくれませんか?」
神妙な面持ちでローリアが尋ねてきた。
ローリアがお願いすることは珍しい。あまり自分の欲を言わない。何もできなかったことを気にしているのかもしれない。
「気にすることはないよ。俺がローリアを守るから」
「ですが……」
ローリアは目を伏せている。相当責任を感じているようだ。
「わかった。でも、距離を空けて魔法で攻撃する魔法使いにしよう」
俺が前衛でローリアには後衛で援護してもらおう。
「はい!」
ローリアはやる気十分だ。
「アーレも手伝ってくれる?」
俺には魔法使いの動きなんて分からない。自分の戦闘スタイルだって模索中なのだ。元々魔法使いをしているアーレに手助けしてもらったほうがいいだろう。
「わかりました」
アーレも快く引き受けてくれた
「よろしくお願いします。アーレさん」
「はい。よろしくお願いします。ローリアさん」
ローリアが戦闘訓練をすることになった。
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「いた」
しばらく森を進むと男性の幽霊を発見した。スキル【霊視】で俺にはしっかりと見えている。森に入った時から発動していた。
美男でアジア系の顔は懐かしさを感じる。身体は細身だが、露出している腕にはしっかりと筋肉がついている。戦士っぽい格好で、腰には片手剣を挿している。
ちなみに、この世界の人はどちらかというとヨーロッパ系の顔だ。だから、勇者の顔には懐かしさを感じる。
「ホーヤさん」
俺は勇者に声をかけた。確か勇者の名前はホーヤだった。
「おー幽霊になって初めて気づいてもらえた!」
俺に気づいたホーヤさんが俺に人懐っこい笑顔を向けてきた。年齢は25くらいだろうか?
「ローリア、アーレ少し2人で話してきていいか?」
俺は勇者ではないが、同じ召喚された存在だ。ローリアとアーレには召喚されたことを話していないので、ホーヤと2人で話したい。
「わかりました」
ローリアは直ぐに答えた。相変わらず従順な子だ。
「はい。私には見えませんので構いません」
アーレも承諾してくれた。スキル【霊視】がないので見えないようだ。
「ホーヤさん。場所を移していいですか?」
「いいよ」
俺の提案にホーヤさんは快く答えてくれた。
ローリアとアーレを残して森の奥に移動する。周りに危険がないことは確認済みなので2人は大丈夫だ。
「では、改めまして、ユイトと申します。漢字で結ぶに紐とかの糸と書きます」
俺は自己紹介を始めた。
今更ですが,エルフは肌を触れさせないという設定ですが,これについてユイトは知りません。
知っていたらユイトはアーレを抱きしめたりしないでしょうね。




