ローリアに魔法を
昨日は投稿できずすみませんでした
曲芸を始める。
俺はくるりと回って場を仕切りなおした。イーニアさんに見せた時と同じだ。明かりも消している。周りは星と月の明かりだけだ。
「さあ、始めましょう。奇跡を起こしましょう。私たちを星たちが見ています。まるで手が届きそう」
俺は右手を空に掲げる。右手が淡く光りだす。今回もそれっぽく演説をいれる。
「では、見ていないで、降りてもらいましょう。私たちと星たちとが踊れば、きっと楽しい」
右手の明るさが増す。
「さあ、踊りましょう。朝になるまで踊りましょう。【スターダンス】!」
そう言って光る手を振った。
俺の右手から1センチほどの光の粒子が無数に迸る。迸った光は辺りに灯り、世界を淡く照らし出す。暗闇の中に灯る光は、まるで星に覆われたようで息を飲むほど美しい。
ローリアは小さな口を開けて目を見開かせている。
そして、光はゆっくりと動き出して俺やローリアを中心に回り始めた。1つ1つの動きは異なっていて、キラキラと瞬く
ローリアはその場で見回して頬を緩ませる。光が合わさって可愛らしさが増している。
光がいくつかに集まり始めて人の形を作り出した。そして、光の人は2人1組のペアを作り踊りだす。この場所が星々の舞踏会の会場に変わる。
そして光が解けて再び光の粒子になって、天に昇って行った。ローリアは名残惜しそうに星の輝く夜空を見ていた。
「ローリア。どうだったかな?」
俺は【ライト】を使って明かりを確保する。
ローリアは自分が夜空を見上げ続けていることに気づいて、こちらに向き直った。
「……凄かったです。キラキラで心が躍るようでした」
多くは語らないが、俺が冒険者であることを褒めた時とは明らかに声の抑揚が違った。自然な笑顔を浮かべていて、今まで見たことない可憐な笑顔だ。
俺はローリアに近づいてもう1つ魔法を使う。俺の右手からキラキラと光の粒子が溢れる。粒子は輝いてふわふわと漂う。
「この魔法はさっきの魔法を簡単にしたものだよ。そうだな……名前は【キラキラ】かな?」
ローリアは子供を装っているから呪文は簡単なほうがいいだろう。なくてもいいぐらいだ。
「【ウォーター・ボール】は一旦止めて、【キラキラ】を覚えてもらおうかな」
ローリアは光の粒子を見つめて決心したように頷いた。真剣な眼差しだ。曲芸がいい刺激になったようだ。
「よし!今日は帰って寝ようか。魔法は明日から練習しよう」
そう告げてローリアの手を引いて歩き出した。焦ることはない。明日からゆっくりと練習していけばいいだろう。
その日のローリアは昨日より怖がる様子はなくベッドに入ってくれた。ローリアは魔法を見て興奮しているようなので、ローリアと俺に【スリープ】をかけて眠りについた。
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「おはようございます。ご主人様」
「ああ。おはよう。ローリア」
ローリアが朝の挨拶をしてくれた。あまり話かけてこないローリアにはいい傾向だろう。
いつも通り魔法をかけて準備を済ませる。そして朝食を取ってから昨日と同じキリの森に向かった。
「じゃあ、練習を始めようか。まずはまた魔力を循環させることから始めよう」
俺は【アナライズ】でローリアの状態を見る。ついでに、俺もぐるぐると身体に魔力を循環させる。ローリアのスキル【魔力応用】で感じてもらおう。俺の練習にもなるしね。
ローリアが30分ほど練習すると、昨日よりも魔力の漏れが少なくなった。適正があるだけあって上達が早い。
「うん。良さそうだ。毎日練習していれば効果的だからね。疲れた日やいっぱい魔法を使った日はいいけど」
物事は毎日の積み重ねだ。練習することで上達するのだ。俺も増長せずに邁進して一緒に練習しよう。
「じゃあ、次は魔法を練習しよう。【キラキラ】」
光の粒子が溢れる。昨日見せたけどスキル【魔力応用】があるから何度も見せたほうが効果的だろう。ローリアはじっくりと魔法を見ている。【ウォーター・ボール】の時よりも真剣だ。
「手に魔力を集めて、魔力を光に変えるイメージかな?もう1回使うから感じてみて。……いくよ?【キラキラ】」
ローリアが理論派の人間だったら困る説明だが、どうにか感じようとしている。頑張り屋さんだ。
「…キラキラ」
ローリアは右手を突き出して精一杯に発動しようとした。しかし、魔法は発動せず嫌な静寂がこの場を満たす。
「キラキラ!」
ローリアがもう一度演唱する。さっきよりも力強い。この前は1回で諦めを感じたが、今回は諦めの色が見えない。
「【キラキラ】!」
ローリアの右手が淡く光って、指先からさらさらと光が漏れた。量こそ少ないが初めて魔法が発動した。
「………できた」
ローリアは発動したことが信じられないのか、自分の手をじっくりと見つめて呟いた。
「出来ました!ご主人様!」
ローリアが声を荒げ、飛び跳ねて喜びを表した。初めてローリアが素直に喜びを表した姿を見た。
そして、ローリアの瞳から大粒の涙があふれた。
「……え?…あれ…うっ…うっ…」
ローリアから嗚咽が漏れる。自分が泣いていることに少し驚いている様子だ。俺には分からないが、きっと今まで辛いことがあったに違いない。
俺はローリアの頭を撫でた。
「よくやったな。凄いぞ」
あまり気が利いたことが言えないのが腹立たしい。
「うっ…ごしゅ…じん……さま…ぐすっ…」
今は思いっきり泣かせてやろう。きっと嬉し涙だ。これほど良いものはない。
俺はローリアが泣き止むまで頭を撫で続けた。
泣いている途中でふわりとローリアが倒れてきた。【アナライズ】で調べると魔力枯渇だった。魔力が枯渇している上に、泣いて疲れたのだ。宿屋で休ませてあげよう。
ローリアを抱えて宿屋に向かった。2日連続で倒れたローリアを抱えて歩いたため、イーニアさんとニアに質問攻めされた。ニアは体調不良の心配をするだけなのでいいのだが、イーニアさんは邪推して弁解に苦労した。
俺は部屋に入り、ベッドにローリアを寝かせた。最初は顔色が悪かったため心配したが、すやすやと寝始めたことに安心した。
魔法の練習をする。ローリアの睡眠を妨げないために、音もせず光も出さないものにした。例えば、大量に【ウォーター・ボール】を浮かべて、お互いがくっつかないように制御して動かした。
そんなことをしながら考え事をする。
せっかく魔法が使えた記念に何か買ってあげるのもいいだろう。ご馳走を食べに行くのもいいかもしれない。
そんなことを考えて俺はベッドの横で突っ伏して寝てしまった。




