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第3話

「…しかし、誰もいませんね」

「どこに隠れてるのかしらぁ〜?出てらっしゃ〜い?」


ウイルス達は辺りを見回す。


どうしよう…と音楽係は青ざめた。


ヘクチッ


────!?

聞こえた音の方向を見ると、そこには画像係がいた。


ごめん、と言いながらも、ここ埃っぽい…と鼻をすすりながら呟く。


「ん?今なにか聞こえなかったか?」

「え〜?私は何も聞こえなかったけど〜?」

「おいお前ら!無駄口叩いてないでさっさと探せ!!」

「はっ!」

「りょうか〜い」


────あぁ、よかった。

なんとか危機は脱したと、安堵の表情を浮かべる俺達。

しかしそれも束の間、


ハックション!!!


先程よりもかなり大きなくしゃみを画像係は繰り出した。画像係も自分でまいた種とは言っても、青ざめている。


「おい!今!!」

「私も聞こえたわぁ〜!」


────やばい!!!


ウイルスは歩き回りながら、俺らを探している。


「そこにいるのは分かってるんだぞ!出て来い!!」


そういってひとりのウイルスが俺らの隠れている段ボールの山へ歩み寄り、


ドン


「あら〜、可愛らしい坊やじゃない」


────え?


「何をしている、さっさとそいつを捕まえろ」


────は?


「ちょっとキミ、動かないでね〜?」


────なんで俺が縛られてんの?


「ほら、さっさと手を後ろにしろ!」


────なんで俺が怒鳴られてんの?!


ウイルス達にバレないよう、ちらりと俺がさっきまで隠れていた段ボールの山を見やる。


するとそこには、すみません、と手を合わせるメール係の姿が。


おそらく、この状況を打開できるのはあの5人だけ。

俺はそれまでの時間稼ぎとして捨てられたというわけ、か…。


────とか冷静に分析してみるも、銃を突きつけられてるんだけど俺?!


「おいガキ。CPU係はどこにいる」

「余計なことを喋ると〜、あなたの首が飛ぶわよ〜?」

「お、俺はっ、何にも知りませんっ!!」


あの5人が助けてくれるまで、俺は時間を稼がないと…っ!


おい!とウイルスは俺の肩をつかむ。その力の強さに俺は眉を寄せるが、じっくりいたぶってあげましょうよ〜、と拳銃を指先で遊ばせながら笑みを零す女ウイルス。


「お前の趣味の悪さは前から知っている。だが今回はじっくりいたぶっている暇はない」


リーダー格のウイルスはそういうと、え〜つまんない、と女ウイルスは答えた。



「メール係、なにやってんの?!ご主人様が捕まっちゃったじゃん!」


と小さな声で画像係は言う。


「あなたがくしゃみなんかするからですよ?」


とメール係は言うと、でもぉ〜…と申し訳なさそうな顔をしながら画像係は答えた。


「てか!どうするんだよ!?早くなんとかしないと、ご主人様の命が危ないよ!」


音楽係は監視係に指示を仰ぐが、監視係は、どうしたらいいの…?と頭を抱えた。


「ウイルス撃退アプリをインストールすれば、何とかなるかもしれへんなぁ…」


アプリ係は呟いた。

さえてるぅ!と音楽係は顔を上げる。


「でも、この状況でどうやってインストールするんですか?」


メール係は、段ボールから顔を覗かせながら言う。見ると、ウイルス3人がユウタを取り囲んでいた。


「あそこの作業場に、うまく隠れながら行くことが出来れば…できるで?」


自分の作業場を指差しながら言うアプリ係。

行ける…?と監視係は問うと、やるしかないやろ!と答えた。


「ウイルス達にも、さっき古いスマホっつう言われたからな。その借りも返さなきゃならへん!」


拳を固めながらそういうアプリ係に、監視係は、頼んだよ!と言った。



俺はウイルスたちに尋問を受けていた。


────早く助けに来てくれないかなぁ…。


俺は横目で段ボールの山を見た。

その時、アプリ係が静かに動き出すのを見つけた。


────アプリ係がバレないように、ウイルス達の注意をこっちに向けさせないと…!


「あっ。し、CPUってあれか?あのー…」

「なんだ?」


「えーっと、あれ、そう!シュークリーム、プリン、うまい!」


────…。

────やっちまった…。


「死にてぇのかお前!!」

「ひぃぃぃぃすみません!!!」


はぁ〜、と女ウイルスは背中を向ける。


今、後ろを見たらやばいっ…!

そこにはアプリ係が…!


「あらぁ〜?あなたは誰かしらぁ〜?」


────くそっ!


移動中のアプリ係が見つかってしまった。


アプリ係はやけくそに殴りかかろうとするが、すぐに捕まってしまう。


「乱暴な男は嫌いよ〜?」

「さっさとそいつの腕も縛れ!」

「はっ!」


アプリ係も腕を縛られ、俺の隣に座らせられる。


「お前がさっきあそこに向かったのから推測するに…」


アプリ係か?とリーダー格のウイルスは問うが、アプリ係は俯いたまま何も答えない。


「ほかの仲間はどこにいる」「何か言え!!」と尋問されるも、アプリ係の口は固く閉じたまま開かない。


「言わないと、この坊やの命はないわよ〜?」


拳銃を持つ女ウイルスは俺に銃口を向ける。


俺の額から一筋の汗が流れた。


「ご主人様!」


アプリ係はそう零した。

ご主人様、というワードがひっかかり、ウイルス達はさらにアプリ係を問い詰める。


────くそっ。どうにかしないと…このままじゃ…!



「ちょ、どうする!?」


音楽係は焦りながら言った。


「もうあいつら2人のことは諦めましょう」


ええ!?と音楽係は驚く。


「せめてご主人様だけは助けようよ!」

「画像係!それはアプリ係がかわいそすぎるよ!!」

「冗談です」

「こんな時まで冗談言わないでよ!メール係!!」


音楽係がツッコミ役に回ってるなんて珍しいな、と悠長に監視係は思っていた。


「はいはーい!私、いい考えがあるよ!」


と画像係は手を挙げながら言った。


みんな、耳貸して?という画像係に、監視係とメール係と音楽係は耳を寄せる。


「ええっ?!ちょっと待ってよ!本気?!」


音楽係は画像係の案に驚きを隠せない。


なるほど、とメール係は頷く。

「それはいい案かもしれません」


嘘でしょ?!と音楽係は声を上げるが、やるしかないでしょ、と監視係は音楽係の背中を押す。


「やらないならここに隠れていてください。私たちがやります」

とメール係は言ったが、女の子にそんなことやらせられるわけないよ!と音楽係は声を上げる。


「じゃあやってください」

「えぇ〜」

「どっちだよこの野郎!!!」


メール係の聞きなれない言葉遣いに驚く音楽係。やりますやりますやります…と音楽係は重い腰を上げた。


「よし、行ってきて!」


監視係は音楽係の背中を強く押した。



俺とアプリ係は、脅されながらも口を閉じながら俯いていた。


その時、ふふふ…ははは…!と奥の方から腑抜けた声が聞こえる。


とうっ!と前転を繰り出し、俺達の前に現れるのは…


「俺が!!!C・P・Uだぁ!」


と叫ぶ音楽係。


ウイルスの冷たい目線、いや、ウイルスと俺達の冷たい目線が音楽係に突き刺さる。


「こんな馬鹿っぽそうな奴が、スマホの頭脳と言われるCPUなわけないだろ。捕らえろ」

「はっ!」


ですよねぇぇぇぇぇぇ!と叫びながら縛られる音楽係。


なにやってんねん、とアプリ係は呟くと、音楽係は、だってぇ…と言う。


────あと段ボールに残るのは、監視係とメール係と画像係。みんな女性だし…。

────こうなったら、俺が…!


「…俺が、俺があいつらを!!」


俺は立ち上がり、ウイルス達を睨みつける。


「俺のスマホを好き勝手しやがって!ふざけるな!!!!」


俺は手を縛られながらもウイルスに立ち向かい、体当たりを繰り出す。

避けられようが。投げ飛ばされようが。何度も、何度も。


────こんなボロくても。埃っぽくても…。

────ここは…、ここは俺のスマホなんだっ!


呆れた女ウイルスは、乱暴ねぇ、と俺から離れた。


────マズい…そこはっ!


「あらぁ!こんなところに、たっくさんのかわいい子たちが隠れているわよ〜!!」


────終わった…。


俺は膝をつき項垂れる。


「こうなったら…やるしかない!!!」


監視係は思いっきり女ウイルスを突き飛ばす。


異変に気づいた男のウイルスたちは女ウイルスのもとへ駆け寄るが、アプリ係と音楽係は不意打ちの体当たりでそれを阻止する。


ご主人様!と監視係は俺の腕の縄を解いた。


メール係と画像係は自分の作業場の資料にものすごいスピードでなにやら情報を書き込んでいく。


「私たちが大掛かりな作業をして動作を重くします!ご主人様はその隙に!!」


メール係は手元の資料を破りながら俺に叫んだ。


「小賢しい真似しやがって!!」「させるか!!」とウイルスは画像係に殴りかかろうとする瞬間、俺の縄が解け────











俺以外の時間が止まった。

係のみんなも、ウイルス達も、みんな止まっている。





────動き出す前に、早くしないと!!


俺はウイルスたちを殴り続ける。

動きはしないが、ダメージが蓄積してるはずだ。


そして最後にリーダー格のウイルスに思い切り強いパンチをかます。


その時、時間が動き出した。



ウイルス達は苦痛に顔を歪ませながらその場に崩れ落ちる。


「やったぁぁぁぁぁぁ!!」


と画像係は両手を上げながら喜ぶ。


俺がやった『音楽係がCPU係になりきっちゃおう大作戦』はなんだったのぉぉぉ、と音楽係は叫ぶ。


「くそ……」


ウイルス達はゆらゆらと立ち上がる。しかし反撃する力はもう残っていないようだ。


覚えてろよ…!とリーダー格のウイルスと女ウイルスは逃げ帰っていく。


しかし、CDの入っている段ボールに走っていくウイルスがひとり。


「わわっ!ちょっと何するんだよ!!」


音楽係は自分の作業場を荒らされ、怒りながら近づく。


「この!この!この!!!」


と段ボールを漁るウイルス。


「この!この!」

「どの?!」

「どんぐりころころぉ!!」


「「は?」」

その場にいたウイルス以外の人間が首を傾げる。


「借りてくからな!!」


ちょっと待ってよ!と叫ぶ音楽係を無視し、1枚のCDを奪い走り去るウイルス。


────俺、その曲聴かないと眠れないんだけど!?


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