4、いわゆる流行のキーワードという奴の威力
「おっ、おっ、ブクマついているじゃん!」
驚くべきことに、さっそく拙者の『小説家になろう』処女作に読者が少しついていたのである!
「わー、嬉しいなぁ」
どうやら『悪役令嬢』という流行のキーワードと、2話を同日に連続投稿したのが良かったようだ。
その後も、チェックするたびに、ブクマが順調に増えていく模様。
(初投稿でも意外と、読まれるものなんだな!)
相方は私の作品を『なろう読者が誰も求めていないストーリー展開』と酷評したが、内容がどうであれ、『流行のキーワード』という殿下の宝刀は威力を発揮するらしい!
ブクマが思いの他ついたことにすっかり気を良くした私は、『断筆の決意』から一転、続きを書こうと思い立つ。(単純な性格)
――とりあえず大まかなプロットはもう書いちゃったので、その通りに適当に文章を起こす作業に取り掛かる。
このプロットというやつが、前回書いた通り、小一時間ぐらいで完成させたもの。
出来あがった時は「ふぃ~、我ながら傑作!」とか思ったものだが――
(あれ、でも私、よく考えたら、普段漫画のプロットに2~3日かけてるよな?
これ、このままイッちゃっていいのかな?)
一瞬、『練り直し』という単語が浮かんだが、誰も私の小説に完成度を求めてないよな、と思いなおし、そのまま突き進むことにした。
なんだか、長い話になりそうだから、最終回のラスト部分だけ忘れないうちに書いておく。
私は漫画の時もそうなのだが、物語の締めの部分、ラストにとてもこだわりがある人間なのだ。(ドヤッ)
究極的なことを言えば、内容がハチャメチャでも、終わりよければ全てよし、という考えの持ち主なのである。
だから、創作する時は必ず『ラスト部分』から書くという妙なこだわりがある。
プロットを考える時も最後の部分から確定させていくほどである。
そんなわけで、『快心』の出来の物語ラストの文章を書き終えた私は、納得して、頷く。
「――うーん、我ながら素晴らしいハッピーエンド! 完璧っ!」
お次は何にも考えずに、相方が折角くれたアドバイスをまるっと無視して、お得意の高速タイピングでまた、ガーーーッと3話目を好きに書いていく。
(タイピングの速さと比例して、誤字脱字のイキオイも物凄い数になっている↑)
「いけねっ☆ ストレス・フリーの展開にしろってアドバイスされたのに、ちょい欝入っちゃった!(テヘッペロ)」
まぁいいか、相方のくれたアドバイスってどうも『悪役令嬢もの』を想定してない気がするし。
私の書いているの『チーレムもの』じゃないしね!
「そうさ……私はこの小説を全国にいる乙女ゲーム脳を持つ同志に向けて書いているのだから!!」
乙女ゲームというか、オト○イト作品に鬱展開は必要不可欠なのである。
(後日知るのだが、『なろう読者』と『乙女ゲーム愛好家』はあまり一致していないようである、衝撃!)
――翌日、3話目を投稿してみたところ、またまたグーンとブクマが増えていく。
そして数日で、ついに私は例の洗礼を受けることになる――
それは『日間ランキング』入りというものである。
ランキングの効果は想像以上に凄く、そこに載った私の処女作である『悪役令嬢もの』は加速度的にブクマを稼いでいく。
信じられない勢いで増え、そのポイントは数千にも達し、数日でランキング上位まで駆け上がり――
当然ながら私はその事を相方に報告というか自慢するのであった。
「私の小説、またランキングの順位が上がってたんだ」
「ふーん」
ご飯中でもタブレットから目を離さず小説を読む相方は、私がそう言っても顔すら上げない。
相変わらず、興味の「き」の字もない、反応である。
――まあ、でも無理もない。
実は少し前に私は某漫画投稿サイトに、お色気ギャグ漫画を連載していたことがあり、その時に、散々ブクマ数やらランキング順位を相方に報告し倒していたのである。
やはり漫画より小説の方が読み手の総人口が少ないみたいで、その時のブクマ数に比べたら、数がかなり劣っている。
とにかく相方は、私のその手の報告には慣れっこなのである。
しかし小説を書く前よりは、『共通の話題』が増えていることは確かなので、それでもめげずに、話を振ってみる。
「それでね、また小説家になろうのことで、色々訊きたいことが出来たんだけど、いいかな?」
「ああ」
相方は顔は下向だが、耳の意識だけはこちらへと向けている。
「私、先日も言ったけど、恋愛ジャンルで小説書いてるでしょ? それでラブシーン書いてて思ったんだけどさ。
――小説家になろうの15禁ってどれぐらいまでの描写オッケーなの?」
相方はぴくりと反応し、顔を上げた。
「なろうで15禁? ラブシーン」
おっ、なんだか分からないけど、話に食いついてきたぞ!
「うんうん、ちょうど、際どいシーン書いててさ。ぶっちゃけ○○しなきゃいいんだよね?」
気軽な口調で同意を求めたところ、相方は信じられないものを見るように目付で、私の顔を見る。
「ハァ……? お前、本気で言ってるのか?」
――その後、相方の口から吐かれたのは、衝撃的な事実であった――
<続く>
投稿していたお色気ギャグ漫画についてはつっこまないで下さい。