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3、異世界チーレムを書けと、君はあの日、私に言ったよね?

「お前、何でその話を、小説家になろう、に投稿しようと思ったの?

 まったく『なろう』に合ってないし、サイトの誰のニーズも満たしていない、必要とされていないストーリーだろ。

 っていうか、お前、漫画はどうした? なんで小説を書いている?」


 今さらその根源的な質問をするとか――!?


「いやー、だってN(←相方のこと)があんまり『小説家になろう』ばかり読んでいるからさー。

 私も参入しようと思って……。

 で、私の話の具体的にどこが駄目なの?」


 相方は深く溜息をした。


「しょうがないから、教えてやろう。

 なろう、で、どのような小説が好まれるかを――」


「うん、教えてくれ!」


「まず、お前がネトゲやっている時に、したいと、連呼していた、アレだ」


「アレ?」


「俺TUEEEEEEだよ!!」


「ああ、私がいつも目指していたあれね」


「お前はゲーム内で一度もTUEEEEできていなかったけどな……」


「くっ!?」


 ちなみに相方は「鯖1の廃人」とうたわれていたことがあるほどの、超絶クラスの元・廃人だった。

 レア武器を引っさげ、物理攻撃職でゲーム内で無双し、私にヒーラーをさせては、良く「地雷!」と連呼していたものである。


「とにかく、考えることは皆一緒なんだよ。

 なろうで受ける小説は、みなの願望を叶えるような小説だ」


「願望?」


「そうだ、キーワードは、異世界、チート、最強、なり上がり、ハーレム……あと……」※【注釈1】


「……つまりソー○・アート○ンラインみたいのを書けばいいと、そういう感じ?」


「そうそう、ちなみに一番大事なキーワードは、『異世界転生』な。

 たとえ書きたい小説の内容に、一切、『転生』の必要性がなかったとしても、まずは、ソコから始めろ!」※【注釈2】


「へー、なるほどねーー」


 幸い、私は偶然にも『乙女ゲーム』の異世界転生ものを書いていたので、そこの部分だけはクリアしている。

 いや、偶然というより必然である。私自身が異世界転生ものを、何よりも好んでいたのだ。


「あと、展開にストレスを挟んじゃ駄目だ」


「ストレス?」


「欝展開って奴がご法度ってこと」


「えええええ?」


 そんなの聞いてないよー。

 と、いうか、むしろいきなり欝っぽく話を始めちゃった気がするよ。

 だって物語って、主人公が色々な危機やピンチにあい、時に絶体絶命に陥ったりして、それを解決する、っていうのが基本パターンでは?

 そう思って、相方に聞いてみると――


「だから、お前は、なろう、初心者だって、言うんだ」


 うわっ、また否定きました!!

 ――しかし、こうして会話は弾んでいるのに、一行に楽しい向きにならないのはどうしてなのだろう?


 私は疑問を感じ始める……。


「とにかくっ、なろうで小説書くなら、今までのお前が読んできた小説のイメージを捨てろ。

 読者を気持ち良くさせること、願望を叶えることを第一にするんだ」


「えええ?」


 なんだか、全然、相方が言っていることが、頭に入ってこない。


「願望?」


「だから、さっき言った、チート、俺TUEEEEだよ!」


「あーーーーーー」


 私はそこでやっと気がついた。

 そもそも、私には、相方がいうところの「なろう」らしい、「なろう」の小説が書くことなどできないのだと――


 なぜならば、私は、その『弾』を、持ち合わせていない……。


 異世界で、チーレム……。

 ソー○・アー○オン○インのような小説を書くことは、私に無理があるのだ。


 だからこそ、私が込めた弾は『乙女ゲーム』で『悪役令嬢』だったわけだが……。

 このジャンルに対し相方は、まったく興味がなさそうで……。


「ちなみに、私の書いた小説、読んでみようかなとか、思う?」


 そう訊いてみても即答だった。


「まさか……全然、興味が沸かない。それよりお前、そんな下らない物書いてないで、黒の○王を読め!

 あるいはオー○ー・ロー○! 絶対、面白いから!

 あっ、でも、今まで言った話と矛盾しているんだけど、結構、この二つは物語は、欝な展開がある。

 ――しかしそれを越えて面白い。

 だが、しかし、初心者のお前は無難に徹して、ストレス・フリーなのを書いた方がいい。

 いや、というか、もう素直に書くのを止めた方がいい」

 (ちなみに相方がすすめてきた小説は、私の好きな作品傾向に合わせてチョイスしてくれたものらしい。その後も会話するたびに、読め、読め言われ続けていた。そしていまでは、以前から読んでいたSAOやさすおにに加え、オバロもリゼロもとんすきも、蜘蛛も、相方が買っているような代表的なやつはかなり読んでて、自分でも森田季節先生の本とか買ってます。テンプレ最高みたいな)



 相方の発言から、私は初めて、自分の致命的な間違いに気がつく――


 小説を読むのが苦手で、相方が興味のあるジャンルの話を書けない私が、幾ら、「小説家になろう」で小説を書いても、熱く語り合うことなど、一生出来ないのだと――

 書けば書くほど、こうやって一方的に否定され続けるだけなのだろう。


 当然、せっかく書いた作品を読んで貰うことすら叶わない――


 それは、たとえ相方の好みのジャンルを書いたとしても同じ……。


 そう、相方はファンタジー・ジャンル限定の読み専で、かつ、いわゆる『上位ランカー』と呼ばれる人達の小説しか読まない人だったからだ……。


 物凄い量の作品を毎日読んでいる癖に……私の小説のページを開く予定すらない――という人物。


 これは、結構悲しい現実である……。



 ――読んでもいない相方に自分の作品を全否定され……私の創作意欲は急速にしぼんでいった……。


 小説なんか書くの止めて、漫画でも大人しく描いていよう。

 しょんぼりと、そう思い始めた時……。


 自室へ戻り、PCに向かい、「小説家になろう」のサイトのマイ・ページをチェックしてみて、私は驚く――


「あ……」


 そこには目を見張るような現実が待っていたからだ――



<続く>



【注釈1】:相方が言っているのは男性向けファンタジーに限った話である。女性向けは今も昔も圧倒的になろうでは「恋愛もの」が大人気です。(特に「悪役令嬢」「婚約破棄」もの)

【注釈2】:異世界転生/転移が一強だったのは、2016年5月のランキング改変前であり、現在は「現地もの異世界」もランキングのトップページに載れて良い感じ。(ちなみに主人公が転生・転移者でなければ、現代知識を使用しても現地ものに分類される)

特に女性向きで顕著にその傾向が出ており、人気ジャンル「恋愛もの」を書く場合、高ポイントを稼ぎたいなら、むしろ異世界転生/転移は避けるのが「新常識」である。

男性向け、あるいは男女両方読めるタイプの話でも、競争率が高く書き手がベテラン揃いで埋もれやすい「異世界転生/転移」もの、特に「ファンタジー」ジャンルは、当たれば【一番】デカイが、知名度のない初心者には厳しい世界なので避けるのが懸命であろう。


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