2、悪役令嬢ものを読んだ事も無いのに、いきなり連載し始めるやつ
「小説家になろう」で小説を書こうと思い立った私は、さっそく何を書こうか、約5分ぐらい思い悩んだ。(短っ)
そしてサイトでどんな小説が連載されているか、軽~く傾向を調べ――10分後に結論づけた。
「なんたる幸運! 女性向きの小説では、私が滅茶苦茶カバーしているジャンル『乙女ゲームもの』が流行っているじゃないか!!
自慢じゃないが今の私にとって、乙女ゲームはライフ・ワーク!(←本当に自慢にはならない)
もう書くとしたらこのジャンルしかない!」
同時にそこで『悪役令嬢』というキーワードも得た私は、さっそく、創作作業に取りかかり始めた。
――さて、賢明な「小説家なろう」ヘビー・ユーザーの皆さんなら、ここでお気づきになったかと思う。
この時点の私が、まったく、いわゆる「小説家になろう」における「テンプレ」なるものを理解せず、直感で書き始めたということを……。
「小説家になろう」に置ける創作は、ただ、単に、「流行り」のキーワードを入れればいい、という単純なものではなかったのである。
「なろう」で受けるストーリー傾向としての、「テンプレ」、これを全く理解していなかった。
(そして現時点でも、いまだに理解する気もそれに則る気もなく、好き勝手書いている)
原因は『ただの一作も』悪役令嬢ものの小説を読破せずに、書き始め、連載を始めてしまった事――これに尽きる。
しかし、まあ、これについては問題ないのである。
別に高アクセスを狙って、連載を始めたわけではなかったからだ。
とにかく連載を始めて、相方に「ドヤッ」顔をしたかったのである。
私も、「小説家になろう」ユーザーに、しかも書き手になったんだよ! っていう。
――直後、相方にフルボッコされる、運命にあるとも知らず……。
簡単なプロットを『小一時間』ぐらいで書き終えると、私はさっそく連載、第一回目の本文の文章を、PCに向かい打ち始めた。
ネトゲのチャットで鍛えた高速タイピングで、ガーーーーッと一気に、書いて、書いて、書き終えたのである。
「うん、まあ初心者の文章なら、こんなものか」
書き終えると、推敲もそこそこに、さっそくサイト上に投稿してみる。
続けて間をあけず、2話目も書いて、出来たそばからアップした。
「ふふふ」
それから、いつものように、仕事から帰宅し、タブレットで「小説家になろう」の小説を読みふけっている、相方の方へと近ずいて行った
「ねね、私、その『小説家になろう』ってサイトに、今日、初アクセスしてみたんだよ」
「ふーん」
「んでね、なんと、連載を始めてみたの」
「あっ、そうなんだ」
一瞬驚いたような声を発したが、相方の視線は相変わらず、タブレットを注視し続けている。
あれ?
おかしいな、思ったほど、興味を覚えてくれないし、会話が弾まないぞ。
「ちなみに、流行っているらしい、悪役令嬢ものなんだけど」
「へー……」
んんん、なんだ、こりゃ、まったく興味がなさそうだぞ?
何か大きな間違いを犯しているような気がしながら、それが何であるか、その時の私はまだ、全く理解していなかった……。
私はさらにしつこく相方に話しかける。
「今、何の作品読んでいるの?」
「黒の○王」
「ああ、そうなんだ。たしかそれの書籍版も買っていたよね?」
「うん」
「ねぇ、小説家になろうって――素人だけではなく、プロもいっぱい書いているサイトなんだっけ?」
私が訊くと、そこではじめて、相方がタブレットから顔をあげた――
そして熱く語り始めたのである。
「ああ、そうだよ。結構、書籍化されている小説があるよ。
お前が観ていたロ○・ホ○イズンとか、それにソー○・アート○ンラインとか――
あと、ほら、例の「お兄さま」、魔法○高等の○等性――」
うわっ、急にイキイキと語りだしている――
私は相方が語るのを相槌を打ちながら聞いていた。
(ソー○・アート○ンラインは『なろう発』じゃないと思ったが、あえてつっこみは入れなかった)
「うん、うん」
ここから話を広げていかなくては――
「ねね、『小説家になろう』初心者の私に、色々教えて欲しいことがあるんだけど、いいかな」
私は多少へりくだった態度で相方に話しかける。
人に頼られたり、知識を披露するのが大好きな相方は、完全にタブレットから顔を上げて、私の顔を見た。
「んん? なに?」
「いきなり小説投稿してみたんだけど、正直、あまり理解していなくて――。
一体、どんな話が好まれているの?」
相方は鈍い表情で答える。
「どんな話と聞かれてもなー」
「たとえば、私はこんな感じの話を投稿してみたんだけど」
私は自分の書いた小説の内容を簡単に話し始める。
一通りその話を、大人しく聞いた後――
「なんだ、それ、全然駄目じゃん!!」
自称なろうヘビーユーザーの相方は、おもむろに私に駄目出しを始めたのである――
<続く>