13段目:きっと恐ろしいことになる
「よう悠輔、早川さんと仲良くなったみたいだな。帰りになんかあったのか?」
「まぁな」
「これで両手に花だな、羨ましい限りだ」
教室に着くなり光がそんなことを話しかけてくる。
おまえは両手にどころか両手の両足の指まで数えられるくらいお前のことを好いている女が居るだろう、とか
見た目にはそうかもしれんがただの幼馴染みと昨日あったばかりのやつだ、とか
大体俺が望んだことじゃない、とか色々言いたいことはあったが全て黙殺する。
まだ何か喚いている光を無視しまっすぐ窓際最後尾の自分の席に着く。
そのまま自然な動きで机に突っ伏そうかと思ったところで、携帯のバイブが震える
『私も自分の教室に着きました。今日もお互い頑張りましょう』
こいつは俺にいったい何を求めているのだろうか?
もうめんどくさいから着信拒否にしてやろうかいやダメだ。句読点が付かなくなるくらいダメだ。
そうすればきっと恐ろしいことになる。今朝のことを思い出すんだ。そうすればきっと恐ろしいことになる。
大事なことなので2回言ったぞ。
・・・もう知らん!
『あぁ』
いつも通り返してやった。考えるのも面倒だ、なる様になれ。
メールを返し終えたところで携帯に影が落ちる。
俺は携帯を閉じ、そのまま机に突っ伏ー・・・
「っておい!今目の前に俺が居ること絶対わかってたよな!?無視するんじゃねーよ!」
そうかと思ったところで、騒音に妨害された。
仕方なく目の前に目を向けるとそこには短髪を茶色に染め、整髪料でツンツンに立てさせた大柄な男が居た。
「なんだ、恭平か」
「なんだとはなんだ!お前こそなんだ!朝から美少女二人に囲まれやがって!羨ましいじゃねーか!」
目の前の男ー佐々木恭平ーはかなり興奮した様子で唾を飛ばしながらそんなことを宣ってきた。
・・・こいつらは他に何か言うことはないのか?口を開けばあかねと早川のことばかりーといってもまだ2人だが、俺には交友関係がほとんどないのでほぼ100%だー思わず溜め息が漏れる。
確かにあかねは正確に目を瞑れば美少女と言って差し支えないし、早川の方も流れるような黒髪で大和撫子のような印象を受け、十分美少女と言えるだろう。しかし、光の周りには比べるのも馬鹿らしくなる程の美少女たち、しかも年代は幅広く集まっている。まずはそちらに一言言ってから俺の方に来るのが筋というものではないだろうか?
「なら代わってくれ」
「お?マジ!?なら紹介してくれよ!今日の放課後とかどうだ!?」
「ダメだよ」
突然、それまで黙って俺たちの隣にいた光が口を挟んできた。
当然、第3者に否定された恭平は憤りを隠さない。光に食って掛かっている。
「なんでだよ!二人もいるしいいじゃねーか!だいたい光が決めることじゃねーだろ!」
「でもダメなんだ」
ニコニコと笑顔ではあったがそこには有無を言わせぬ静かな威圧感があった。心なしか語気にも冷気が感じられる。
恭平も流石にそれは感じ取れたのか
「お・・・おぅ・・・わかった」
とか言って腰が引けている。無理もない、俺も怖かった。
しかし珍しいな?光がこんなに頭ごなしに否定するなんて。
何か違和感を感じながら、二人が何か会話を続けているのを一瞥し、俺は机に突っ伏した。
今日も世界が平和だといいなぁ
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