12段目:悪魔となんて契約するもんじゃない
間が空きすぎて話が分からない方が大多数かも・・・
どうしてこうなった。
その言葉が俺の頭の中でリフレインし続ける。
慣れた筈の学校への通学路、まぁ俺にとってそれでさえも苦痛なのは敢えて言葉にすることでもないのだがそれでも普段以上に俺の体力や精神力、その他諸々の何か大切なものがゴリゴリと音を立てて磨り減っているかのようなそんな気がする。
その理由は明白だ。
今俺の両隣には声を上げて笑いながら仲良く話す二人の女がいる。
勿論それが近くにいただけでここまで俺は疲弊したりはしない。
こいつら、わざわざ俺を挟んで会話しやがる。
「それで、昨日のテレビが面白かったんですよ、見ました?」
「そうなんだ〜。祐輔、今度見てみようか?」
「関君、私も見に行ってもいいですか?一緒にみたいです」
「…も、もちろんいいわよ?み、皆で一緒に見た方が楽しいしね」
早川は俺に話しかけていると思うのだがなぜかあかねが答えている。
まあ仲良くしているのならそれが一番だな。
昔の方も言っている。仲良きことは、美しき哉。
・・・しかしながらなぜ俺はこんなに疲弊するのだろうか?
口調こそ楽しげだが目だけは笑っていないからだろうか?
それともその目が獲物を狙う鷹のように鋭いからだろうか?
いやいや、好敵手を見つけたかのように獰猛に笑っているからだろうか?
・・・まぁなんだか知らんが俺が疲弊していることは確かだ。
俺は今日何度目かわからないため息をつく。
早川と関わったのは早計だったのだろうか?昨日の俺を呪い殺したくなってくる。
ああ、それもいい考えだな。自分で自分を呪ってみるというのもいい考えかもしれない。
しかしながら呪われた相手は苦しむという認識が大多数を占めているだろう。かくいう俺もその大多数には漏れていない。よって、俺を呪い殺すというのは却下せざるを得ない。
嗚呼、苦しまず俺を天国に送ってくれるようなやつは現れないのだろうか?
そんなやつが現れれば俺は俺の持ちうるもの全てをそいつに与えてもいいのだが・・・。
と、言っても俺の持っているものにそんな価値のあるものなどないのだが。
持っているものと言ったらせいぜいが俺のこの体、それに魂くらいのものだろうか。
そんな悪魔崇拝のようなことを考えながら歩いていると、頭の中に突然声が響いてきた。
”その願い、叶えてやろうか”
俺は突然のことに周囲を見渡す。突然いつもと違う動きを始めた俺に周囲の困惑した声が投げかけられる。
「悠輔?」
「いきなりどうしたんですか?」
しかし、そんな二人の声は俺の耳には届かない。
俺の意識は全て突然降り注いだ聞き覚えのない声に集約されていた。
”我に魂を捧げよ、さすれば貴様を天国に送ってやろう”
突然の申し出に俺の頭が混乱に陥る。
そして俺の頭が答えをはじき出そうと急速に回転を始める。しばし、思考の海に埋没し、一つの答えを見つけた。
怪訝そうな顔をしている二人を視界の端に捉えながら意を決し俺は口を開く。
「俺はーー・・・」
なんてな。
そんなことが現実に起こりうるはずがない。現実はよくも悪くもノンフィクションなんだ。
悪魔だの魂だのは小説やゲームの世界で十分だ。
だいたい、悪魔と契約をしたところで天国なんていけるわけがない。行けたところで地獄が関の山だろう。
魂は存在しているかもしれないがな。俺は天国や地獄を信じていることからもわかる通り輪廻転生の説に対してもある程度好意的に見ている。袖擦り合うも他生の縁、なんて言葉もあるしな。
あかねや早川も前世で縁があってここでこうして歩いているのかもしれないしな。
そんな益体もないことを考えながら歩いていたら前に光の姿が見える。
光はこちらに気づいたようだ。一瞬驚いた顔をしているがすぐに何か含んだような意地の悪い笑みになる。
今日も何事もなく過ごせばいいんだが・・・。
PC手に入れました。
細々と書いていきます