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同窓会後の翌日。ビビッドの樹の仕事に同行しています。
肝心な同窓会の風景は、春隣豆吉さんの『How About You』内の『Chattanooga Choo Choo 後篇』に書かれておりますので読まれますと今回の澤田君が良く分かります。
「おはようございます……澤田さん、休暇だったんですよね」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「いいえ……なんかお疲れみたいだから」
「ちょっとな……いつもの事だから。そんなに僕、疲れている様に見える?」
同窓会終了後の月曜日。樹の打ち合わせに同伴している。
昨日の夜に、同窓会のあった学園から戻ってきてたっぷりと睡眠をとったはずなのに。
もしも、僕がつかれている様に見えるのなら……それはきっとあの恒例の強制イベントのせいだ。僕はいつものお約束の如く巻き込まれただけだ。
そんな僕を見て、先輩も同級生も「やっぱり通常運転だよね」ってにこやかに笑っていた。そりゃそうだよ。自分達が当事者じゃなくて傍観者なのだから。
「かなり酷いよ。なんかげっそりって感じで。飲み過ぎた?」
「そんなに酷いか。困ったなあ」
「うーん、せめて目元のクマを隠したらいいかも。コンシラーで消してあげるよ」
樹はそう言うとちょっと我慢してよと言って僕目元を弄った。
「うん、この方がまとも。家に帰ったらメイク落としで落しなよ」
「普通に持っているものか?帰りにコンビニだな」
「分かったよ。途中でドラッグストアに寄って?俺が使っているのと同じもの買ってあげるから」
「その位は自分で買えるぞ」
「そうだけど、メイク道具を使ったのは俺だし、最後まで責任を持たないと。そんなに大変だった訳?同窓会?」
樹の口から同窓会という言葉を聞いて、昨日起こった事が一気にフラッシュバックする。途中までは本当に穏やかだったのに……何がどうしてああなったんだ?
行ったのは、間違いじゃなかったけど、同窓会が始まってから会場に行った方が本当の意味での正解だったのだろうと今では思う。
「大変というか……ある意味で俺は被害者だ。途中まではいつものクラス会と変わらなかったのに……」
「何があったんだよ」
「ある意味では通常運転だった訳だ。あの人が恒例行事を決行するって分かった時点で」
「恒例行事?」
「ああ……大概が大失敗だったりするんだけどな」
「ふうん……通常運転が大失敗ってこと?その後処理をマネージャー押し付けられたって事?もしくはその為の同窓会って事?」
「言うな!皆まで言うな!それ以上はもう言わんでくれ」
咄嗟に僕は叫んでしまう。そう、全ては樹の言うとおり。あの時……同窓会の案内を見て見ないふりをしていたら……あんな面倒くさいことをしないで済んだかもしれないのに。
もしくは、葉書を見て生徒会の先輩に連絡メールを送らなければそんな事にならなかったかもしれないのに……。
同窓会自体はつつがなく終了したので問題は無かったかもしれないけど、やっぱり僕は仕事を理由に欠席という選択をすべきだったと深く反省するのだった。
「だから、結局何があったのさ。同窓会で」
「お願いだからもう聞かないでくれよ。僕の傷口に塩を塗り込むな」
僕の反応が面白かったらしく、いつまでも樹に弄られる羽目になった事は言うまでもない。