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冒頭は若先生登場です。この人もなんだかんだ言って学園出身者であることが証明されます。

「澤田君、白戸君毎日来るって?」

「おはようございます。先生。あいつらしいでしょ?」

「確かに。前の入院の時も毎日来たからなあ。それよりもうちのナースたちからは二人は恋人ですかって鼻息荒く聞かれるけど」

「僕らそんなに……そう見えます?」

「学園育ちの俺らはスキンシップ過多な連中が多いから……そうかなって思うけど、お前らの場合はネタ的夫婦ってところだろ?ガチじゃなくて」

「周りが勝手に僕の事を嫁って呼んでいただけです。僕も聞かれましたけど、ここでは白戸が嫁みたいですよ」

「ああ。それの方が自然だな。お前はオカンな立ち位置だけだしな。白戸の場合は微妙に行動が女子かって言いたくなるよな」

「もう慣れましたけど。僕の人生の半分を親友として傍にいますから」

「でもきっかけは、どこからだ?俺はお前らと入れ違いだから知らないから」

「俺達バスケ部で」

「お前基本的に生徒会室で天野に扱き使われているってあいつ等から聞いていたけど」

この先生が言うあいつらと言うのは青木先輩と大久保先輩の事。でも生徒会役員をしていたとは聞いていないよな。

「俺はあれだ。写真部時々天文同好会だから」

写真部ですか……一部の先輩たちがカメコになって夏と冬のイベント後に同窓会をしているという写真部ですか。天文同好会の名前は知っていたが初めて同好会の人を見たかもしれない。

「学園だったら星が綺麗に見えましたよね?」

「そうだな。学園の天体望遠鏡を物理選択の連中しか使わないって知ったから勿体ないと思って俺が同好会にして天体観測始めただけだよ」

成程。確かに学園の天体望遠鏡はかなり最新鋭のものだったはず(当時)。

「先生、話が相当ずれましたよ」

「そうだな。週末には退院して自宅療法。異変を感じたら戻って来いよ。あれだろ?マンションで白戸が待っているだろ?」

「今回は自分の仕事が忙しいので自分の部屋にいるはずですよ」

「偶然とは言っても徒歩5分だろ?実家もそう遠くはないだろ?」

実家の話が出て、つい眉間にしわが入る。

「あれ?実家の話って禁句?」

「俺じゃなくて白戸ですよ。あいつ家族と上手く行っていないから学園に入った位だから」

「でも、兄貴は全国区だっただろ?あいつも同じ扱いを」

「察した通りですよ。だから誰よりも家庭願望は強いですよ」

「そっか。それじゃあお前が先に嫁を貰うよりは白戸が嫁を貰った方が安心か?」

「こればかりは白戸次第なので。僕がどうこう言う話じゃないです」

「相変わらずのオカンだな。現場復帰するのはいいけど、無理なシフトは組まないで配慮して貰えよ。体力が低下しているのは事実だから。今回の元凶はどうにかなるのか?」

「もう大丈夫だと思います。それにあの時も今回も俺の周りには皆がいてくれたので」

「そうだな。今度は俺にも飯作ってくれよ」

「青木先輩と一緒に来て下されば用意しますよ。白戸もいると思いますけど」

「やっぱりあいつ住み込んでいるじゃないか?」

「白戸がいるのが僕にとって普通なだけです。恋愛感情は持ち合わせていませんよ」

「はいはい。白戸はともかくお前はノーマルでいいよな」

「そうですね。一度は結婚したいです」

「お前も前向きだな。いい人がいたら紹介してやるよ」

「少しだけ期待しています」

朝の回診は若先生……僕の高校の時の先輩にあたる人だ。僕とは入れ違いだったから高校生の頃は勿論知らない。元カノの最初の騒動の時にお世話になって以来、何かあるとお世話になっている。

今回も、恒例行事になっているカレーの日の辺りから咳が止まらない事があった。それでもカレーの日が終って気が抜けたのも症状が悪化した遠因かもしれない。元カノの件が収まって、あいつらのため込んだ課題を消化させて学校に提出させて……もしかしたら体力も気力も低下していたのだろうな。事務所で倒れてしまってこの病院に運び込まれてそのまま肺炎で入院してしまったのだ。


退院してすぐに職場復帰は流石に社長から止められたので二月の第二週に復帰の予定だ。その週末には事務所のスタッフ全員で出演することになっている期間限定コンビニスイーツのCM撮影のスケジュールが組まれている。普段全員が揃わない事務所スタッフ全員が揃うという。アイドルもモデルも皆揃うということ。これからデビューを控えた子達もちょい役で参加が決まっていた。

僕の役は食堂のお兄さん。ひたすらにカレーをよそうだけ。この配役絶対にカレーの日に僕が作ったカレーを食べたせいだろうな。ちなみに撮影予定日は二日間で二日間ともカレーを作るようにとスケジュールが埋められている。今回の材料費はCMの制作費から出るそうなので、気にせずたっぷりと作って欲しいと言われた。

その為か人によっては海外ロケに出かけている。帰ってきたらカレーという切ない一言を残して。でも製作費からってことでロケ弁は二日間カレーがメインってことになる。初日は事務所でロケ。二日目はスタジオでダブル主役の二人のシーンの撮影だ。そうなるとロケの前日から僕はカレー作りを開始しないとならない。食堂のおばちゃんを巻き込んでしまうのは申し訳ないなあと思うけど、おばちゃんたちは思った割にノリノリだった。

「だって、私達が仕事しているところが映るでしょ。自慢できるもの」

はあ……そうですか。うちの事務所の待遇がいいことをアピールもお願いしますね。それと事務所創立10周年と言うことで民放の夕方の密着ドキュメントの番組も同行することが決まったそうだ。事務所としてもありがたいし、CM撮影も取材対象と言うことでコンビニ会社も相乗効果になると言うことで快く了承してくれた。勿論コンビニ会社の打ち合わせでネタバレができないものはきっちりとモザイク処理をしてくれるという。僕は事務所に入って5年。最初の五年は所属しているタレントも本当に少なかったはずだ。当時の稼ぎ頭は子役として活動していた樹とモデルの女の子達のまだまだ小さな事務所だった。樹の成功から俳優を養成してデビューさせて成功してからアーティスト嗜好のアイドルをデビューさせてそれなりに成功してきたときにデビューをしたのがビビッドになる。結成当初は樹をメインに売っていくグループという認識が多かった。最初のオファーは樹だけは単独で他はメンバー一緒に仕事が多かった。それが変わったのは、デビュー一周年の時に販売した個別メンバーの日常だけを追ったドキュメンタリーテイストのDVDだろうか。普段の彼らの生活に近いシーンを作り上げて撮影して出来上がったDVDはかなりの反響があって売れたし、そこを足掛かりとして個別に活動することも増えた。楓太はベテラン俳優さんと一緒に街歩きの番組を行うことになった。そのキャスティングも、年末時代劇に端役として呼ばれたのだが、着物慣れしているふうの所作が綺麗と言うことで、新たに大店の番頭役も追加された。そこから元々ふうの実家と取引のある着物メーカーからCMのオファーを貰ってからクール系和風癒し男子の称号が定着した。グループの中では隅っこ男子と言われていたので新たなファンが獲得されたと言っても間違いではない。そこからあのコンビニスイーツのオファーが来るから世の中どうなっているのか分からないものだなと改めて痛感するのだった。


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