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オチになります。今回はゲスト出演として小杉さんに出張をお願いしました。この件は春隣豆吉様も了承になります。
「……で、今夜はカレー鍋か」
「悪いな。あいつらの食事の管理もしているからな」
メンバーの学校の宿題消化オフの最終日。あいつらのリクエストのカレー鍋のスープを持ち帰って自分でも鍋をしようと思ったら、白戸から今夜は大丈夫?ってツイッターがきた。
いいよと返信すると、すぐにあいつがやってきたので二人で鍋の支度をしている。
「それよりも元カノ大丈夫か?」
「さあな。メンタルが壊れているかもしれないって先輩たちは言ってた」
「そうなると、暫くは病院がどうにかしてくれるってことか」
「多分ね。それに僕に近づくことは禁止されているからそこのところは大丈夫」
僕らは支度が出来た鍋をカセットコンロの上に置いて火をかけた。
「なあ。あの鍋ってカレーだろ?まだカレーの日じゃないじゃん」
「それは明日の昼に社長が食べたいんだってさ。だからランチ前に出社だから10時には家を出て、大久保先輩の事務所にカレーを置いてから、出社でいいかなと思ってる」
「明日は泊まらないけど、夜にはカレーってある?」
「あるな。確実に」
「だったら……明日もいい?」
「夕飯位は構わないけど、泊まらなくていいのか?」
「うん。明後日は取引先に直行なんだ」
「ふうん。お前が直行ね。珍しいな」
「そうなんだけど。じゃあ、何か甘いものを買って来る」
「悪いな。気を使わせて。何かあったか?」
「うーん、あったというか、なかったというか」
白戸は言葉を濁しているので、何かあったと思う。
「そのうち教えろよ。さあ飯食うか」
僕らはいつものようにカレー鍋を楽しんだ。
「では、社長。届けましたから。後でランチボックスを取りに行きますので」
「いいのかい?そこまでさせて」
「社長がフライングでカレーを食べたってスタッフに知られるのはどうでしょう?」
「それもそうですね。では、頼みますよ」
事務所に行く前に、青木先輩たちの所にもカレーを届けた。先輩たちの所にはお鍋に入れて持ち込ませてもらった。昨日の昼に、大久保先輩に今回の提案をしたら、ご飯等は自分たちで用意しますので、事務所の女の子も食べる分だけ用意してもらっても構わないだろうかと返事が来た。もちろん、彼女たちの協力なしでは無理だったと思うので構いませんと答えて、自分のお弁当もカレーにして、冷凍保存していたハンバーグを解凍してから火を通した。それとウィンナーとほうれん草のソテー。サラダは温野菜のサラダにオーロラソースをかけるようにしてある。
僕は自分のお弁当箱を持って、食堂に行くことにした。ランチタイムの食堂はいつも通りにスタッフである程度の席が埋まっていた。
偶然にも日当たりが良い窓際が開いていたのでそこに座ってランチボックスを取り出してふたを開けた時に僕の背後に人が立った気がして振り向いた。
「あー、カレー弁当だ。しかもハンバーグカレー……いいなあ」
そこにいたのは事務担当の小杉さん。スタッフ歴なら僕の方が上だが、彼女は大学に入ってしばらくしてアルバイトとして事務所にいるので僕より先の入社になる。細かいことを気にする事務所でもないし、彼女のもそんな人ではないので、実質的に年の離れた同期って立ち位置になっていた。
「ハンバーグのカレーソース掛けでよければ一つ上げますよ」
「やった。言ってみるものだよね。でも、変な女の人には本当に気を付けてくださいね」
「どうしてそうなるんでしょう?」
「だって、元カノがストーカーでしょ?見事なトラブルホイホイだと思いません」
「好きでなったことではありません。そういうことを言うのでしたら、おかずの交換はしませんよ。小杉さんから頂くのはぶり大根のぶりと大根でいいですか?」
「そんな、殺生な。同期にその仕打ちは酷い」
「都合のいいときだけ同期ですか。いいです。ブリ一切れ下さい」
「やったあ。澤田さんありがとう。それではご相伴します」
そういうと、僕がハンバーグにカレーをかけた状態のお弁当の蓋を持っていただきますと言って早速食べ始めた。
「そんな焦んなくても大丈夫でしょう?」
「だって、フライングじゃない。同期の特権だけど周囲の目は気になるんです」
なんかちょっと矛盾していないかなと思いつつも、美味しそうにハンバーグを食べている彼女を見ていたらどうでもいいかと思ってしまったことは絶対に彼女には知られてはいけないと思うのだった。
逃げちゃだめだでは、ほかの話にすこ~しだけ話が被るような小ネタを仕込んでおります。
(ちょっと意地悪ですみません)小ネタに気が付いた時にあっと思ってもらえたら幸いです。




