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そして僕は途方に暮れる2

今回は大久保先輩と青木先輩とが出ております。

当然のことですが、春隣豆吉様には彼らの職業等の了承を貰っております。

「今夜って結局誰が来るの?」

「今夜は大久保先輩と青木先輩と修吾……僕の家を知っている誰か」

「そっか。結構いるってこと?」

「でも、僕の家に泊まるのは寿と修吾だろ。通常通り」

「そっか。今日は休みなの?」

「ああ。本当は違ったんだけど、飲み会のことを考えて変えてもらった」

「それって俺のせい?」

「違うよ。久しぶりに料理を作りたくなってさ。久しぶりにタルト生地から焼きたいんだけど、何のタルトがいいと思う?」

新年会のときに僕の家での飲み会が決まった。メンバーはほぼ変わらない。けれども大久保先輩と青木先輩が一緒に来るという。めったにないことなのでちょっと本気を出したくなって休みを金曜日にしてもらったんだ。その代わりに土曜日は仕事だけど。この仕事は日曜日も祝日もないから、頼む相手次第ではうまくいくんだ。

元々土曜日の休みが欲しかった里美さんと交代したので、明日はなっちゃんのマネージャーの仕事がメインだ。今のところスケジュールは聞いているけど、確定したらメールで送ってもらえるように頼んである。

寿の風邪は完全に治るのに、いつもより少しだけ時間がかかった。いつもなら完全に寮に戻っているのだが、今度の週末が連休なので連休明けに帰ると僕に宣言してきた。


で、今夜の飲み会だけど食べたいもののリクエストをお願いしたら、先輩たちはカレーを、修吾はタルト生地のケーキをリクエストしてきた。後は温野菜のサラダと年末に買って残ったチョリソーとピザ生地があるので、作り置きしてあるトマトソースを使ってマルゲリータ。基本的には自宅にある食材で作れるけど、タルトのフルーツが決められない。昨日既にカレールーを入れる手前まで煮込んであるので、夕方になったらルーを入れればいいし、ピザは皆が揃ってから作り始めてもいい。

足りなくなったらカレーを使ってドリアにしても問題ないし、たんぱく質が少ないから、とんかつとチキンカツと唐揚げとカキフライ……カレーのトッピングになりそうなものを用意したら問題ないかと思っていた。

一次的な同居人の寿は既に会社に行った。僕もスーパーに必要な食材を買いに行けばいいだけだ。カスタードクリームと苺なら大抵に人は嫌がることなんてないだろうから苺のタルトに決めた。明日は君想いマカロンの打ち合わせに同行することになっているので、差し入れに苺タルトを作ってもいいだろう。なっちゃんとの待ち合わせはふうの実家の隣のピアノ教室。なっちゃんは今はこちらにお世話になっているという。

冬休みが終わってからなっちゃんは学校に通い始めた。今は保健室登校だが、いずれは教室に戻れたらいいんだけどって話していたが、社長は今の中学で三年間を過ごさせる意思は持っていないようだ。社長のいとこの子にあたるそうなので、そういったことは任せておいていいと僕は思っていた


スーパーで必要なものを買い込んで、冷蔵庫に保存するものをどんどん保存していく。苺は玄関の靴箱の上に置いてある。これは単に涼しいからだ。

まずはカツの下拵えを手早く済ませて、冷蔵庫にしまっておく。唐揚げは下味に漬け込んで冷蔵庫。タルトの生地は、出かける前にオーブンで焼いたので今は覚ましているところ。スープがないので、アサリの水煮を取り出してクラムチャウダーにすることにした。野菜はスープに入れられるものを細かく刻む。そんな風に準備をしていると、あっという間に最後の仕上げを始めてもいい時間になっていた。まずは、カレーの鍋を温めなおしてから、苺を飾り付ける。ルーを入れて隠し味を入れて味を馴染ませて火を止める。ご飯の方はタイマーをセットしてあるので時間になれば炊けるので特に何もしない。

最後に揚げ物を始めようと思って、揚げ物をする鍋に油を入れたときに、修吾と寿から連絡が入る。職場が近い二人は今日みたいな日は一緒に僕の家にやってくる。先輩たちとは新宿で待ち合わせてそこから僕のマンションまで来るらしい。

修吾のツイッターに揚げ物もあるぞと送っておく。リクエストのメニュー以外は僕の思い付きで作るので、作る予定のものを最初に伝えておかないとデパ地下で買ってきてしまうのだ。今回はそれが回避できそうなので、僕は順番に揚げ物を作り始めた。


「ただいま」

「お帰り。そしていらっしゃいませ」

「白戸……完全に家だな。いつ嫁入りするんだ?」

「だからそんなんじゃないって」

「まあまあ。玄関口でいうことじゃないから入ろうか」

「そうですね。法哉さん」

玄関で修吾と寿がいつものやり取りをしていたようで先輩たちに諭されたようだ。

「お疲れさまでした。明日のスケジュールって皆さんどうなっています?」

「僕らは休みだよ」

「白戸君たちは?」

「もちろん連休」

「僕だけが勤務みたいですね。あっ、でも正午過ぎにここを出るので泊まるのでしたら人数分の布団はありますので、安心して下さい」

「えっ、そんなに?」

「担当のアイドルを全員泊めることはできますよ」

ビビットは5人だから布団を客間いっぱいに敷き詰めて雑魚寝になってしまうけど、あいつらは楽しいみたいでたまに僕のオフの前の日に全員で押しかけてくる。

「澤田君らしいね。仕事は楽しい?」

「はい」

「変わりはないですか?」

「変わりですか……最近、事務所のそばで僕のことを聞いている女性がいるらしいです」

「なに、それどんなストーカー」

「それは僕じゃないでしょう」

「まあ、その話は後にして、食事にしようか。ほとんど澤田君は準備してくれたんだね。お疲れさま」

「そんなことないです。久しぶりに作った!と言えるくらい楽しかったですよ」

「それって俺のせい」

「だから寿のせいじゃないって。仕事だから」

「白戸は変な所に考えすぎ。ちーちゃんは嫌ならちゃんと言うよ」

「そうですよ。す澤田君は受け入れちゃうことも多いですが、ちゃんと嫌と言えますよ」

「そうそう。あの事件だって、澤田君が完全に拒絶したから短期決戦できたんですから」

「ああ……あれがなければちーちゃん転勤族だったかな?」

「さあ?霞が関に戻されたんじゃない?一度休職したんだから」

「そうかもしれませんし、他の省庁に出向だったかもしれないですね」

話が自然と5年前のあの事件に変わっていった。

もうあれからもうすぐで6年が経過しようとしている。マネージャーになってからは無我夢中で突っ走っていたような気がする。そうやって考えると、あの事件が僕にとっての分岐点になったことだけは否定しようがなかった。


―5年前―

「本当にごめんなさい」

「いいよ。君の仕事がそういうものなのは僕も知っているから。また今度デートしよう」

淡々とした会話をこなしてから通話がプツリと切れた。きっかけは去年までいた職場の先輩に頼まれていった合コン。国内線を中心に勤務しているCAの彼女と知り合って何度かデートして恋人になってから一年と半年。ちょっと早いけど彼女との将来を漠然と考えてもいいかなと思っていた。国土交通省に入省した翌年に航空管制官に異動になって、自宅から通うのは辛くなったので、品川駅近くのリノベーション済みの中古マンションを購入した(正しくは、かなりの額を頭金にしてローンも併用。忙しいからお金がたまると繰り上げ返済を繰り返している)ここからなら、霞が関だってそんなに遠い距離ではない。学生時代に投資したお金で購入したけれども結構いい買い物をしたと自分でも思っていた。

彼女も羽田の最初のフライトの時もあると僕の部屋に泊まることもあったから、合い鍵を渡してはあった。最初の頃は今夜泊めてほしいと連絡があったけれどもそのうちそんな連絡がなくなって、同居人ではないのに僕しか使わないものを勝手に使っている形跡が見えるようになった。僕の資産を調べている節があったので、パソコンのセキュリティーを徹底したら勝手に見ることすらなくなった。彼女を信じてはいるけれども、完全には信用できなくなって重要書類は実家の金庫に預けてもらって自宅の内装もシンプルにしていった。そんな僕を見て、何?どうかしたの?って僕を疑ったけれども僕は、いらないものを処分しただけだよと答えるだけにとどめていた。

完全に彼女の行動を疑うきっかけは冷蔵庫の中身だった。彼女一人が食べる量以上に食材が減っていることが数回続いて、彼女が飲まないワインの空き瓶がキッチンの隅に置かれるようになった。

ここまで来たら、さすがに誰かを引き込んでいると疑うのは当たり前だろう。たまたま相談に乗ってもらった大久保先輩の紹介から興信所を紹介してもらって調べてもらうと、僕が笑ってしまうほどに彼女が男を引き込んでいる証拠が出てきた。

僕がいない昼間を使ってラブホテルよろしくの如く男との浮気を繰り返す彼女。そんな浮気男の正体が分かった途端に僕の心は壊れてしまった。


僕の異変に最初に気が付いたのは白戸。白戸が慌てて大久保先輩たちを僕の1LDKのマンションに呼んでくれた。

「どうしたんだい?」

僕は無言で興信所の調査結果を手渡す。

「そっか。どうしたい?」

「この家ではもう住みたくないです。弁済とか可能ですよね?代理人お願いできますか?」

「でも澤田君、彼女だったらそんなには期待できないですよ」

「彼女じゃないです。婚約者です。僕プロポーズをして指輪だって……」

僕は通勤カバンの中から彼女に渡すための婚約指輪のケースを見せた。この調査をお願いする前に、彼女にプロポーズをして彼女の両親にも会っていたし、両家で食事会も終わっていた。だから彼女がしていることは婚約不履行として立証が可能だった。

「なるほど。それなら徹底的にやりましょうか。澤田君がここまで壊れてしまったのを見るのは僕も辛いですから」

「青木君。君がその気ならやりたいように。澤田君、依頼料は?」

「僕、FXの利益があるので高くてもいいですよ」

「ちなみに口座にはいくら入っているわけ?」

僕は投資で使っているネットバンクの残高照会をパソコンに表示させる。

「これは……これを知っていて浮気していたのなら相当なものだな」

「このPCにはがちがちにセキュリティーをかけたので見られてないです。それに最近不眠症で深夜取引もしているので、どんどん資産が増えているんですよ。あははは……」

「もういいよ。澤田君が壊れてしまった最大の原因はこれか。相手と仕事上やり取りがあるのはもっと辛いね」

「そうでしょうね。浮気相手は既婚者の機長ですか。まずは室内での証拠も探しましょうか」

「そうだね。盗撮はどうかと思うけど、盗聴はギリギリありかな。不在の時に勝手に入り込まれているのが気持ち悪いもんね」

大久保先輩はどこかに電話をしている。青木先輩も事務所に電話をかけているようだ。

「澤田君、この件が落ち着くまで君はどうする?病院にお泊りしようか?」

「えっ?」

「僕らの同期には開業医の子弟もいましたよ。これは使わない手はないでしょう。素人判断でも精神的に日常生活は困難です。まずは診断書を取りましょう」

あっという間に、僕は数日分の荷物をまとめて、大久保先輩の紹介で僕があったことのない学園の先輩の実家が経営している病院の個室で暫く過ごすことになった。

「大丈夫だよ。大久保と青木が全部うまくやってくれるよ。君はとにかくゆっくりと心と体を休めようか」

僕のパソコンは、ウィルスが入ったってことにして持ち出して弄られないようにしてくれた。彼女には体調を崩したから実家にちょっと戻るとだけメールを残した。

僕がいない間に、何かあれば先輩たちがすぐに行動をしてくれることになっていた。ざっくりと聞いているのは、基本的に僕の代理人は青木先輩。青木先輩は民事訴訟をメインに活動をし始めたところだそうだ。大久保先輩はそんな青木先輩をサポートしてくれるという。白戸と修吾は定期的に僕の病室に顔を出してくれる。彼女のことを忘れろなんて言わないけど、あの家に住めないっていうのなら、知りあいの不動産屋さんを入れて家賃収入貰ったらどうだ?なんて提案してくれている。

僕の気持ちを踏みにじる行為をしているあの二人は、僕がメールを出したその日に早速宿泊をしたらしい。二人のスケジュールを絞ってICレコーダーを寝室とキッチンに仕込ませてもらったよと興信所の人に言われて宿泊後に僕が預けた合鍵で入って、初めてのお泊りに相当浮かれているようだった。僕が作っておいた常備菜も私が作ったのよっていいながら解凍しながら皿に盛りつけている。いや、君は料理を一切しない子だよね。僕に対してまだなの?と、よく言っていたじゃないか。

僕が一番あきれてしまったのは、僕の総資産が分からないようにしているのに、僕のクローゼットをひっくり返して「そんなに高いブランドではないけど、まあまあいいものを着ている」とか「この部屋って賃貸なのか?分譲なのかで変わってくるよな」とか「結構いい物件みたいだから絶対に逃がすなよ。体が物足りないのなら今まで通りに相手にしてやるから」とか。挙句の果てに僕のベッドですることして、汚れたままで勝手に僕のクローゼットから新品の下着を着て出て行ったということだ。

青木先輩が回収してきてくれた不適切な関係の証拠を目の当たりにしても僕は泣くことも叫ぶこともできなくなっていた。あの部屋が勝手に汚されていくのも、勝手に僕のものを自分のもののように使われたのも全てが嫌だった。

「で、レコーダーでの録音データだけど、澤田君は聞かない方がいいよ。完全に心が壊れてしまいそうだからね。これからは僕らに全てを任せて。君はここで心と体をゆっくりと休めてね。ご両親には僕らの方から説明するから。えっと、なんとなくわかったかな」

僕が表情を変えていないのが不安になっているみたいで、青木先輩が僕の顔を覗き込んだ。

「僕……何か……悪いことしましたか?」

「してないですよ。澤田君は優しすぎるんです。いつもは僕らの方が甘えてしまっていましたから、今回の件で恩返しってことにしませんか?」

「職場の方は?今は風邪で声がかすれて業務不能ってなっていましたよね?」

「そうだね。ここの病院には精神内科があるので、そちらの診断書を書いてもらいましょう。そうですね、羽田の航空管制官は業務不能な為、本人の配置転換と症状が緩和するまで休職とさせてもらいましょう。これは正当なことです。自分を責めてはいけませんよ」

「ありがとうございます。では、僕の部屋にレコーダーを入れた件は?プライバシーの侵害ってことで僕の方にも損害賠償を問われる恐れがあります」

「それはありませんよ。あの部屋の名義は誰ですか?彼女も名義人ですか?」

「いいえ。部屋の名義は僕です。登記簿等は実家にあります」

「それなら、婚約者の彼女以外の人間が自分の家に出入りしている可能性があるから興信所に依頼したと言えばいいのです。所有者は澤田君ですから」

「そっか。分譲だからギリギリセーフか」

「そうです。運よく婚約不履行に該当する事項が見つかったんです。それと、あなたの婚約者とその不貞行為をしたお相手のことを今興信所で調べさせています」

「他に何かあるのと青木は思っているのかな?」

「分かりませんが、勘です。あのお二人は自分たちのしていることを澤田君が知らないと思っているようです。確固たる証拠を既に手にしているのでこれからはこちらが動いても問題ないですよ。まずは、部屋の鍵を替えちゃいましょうか。契約をした不動産屋さんに一言だけ言ってから実行しましょう」

先輩たちも仕事があるのに、僕の為にこうやって動いてくれるのは嬉しい。僕は目に涙をいっぱい浮かべながらお願いしますとしか言えなかった。

「部屋の鍵を替えたら……念のために修吾君に費用はこっちで持つからということで代わりに住んでもらいましょうか?理由の方はこっちで決めておきますので決まり次第伝えますね」

「職場にはどうしますか?」

「まあ、婚約不履行になる事案が発覚して当事者が業務上やり取りをしないといけない心労で業務不可能な状態に陥っているという診断書と今回の証拠写真だけ各職場に見せます。澤田君が羽田に勤務している限り、彼が羽田に立ち寄らなければいいですよね?例え副機長であっても。その条件はどうですか?」

「構いません。でも休職しても復職したくなくなったらどうしたらいいですか?」

「それはそれです。澤田君は元々管制官志望でもなかったから、それもどうにでもなります」

「じゃあ……今は何も見たくないです。レーダーも英語も飛行機も」

「うん。ゆっくり休んで。時折連れ出してもいいですか?」

「引きこもりすぎるのもあれだから。次の避難先ができたら連れて行って僕の病院は定期通院でいいよ」

「分かりました。病院での生活が飽きたら僕の部屋でも来ますか?これといったものはありませんけど」

「そこまで甘えてもいいんですか?」

「最終的には澤田君の実家に戻りたいのですが、今回の件で逆上した彼女さんが君の弟さんと妹さんに何をしでかすかも分かりかねますし。会っているでしょう?あの子たちは」

僕だけの問題でないことに気が付いて一気に血の気が下がる。双子は小学校に入学したばかり、日本の学校に馴染んできたけれども、四歳になる前に日本から再びアメリカ生活をしていたため、完全な帰国子女だ。そのために日本語を書くことも問題だけど、話すこともかなり危なっかしい。そのことで時折小さなトラブルが起きていた。

「最終的にはどちらかの祖父母の家に行ってもらえるように説得しますので、その体制が出来上がるまでならどうですか?最近は自炊なんてしていないので、澤田君の手料理で居候代はチャラでいいですよ」

「青木先輩」

「それと、今回の合コンに呼び出したのは僕らの高校のOBですよね。きっちりと締め上げておいてあげますので、そちらもご安心を」

あぁ、青木先輩は弁護士になってもそっちのキャラは健在なのですね。

「えっと……あの人はそんなにいじめないで上げてください。僕のことはある程度きっちりと決まったら皆にいいますから」

「そうですね。飲み会を開きましょう。すぐにできるようになります」

さあ、仕事しましょうか。ちょっと全力を出したくなりましたよと怖い一言を言いながら青木先輩は病室から出て行った。


―そして今―

「あれから大分経ったのに、ちーちゃんは彼女作らないの?」

「もう業界の人とか、業界に理解のある人は怖いから嫌です。一般の普通の人がいいです」

「それが更に出会いが減っているんだと思いますよ。ストーカー疑惑の件はもしも澤田君がターゲットならいつでも相談相手になりますので。それと、念のために最近のあの二人の近況を調べておきます」

「青木先輩」

「そこまで?と思っていますか。でも、こないだのマカロンのイベントで澤田君の顔が出ているのは事実です。あのページを見ている人はビビットの澤田さんってこんな顔なのねって認識できます。それに時折ラジオにも出ています。あの時の彼女は浮気相手の子を妊娠したとしても気が付かずに育ててくれるような自分にとって都合のいい相手を探していました」

「そうでしたね。見事に騙されました」

「あれから5年。あの二人が交際を続けているかどうかはさておき。かなりの高額の慰謝料等を支払っていますので、自分のことを棚に上げて何かをやらかす恐れも十分にあります。あり得るのは、事務所での出待ちでしょうか。何かあったらすぐに連絡ください」

「はい、そうですね」

「さあ、折角のご飯が美味しくなくなっちゃうよ。いい加減に食べようよ」

「あっ、そうでしたね。食べましょう」

僕らは止めていた箸を再び動かし始めた。


僕がすっかり忘れていたと言ってもいい位な元婚約者だった彼女の存在が再び僕を悩ますことになるとはこのとき誰も思ってはいなかった。


今回を踏まえて次の話に進みます。

「私、元カノ。あなたのそばにいるの♡」

ちーちゃん、逃げて((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

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