赤紙令状がやってきた1
今回は11月頭……君想いマカロン企画が始動前と思って貰えるといいと思います。
精神的にボロボロだった僕をハローワークで社長に捕獲されて早四年と少々が経過した。相変わらず僕は芸能事務所でマネージャー業をメインにしている。
たまに事務処理もする事もあるのは、僕が社会保険労務士補である為だろう。
実務をこなせば、社会保険労務士として独立もできるのだが、僕にはマネージャーという仕事が思った割に楽しくて、社会保険等の手続きをする窓口担当をこなしつつマネージャーを続けている。
「澤田さん、個人宛の葉書が来ていますよ」
そんな11月のある日の事。後輩から俺はそれを受け取る。渡された往復葉書……個人の郵便物を自宅マンションではなく、勤務先の芸能事務所にお願いしているから、今では郵便ボックスに担当アイドルの隣に自分のスペースまで作られてしまった位だ。
「ありがとう」
往復葉書を捲って内容を確認すると、自然と乾いた笑いしか出す事が出来なくなってしまった。
「澤田さん、大丈夫ですか?今日の同行変わりましょうか?」
「大丈夫だよ。久しぶりに赤紙令状が来た気分かな」
同様を隠す様に淡々と答えると後輩は、そんなに緊迫したものだったんですか?と不審そうな表情をする。
「だって、高校の同窓会のお知らせだよ。君は行きたい?」
「えっと……クラス会ではないのですか?」
「クラス会は、比較的頻繁にやっている様な状況でね。僕の母校は地方の高校だけども、同級生もみんなほとんど都内勤務だったりするから、連休になる度に会ったりはしているけど、先輩方となると……ちょっとね……」
「そうなんですね。でも行くのでしょう?カレンダーとにらめっこしている位だから」
「年末にあるみたいだから、社長に申請を出せば纏まった休みは取れると思うけどね」
「それならば行ってきたらどうですか?」
「そうだね。僕の担当は、里美ちゃんもいるからちょっと休ませて貰おうかな」
僕は久しぶりに有給消化を申請する為に、申請書を取り出した。
「この時期に同窓会はありだけど……どうして会場が高校の体育館で、ラフな服装ってドレスコードがあるんだよ?」
僕はゆっくりと同窓会のお知らせを読み込んでいく。オフィスのカレンダーとスマホのカレンダーに同窓会の予定を書き込んでおく。
「っていうか、学園でやるっていったら……あの人の恒例イベントが待っているって事か。これは危機回避のために欠席した方がいいような気がするんだけどなあ」
学園で過ごした三年間の最初に一年が一気に僕の脳裏に思い出される。
その思い出の日々は、どう考えても破天荒な学園生活だった。
「まずは、あの人にコンタクト取らないとなあ」
同窓会の葉書を一瞥してから、スマホに登録してあるある人にメールを送る事にした。
返信メールにはあまりに残酷すぎる一文があった。
「澤田君は、もれなく参加だよ。君は助手だろ」
やっぱり、同窓会のお知らせの葉書は僕にとっては赤紙令状でしかないということが証明された瞬間だった。