ミレリアの話(上)
約900年前に、2人の神がこの国、クロセントを治めていた。
時は経ち、今は2人の神はいなくなり、人間のパレスキオ王がこの国を治めていた。
パレスキオ王には妻ととても美しい娘がいる。
娘の名はミレリア。
これはミレリアのお話。
「あーあ、暇だと思わない?ロイス。」
ミレリアが窓の外を退屈そうに眺めながら言う。
「そうですか?」
ロイスはお茶の準備をしている。
「・・ねぇ、外に出ちゃ駄目かしら?」
「駄目ですよ。もし外に出て怪我でもしたらどうするのですか。一応貴女はパレスキオ王のご息女なのですから。」
「一応って酷いわね。」
ミレリアはムスッとする。
(まぁ、そうだろうな。)
ロイスは知っている。
ミレリアがパレスキオ王の本当の娘ではない事を。
「・・・そうだ、ミレリア姫におとぎ話をしてあげますよ。」
ロイスが準備の手を止め、ミレリアの方を向く。
「?おとぎ話って、シンデレラとか白雪姫とかのお話?」
ミレリアは興味を持ったようだ。
先ほどの機嫌の悪さが嘘みたいに感じる。
「まぁ、そんな感じですね。でもシンデレラでも白雪姫でもないですよ。」
ロイスは近くにあった椅子に腰かける。
「じゃあ、どんな題名?」
ミレリアはロイスの向かい側に座る。
「えっと・・題名は無い・・ですね。」
ロイスは考えるが題名は出てこない。
しかし、ロイスはこの話を急にしたくなった。
なぜなら・・・
「えーっ、題名の無いお話?そんなの聞いたことないわ。」
ミレリアは間髪を入れずに返してきた。
そこには驚き半分、呆れ半分といった顔がある。
「そりゃ、そうですよ。だってこの話はあまり知られていませんから。」
ロイスはお茶を注ぎ、お菓子と一緒にミレリアに出す。
そして自分のお茶も注ぐ
「へぇ~・・まぁ、いいわ。聞かせて頂戴。」
ミレリアはお茶を飲んで、言う。
「分かりました。・・では、早速。」
ロイスはお茶を飲み干し、ティーカップを置く。
一呼吸ついて、
「・・・信じる信じないは貴女の自由ですが、これは約900年前のこの国であった話です。」
話し始める。
なぜ急に話したくなったのかって?
・・・そっくりだったからさ。
ミレリア姫がこの話に出てくる”ある人”に。