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[1]7月3日

「幽霊とかって信じるー?」

「いや信じないよー!」

「えうっそ。私霊感めっちゃ強いよ、ここ...いるかも」

「やめてー今日眠れないー!!」

昼休み。クラスの女子数人が教室の真ん中で楽しそうに話している。

僕は心の中で彼女らと会話をしていた。

「(俺は信じないなぁ...。)」

心の中で言ったが、それを聞いていたかの様に話していた女子全員が一斉にこっちを向いた。

女子の内の一人と目が合った。

僕が軽く会釈すると、気持ち悪そうにまた向こう側を向いて話を再会した。

「(なんだよあの目は...)」


今の一連からも見て取れるかもしれない。

中学の頃はそこまでじゃなかったと思うが、今は身にしみて感じる。

『皆から嫌われてる』と。

嫌われている、といってもそこまでじゃない。

教室にいても、怪物がそこにいるような目では僕を見ない。

だから引きこもるつもりもなく、自分なりに青春してるつもりだ。

(生まれて一度も彼女なんかいないけどね。)


「そーしぃ、今日帰り本屋いかねー?」

こいつはことば。中条(なかじょう)詞。名前が珍しく、本人もこの名前を気に入ってるらしい。

結構引くくらいのお調子者だが、クラスの中心的な人物である。

ちなみに僕の名前はそうし。柳刃(やなぎば)蒼士。

自分自身も詞と同じくこの名前を気に入っている。

しかし、性格は大きく違う。

さっきも言ったように詞はお調子者で明るい性格なのに対して、

僕は暗く、ノリも良くない。

(だから嫌われているんだと思う。)

こんな対照的すぎる二人が仲が良いのだ。

というか、僕は友達はいるが仲の良い友達は詞だけかもしれない。


そんな僕たちが仲良くなったのは2ヶ月前。

高校生になったばかりの5月の時、確か授業中だった。

詞と目が合って、気まずいなと思った瞬間。

彼は変顔をしてきたのだ。

僕はそのとき何故か、好奇心と言っていいのか分からないが、したことのない変顔を仕返してしまった。

そこで二人にスイッチが入ったらしく、その変顔はどんどんエスカレートしていった。

最終的に僕が物凄い顔をしたらしく、彼が大爆笑して終わった。

時々あのときの顔をしてくれ、と言われるが、あんなの出来ない。


あの日は本当に楽しかった気がする。

友達なんて出来ない、と思っていたら、ちょっとしたことからできてしまった。

案外、予想外なことなんて簡単に起こるものなんだなあと、しみじみ感じた。

7月3日の今日、僕は死ぬかもしれない。

7月3日の今日、彼女ができるかもしれない。

...何故か今の自分には、出来ないことは無いような、そんな感覚に襲われた。

7月3日の今日、冷たい風は南からくるかもしれない。


そんな不思議なことも、考えたりした。


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