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極めて下品な短編置き場

タイムトラベラー

作者: 木津さつき
掲載日:2014/05/12

俺はあの夜ひどく酔っ払っていた。 バーで強い酒を飲んだ後、気づけば見ず知らずの男に振られた女の話なんかをしていた。 

「やり直したいのか? じゃあホテルに帰ったらここに電話しな」

その男はそう言うと電話番号が書かれた紙を手渡してきた。 

「なんだ? これは…」

「タイムトラベラーの男が出るはずだ」

タイムトラベラー(時間旅行者)? 過去や未来に連れて行ってくれるというのか? そうすればまた彼女と… 俺はそんな淡い期待を抱いてしまった。 酒に酔っていたせいもあるが、俺はあの男の話を鵜呑みにしてしまった。 ホテルに帰った俺は男に手渡された番号に電話をかけていた… 

「場所は何処だ?」

電話越しに男の声がした。 俺はホテルの場所と部屋番号を伝えた。 タイムトラベラーと思われるその男と落ち合うことにしたのだ。 

「時間はどれぐらいだ?」

男は続けて聞いてきた。 どうやら時間旅行には限られた時間しか行けないらしい。 そして過去と未来のどちらに滞在するにしても、時間に応じて対価を支払わなければならない。 滞在時間が長ければ長いほどに、またオプションをつければつけるほどにタイムトラベラーは大金を要求してきた。 

交渉を終えるとタイムトラベラーは俺にそのまま待つようにと告げた。 

「15分ほど待て…今、送ってやる」

このまま俺を直接、別の時間軸に送ることが出来るというのか? 俺はホテルで待ち続けた。高鳴る鼓動を抑えながら… 過去に戻ったら、あの日の彼女に俺はなんて言えばいいのだろう… 

「コン!コン!コン!」

突然、ノックの音が鳴り響いた。 俺は部屋のドアを恐る恐る開けた。 するといたのだ… そこには彼女がいたのだ― 

「あ… 君は…」

彼女は少し年を取っていた。 俺は未来に来たのだ。本当は過去に戻ってやり直すつもりだった。 おそらく、酷く酔っ払っていた俺は過去と未来を間違えて注文したのだ。 キャンセルしたところでタイムトラベラーは大金を要求してくるだろう。 どうせ金を払うなら、と半ば軽はずみな考えで俺は未来の彼女と話をすることにした。 彼女は15年後の未来の彼女だった。彼女は色々と教えてくれた… 子供が二人いること… それは俺の子ではないこと… その二人の子供を愛していること… 幸せな家庭を築いていること…

俺は気が失せてしまった。

過去をやり直す気が失せてしまったのだ…

こんなに幸せそうに話す彼女の姿を… 彼女の愛する子供たちを…

俺が過去を変えてしまえば全てブチ壊してしまうからだ。 俺自身の醜悪な願望が未来の彼女の笑顔を奪ってしまう。 今、目の前で楽しそうに話している彼女の笑顔を奪ってしまうからだ。 俺はいい意味で諦めがついた。 だが同時に底のない虚しさに襲われていた。 

彼女が微笑む先に俺の姿がないと思うと… 

俺の目の前に微笑む彼女がいないと思うと…  

たまらなく虚しくなった。 

そんな俺に未来の彼女は優しかった。 俺の心情を察した彼女は俺の手を握り、そして優しくキスをした。 これが神に背信する行為なのは知っていた。 

俺は彼女を抱いていた… 

その瞬間だけ底のない虚しさから逃れられたのだ― 



朝…目覚めると彼女の姿はなかった。 まだ酒が抜けないのか、頭がズキズキと音を立てて鋭い痛みを与えていた。そして、その痛みが俺の昨夜の記憶を蘇らせた… 


そうだ… 

俺はバーで酔っ払ったあとホテルにデリヘルを呼んだ。 

するとプロフィールを15歳ほど詐称した人妻が部屋に来て、妥協しつつもア○ルファックしたのだった。 


俺は嵌められたのだ… 

プロフィール通りの若い娘が来ると思っていたのに… 

全ては電話番号を渡してきた男(案内所の男)の姦計だったのだ… 

俺はあの男に嵌められたのだ… 

アレ? ハメられた…?

いや… ハメたのはどちらかといえば俺…

つまり俺が攻めで、あいつが受け?

それとも俺が受けであいつが…

え…? むしろ総ウケ…? どうでもいいわ。 


そして俺はおもむろに財布を手に取った 

俺は思いのほか中身が軽くなっていることに絶望した。 

頼んだ時間を全部使えるほど… 

頼んだオプションを全部試せるほど… 

俺の相棒は強靭ではなかったのだ。 

俺の相棒という名の棒は10分も経たずに使いものにならなくなったのだ。 そんなことなら始めから最少単位の50分9000円にしておけば良かったのだ。 

なんと無駄なことに俺はその3倍以上の金額を払っていたのだ!

そのせいで無駄に3時間もババァと雑談していたのだ!

俺は 電話越しの男≪タイムトラベラー≫の策略にまんまと騙されたのである! 


きっとお店の名前が時間旅行者タイムトラベラーだったんでしょうね。

まぁよく起こりますよ、こういうこと。

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