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9/21

拳闘無用

「ベリーニ、あんたとオレは、いつからの付き合いだっけ?」

「一年と少しだ」

「あんたのこと、少しはわかった気になってた。だがな、ワケがわからないよ。あんた、本気なのか」

「本気だ」

「……まず、落ち着こうか……」

「お前が落ち着け」


 ジュドーとベリーニは、Z地区に程近い、崩れかけたビルで会っていた。

 モラレスという警官の情報収集のために、ジュドーはベリーニを呼び出したのだ。

 事情をかいつまんで説明したところ、ベリーニはモラレスについて、知っていることを話してくれた。

 モラレスは現在三五歳。身長一九〇センチくらい。かつて大陸にいた時に娼婦との関係が問題視され、さらに数々の問題行動も上の人間の知るところとなり、ネバーランドに飛ばされたのだという。

 つまり、典型的な不良警官というワケだ。

 連れ出すのに頭を使う必要はないだろう。少し金の匂いをさせるか、あるいは女の存在を匂わせるかすれば、簡単にすむ話、であるはず。

 ただ問題は、うまい話を持ち込めるほどの仲になることだった。いきなりジュドーが接触しても、警戒される可能性大だ。

 ところがである。

 話し終えたベリーニが、こう付け加えたのだ。

 オレも分け前が欲しい、だから参加させろ。


「あんたの基本的なスタンスは、見ざる聞かざる言わざる、だった気がするんだが」

「まあ、そうだ。今まではな。いや、今だってそうだよ」

「……いつからあんた、そんな悪徳警官になった?しかも、なんでオレ?オレより、ゴメスとかタイガーの方が――」

「奴らは信用できない」

「オレは頼りないぜ」

「ジュドー、あんたが拾って、育てた連中を見たら、あんたと組みたくなった。それに、やっぱり金は欲しい」

「……あんた、意外と頭ワルいんだな」

「自分でも、そう思う」



 人を傷つけるのが大好きだった。

 モラレスは小さい頃から体を動かすのが好きだったが、特に肉体のぶつかり合いが好きだった。

彼は、野球やサッカーよりも、プロレスを好んだ。やがて大きくなり、ボクシングを始めた。

 モラレスはたちまち頭角を表した。人を殴ることに異常な快感を覚え、殴られることに嫌悪感を感じた。

 彼は殴った時に相手に大きなダメージを与えられるように、また相手から殴られないために練習に打ち込み、やがてヘビー級の選手として、少しは知られる存在になった。大学への進学も、ボクシングのおかげでスムーズにいけた。

 やがてプロになり、順調に勝ち星を重ねた。このままいけば、チャンピオンも狙えた、はずだった。

 破局は突然に訪れた。

 モラレスは、友人たちと一緒に歩いていた時、チンピラに絡まれた。

 友人たちとチンピラ連中がケンカを始めた。

 プロのボクサーであるモラレスが下手にケンカをすると、ライセンスを剥奪される可能性があった。

 モラレスはケンカを止めようとした。

 だが目を殴られた。それでもモラレスは殴り返さなかった。ケンカを止めるため、ひたすら謝った。そんな彼の姿に異様なものを感じたのか、相手は引き下がった。

 その時以来、視界がぼやけるようになった。

 医師の診断は、網膜剥離とのことだった。

 ボクシングは続けられなくなった。

 モラレスは、怒りよりも困惑した。

 何をすればいいかわからなかった。

 なんとなく、警察官になった。

 なんとなく、賄賂を受け取るようになった。

 なんとなく、娼婦を殴ってみた。

 その時――

 モラレスは、異常な興奮を覚え、激しく欲情した。モラレスは女を殴った後で犯した。あるいは犯しながら殴った。そのせいで、彼はほとんどの風俗店を出入り禁止になった。

 仕方ないので、モラレスはギャング連中と癒着し、『そういう趣味の』娼婦を紹介してもらった。

 その代わりに、さまざまな形で便宜をはかるようになった。

 やがて上の人間の耳にもモラレスの悪行は聞こえてくるようになった。

 モラレスは飛ばされた。しかし、飛ばされた先でも同じことを繰り返した。

 いや、飛ばされた先は無法地帯だったため、モラレスの性癖は、さらに異常になっていった。



「モラレス、ちょっと話があるんだが」

 モラレスが署でコーヒーを飲んでいると、ベリーニが近づいてきた。

 モラレスは露骨に不快な顔をした。ベリーニと言えば、最近は妙に真面目で付き合いも悪く、しかも能力者を四人射殺している。

 元ボクサーであり、治安警察という肩書きのあるモラレスでも、能力者とはやり合いたくない。

 なのに、こんなハゲでチビでデブの四十男がそんな手柄を、と思うと、たまらなく不快になった。ベリーニを殴り倒したくなった。

「なんですベリーニさん。手柄の自慢でもしようってんですか」

「おいおい、ごあいさつだな。お前さんに儲け話を持ってきたってのに」

「儲け話?」

 モラレスの表情が変わった。

「そう。実はな、ここだけの話――」

 ベリーニは、モラレスの耳元に口を近づけた。

「イスクイ署長はな、殺されてたんだよ。で、犯人がわかったんだ」

「本当ですか!」

 モラレスは思わず大声を出した。

「おい、声がデカいぞ。その犯人は……まだ教えられないな」

 ベリーニはそう言って、ニヤリと笑った。

「……儲け話って、もしかして犯人から――」

 モラレスの声は上擦っていた。

「そうだよ。さすがオレの見込んだだけのことはあるな」

「……」

「オレと組むか?」

「……組みます」

「秘密は守れるな?」

「もちろん」

「じゃあ教えてやる。犯人はジュドーだ」

 ベリーニはささやくような声で言った。

「オレはな、イスクイ署長は殺されたと思っていた。もっとも、警官全員がそう思ってるけどな。で、個人的に調べ続けていたんだけどな、最近になって、ジュドーがやった、って情報をつかんだんだ」

 ベリーニは言葉を止め、あたりを見回した。

「ジュドーって、あのジュドーですか?あいつに、そんな大それたことができますかね?」

 ジュドーのことはモラレスも知っている。安物の黒いスーツ、赤いワイシャツに白いネクタイ、天然パーマの黒髪。見るからにテキトーそうな、ヘラヘラした笑みを浮かべている奴だ。しかも、いつも楽しそうにしている筋肉質の若い娘を連れていて、モラレスはジュドーに対し、軽いイラつきを感じていた。

 いつか適当な理由をつけて、顔が変形するまでブン殴りたいと思っていた。

 もっとも、ジュドーは顔が広く、知り合いが多いらしい。金もため込んでいて、それなりに権力は持っているという噂もある。だからモラレスは手をださなかった。

「一応、聞いた情報の筋は通っている。あとは証拠を集めて、奴を捕まえるだけだ。それに――」

 ベリーニは言葉を止め、あたりをさりげなく見回した。

「ぶっちゃけた話、証拠なんてでっち上げりゃいいんだよ。奴は金をためこんでるらしい。取っ捕まえて痛めつけ、金のありかを吐かせて、金をいただいた後で殺す。署長殺しの犯人として死んでもらうのさ」

「大丈夫かよ?」

 さすがのモラレスも、あぜんとなる話だった。

「いや、もう一つある。ゴメスの手下がな、最近ジュドーとモメたらしい。で、ゴメスはこっちの味方になってくれる。奴を始末したとなれば、いろいろ便宜をはかってくれるさ。ま、それなりの額の金を渡さなきゃいけないけどな」

「……あんた、最近真面目になったと思ったら、とんでもないこと言い出すな。いや、とんでもねえ」

 モラレスはあきれ果てたとも、感心したともとれる様子で首を振った。

「ところがだ。そいつを実行に移すには、まずジュドーの身柄を押さえなきゃならん。そのためにはパートナーがいる。暴力沙汰に強く、度胸がある奴がな」

 そう言って、ベリーニはモラレスをつついた。

 モラレスはニヤリと笑った。

「いいだろう。やるよ。任せてくれ。野郎をボコボコにして吐かせてやる」

 モラレスは立ち上がり、シャドーボクシングを始めた。

「……あのな、殺すなよ。少なくとも、金のありかを吐かせるまではな」

「大丈夫だよ。どのくらい殴れば死ぬかはわかってるから。これまでに商売女を二人、ギャングを五人殴り殺した」

 ゲームでの戦績を誇るように、モラレスは自慢気に語った。

「そうか……大したもんだな。オレは殴るなよ?」

 ベリーニが引いたような口調で言う。

「……あんた次第だ」



 モラレスは、久しぶりに上機嫌だった。

 最近、良いことがなかった。『ボティプレス』を出入り禁止にされた時は、心底からの怒りを感じた。出禁を宣言しに来た、死神と呼ばれている色白で白髪の男の態度が、さらに怒りの感情を増大させた。その場で殴り倒したかった。

 だが、相手はタイガーの腹心の部下であり、しかも人ではないものだという噂を聞いたこともある存在だった。かろうじて、握りしめた拳を収めた。

 以来、ずっとふて腐れていた。

 だが――

 やっと運が向いてきた。これで少しは気も晴れるだろう。

 ジュドーのニヤけた面を潰したいと思った。

 そして、また女を買いたい、とも思った。

 女を買って、殴りつけて犯したい。

 あいつらは金を出して買われた身。まして、オレは治安警察だ。あいつらより偉いんだ。何をしようが構わないはずだ。

 そう、あいつらは男をバカにしている。

 ギャーギャーうるさく、傍若無人に振る舞うくせに一人だと何もできない。オレはそんな女どもが大嫌いだ。

 だから殴り、痛めつけるんだ。何も言えない男たちの代わりに。



 モラレスはその夜、ベリーニを尾行していた。

 ベリーニは『ボティプレス』に入った。

 モラレスは外で物陰に隠れ、見張る。

 二時間ほどした後、ベリーニは出てきた。

 ジュドーと一緒に。

 ベリーニはさかんに話しかけ、ジュドーは神妙な顔でうなずいている。

 二人は歩き、寂れた地下駐車場の跡地に入った。

 モラレスも後を追う。


 ジュドーとベリーニは向かい合っていた。

 そこにモラレスが登場する。

「おいベリーニ!どうすんだ!今ここで痛めつけるのか!」

 モラレスの目は歓喜の光に満ちていた。

 彼は大股で歩き、ジュドーに自分のパンチが当たる距離まで接近する。

 だが、ベリーニが口を開いた。

「モラレス……すまんな……事情が変わった」

「ああ?何言って――」

 モラレスは言葉を呑み込んだ。

 いつの間にか、周りを女たちに囲まれている。

 顔に包帯を巻いた女、腕をギプスで固定した女、松葉杖の女など、ケガの跡が目立つ女が半分くらい。

 全員、憎しみに満ちた目でモラレスをにらみつけている。

「ベリーニ……どういうことだ?」

 モラレスは震える声でベリーニに尋ねた。

「あのなモラレスさん。あんたは、やりすぎだ」

 ジュドーが代わりに答える。

「なんだと……」

「この女たちだってプロだからな。多少のケガに対する覚悟はできてる。でもな、ここまでやられたら、商売にも、その後の人生にも差し支えるんだよ。相手に後々まで残るケガをさせないのが、こういう遊びをする人間の鉄則だろ」

 ジュドーは淡々と、しかし凄みを感じさせる口調で言った。

「……てめえら!」

 モラレスは拳銃を抜こうとした。

 だが――

「モラレス、銃を捨てろ。バカな真似はよすんだ」

 ベリーニが拳銃を構え、冷静な声で諭す。

「ベリーニ……この裏切り者が……騙しやがって……ブッ殺してやる!」

 モラレスはベリーニをにらみつけ、なおも銃を抜こうとする。

 だが、抜くことはできなかった。

 ベリーニに注意が逸れた隙に、稲妻のようなスピードでモラレスの懐に飛び込んだジュドーが、拳銃を奪い取った。

 同時に腕を捻りあげ、モラレスの背後に回る。

「ジュドー、ありがとう。あんたたちはここまで。あとはアタシらがやる」

 アンドレが巨体を揺すりながら現れた。

 モラレスはジュドーに押さえ込まれながらも、憎しみのこもった目でアンドレをにらみつける。

 アンドレは冷酷な目で、その視線を受け止める。

「……一対一なら、素手なら、アタシたちなんかには負けないって言いたそうな顔してるわね」

 アンドレは笑みをうかべた。

「ねえ、モラレス……アンタにチャンスあげる。アタシと素手で勝負して、勝ったら命だけは助ける。負けたら、命の保証はなし。どうかしら?」

「な、何を言って……」

 ベリーニは驚きの声をあげた。

「ジュドー、ベリーニ、悪いけど立ち会ってちょうだい。ジュドー、もう離していいわ」

 アンドレは静かな口調で答える。

「わかった。好きにしな、アンドレ」

 ジュドーは腕を離して、邪魔にならないように素早く飛び退いた。

 モラレスは顔をしかめ、腕を二、三回まわしたが、自由に動くことを確認すると、ニタリと笑った。

「上等だよ……」

 モラレスは両手を握り締めた。

 左の拳を顔の前に、右の拳を右頬の横に置く。

「だ、大丈夫かよアンドレは……」

 ベリーニが心配そうに、ジュドーにささやく。

「アンドレは、モラレスの全てを壊すつもりだ。まずみんなの前で、素手の闘いでモラレスをぶちのめし、奴のプライドをズタズタにする気だろう。怖いなアンドレは」

「だが、勝てんのかアンドレ……モラレスは元ボクサーだぜ。結構強かったらしいぞ」

「あのな、アンドレが負けたら命だけは助けるって言ったけど、それだけだろ、要するに、生かしておきさえすれば、何をしてもいいってワケだ」

 ジュドーはイタズラを計画中の子供のような顔で、ニヤリとした。

「えー……」

 ベリーニは、さすがに呆れ顔になった。

「子供のなぞなぞじゃないんだから……」


 モラレスの鋭い左ジャブが放たれる。

 アンドレは両腕で顔をガードしながら、ジリジリと後ずさる。

「ほらほら、どうしたどうした!」

 鋭い左ジャブ。

「なんだよ、ガードしてるだけか!」

 小刻みな左ジャブ。

 続けざまに当たる。

「てめえ、デカイだけだなあ!え!」

 モラレスはさらに、右のストレートを放つ。

 だが、アンドレはそれを額で受けた。いや、自らの額をモラレスの拳にブチ当てた。

 その瞬間――

「ぐ、くううう!」

 モラレスは自分の右手を見つめ、後ずさる。

 右手の甲から、折れた骨が飛び出ていた。

 血がしたたり落ちる。

 頭蓋骨の額の部分は厚く硬い。一方、手の甲の骨は細く、意外ともろい。

 アンドレの額に拳が当たったことにより、衝撃に骨が耐えられなくなり、折れてしまったのだ。

「アンタの負けね」

 アンドレの勝ち誇った声が響き渡る。

「んだと……まだ負けてねえ!」

 モラレスはわめき、大振りの左フックを放とうとする。

 だが、アンドレのグローブのような手のひらが伸びて来て、モラレスの髪の毛をつかむ。

 そして――

 二二〇センチもの高さから、超巨大な頭がモラレスの顔面に降ってきた。

 鈍く、だが凄まじい音が響き渡った。

 モラレスの意識は飛んでいた。


 モラレスは縛られ、猿ぐつわをかまされ、地面に転がされていた。

「アンドレ、そいつどうすんの」

 ジュドーが尋ねる。

「……アンタは知らなくていい」

「後始末手伝うぜ」

 ジュドーは言いながら、ハンカチを取り出した。

 そして手を思い切り伸ばし、アンドレの顔についた血を拭く。

「……ありがと。でも、アンタたちはここまででいいわ」

 アンドレはそう言うと、女の一人を手招きした。

 そして、その女に持たせてあったハンドバッグから封筒を取りだし、ジュドーに渡した。

「はい、約束のお金」

「まいどあり」

 ジュドーは封筒を受け取ると、丸ごとベリーニに手渡した。

「ベリーニ、分け前だ。百万ある」

「お、おい……いいのか?本当にいいのか?」

 ベリーニは慌てた様子でジュドーと封筒を交互に何度も見る。

「構わない。オレも百万、前金でもらってる。ベリーニがいなきゃ、こんなにスムーズには行かなかった。あんたは半分くらいもらっていいよ」

「……計画の絵図面を描いたのはあんただぜ。オレは言われた通りにやっただけだ」

「それでも、あんたは計画のキーマンだった」

 ジュドーはそう言って、ベリーニの胸に軽いチョップを浴びせた。

「また頼むよ」

 ベリーニは黙ったまま、封筒の中身の札を数え、十枚抜いて自分のポケットに入れた。

「じゃあ、残りの金はアイザックとカルメン、それにマリアに渡してくれ」

 言いながら、封筒をジュドーに押し付ける。

「お、おい、ベリーニ……何を――」

「欲は張らねえ。仕事の内容と比べて百万は高すぎるだろ。十万で充分だ。それに、奴らの方が金は必要だしな」

 ベリーニは、ジュドーの手に封筒を握らせる。

「オレも一応、チームの一員だろ」

 そう言うと、ベリーニは向きを変え、カッコよく去って行く、はずだった。

 だか、ジュドーに腕をつかまれ、引き戻される。

「ベリーニ、この金はあんたの手から渡せ。今からウチに来い」

「……嫌だよ」

「だったら、この金は渡さない。オレが自分の懐に入れる。そして、物凄く下らないことに使う」

「……おい」

「そんなの嫌だろ。だったらウチに来い。ウチで直接奴らに渡せ。いいな?」

「……わかったよ」


 ところが――

「受け取れない」

「そうね、あたしも受け取れないな」

 アイザックとカルメンは受け取ろうとしない。

「じゃあ、オレがもらうことにしよう」

 そう言って、ジュドーはテーブルの上に置いた封筒に手を伸ばす。

 誰も反応しない。

「……おい!違うだろ、って誰か言えよ!」

 ジュドーはテーブルを叩き、みんなに向かって吠えた。

「……いや、お前が決めてくれ。一応、ウチの大将なんだから」

 アイザックが真面目に返した。

「……いいのか」

 ジュドーは他の二人の顔を見る。

 カルメンとベリーニは、躊躇することなく、うなずいてみせた。

「わかった。じゃあ、まずベリーニが五十。アイザックとカルメンが二十ずつ。あとの十は、明日マリアに渡す。これで決まり。いいな?」

 全員がうなずいた。

「よし、じゃあベリーニ、トラビスのタクシーを呼ぶから……ん?」

 携帯電話が震えている。クリスタル・ボーイからだった。

「よおボーイ、どうしたんだ?」

(オレが喋り終わるまで、黙っててくれよ。頼む。オレの兄貴の弟が言ってたんだが、ロペスって奴いるだろ、最近ゴメスん所から追い出された奴。あいつにはショタコンの友人がいたらしい。しかもタイガーの部下の。そこまでだ。これ以上は言えない。オレは何も言ってないぞ。あくまでオレの兄貴の弟が言った話だから。じゃあな)

 電話は切れた。

 ジュドーの脳裏に、タンの言葉が甦る。

(ロペスと、ゲンタツが――)

 さらに、イチのセリフも甦る。

(タイガーの身内に、裏切り者が――)

「せつないぜ……」

 ジュドーは呟いた。

 断言はできませんが、次回はまた二日後になるものと思います。


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