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P3

その思惑は、文化祭の一週間くらい前まではうまく行っていた。


「文化祭の講堂発表の担当、誰だ?

 一組は参加とも不参加とも報告がないから、一応枠は取ってあるけれど、

 内容と参加者を報告してもらわないとプログラムが作れないから、

 早くしてくれって急かされたんだが」


その日の朝、担任の椎野先生が教室に入ってきてそういった。

そうか、すっかり何もしない気で報告書を出していなかったっけ。

「早瀬」という誰かの声に視線が集まる。

こんな風に注目されるのは嫌いだ。

不参加って事で、すぐに書類を出しに行きますけど、

いいですね、と伝えようとした時、


「すいません、

 文化祭の準備のプリントに書いてあったのをちゃんと見て知っていたのに、

 今まで失念していました。

 みんなもごめん、全然、頭になかった」


佐倉がまるで、会社が倒産してしまいそうなほどの、

大損害をだしてしまいましたといわんばかりに、

強張った声でクラス全体に向けて言葉をかけた。

え、いやいや、なんで君が謝っちゃうの。

彼の天然っぷりは何となく気付いていたけれど、さらに驚いたことに、神崎まで、


「いや、修、待って。僕も知ってた。

 後で適当に決めればいいやって、

 最悪、不参加でもいいんだしって軽く考えて、すっかり忘れてた。ごめん」


と慌てたように頭を下げた。

ちょっと待ってよ、さっき、佐倉が話す前に目が合った時、

「ああ、あれって当然不参加だよね」って感じのカオ、していたよね?

先生も戸惑ったように、


「まあ、不参加なら、それでもいいんだが。それで報告していいか?」


と、助け舟? を出してくれたんだけれど、

佐倉はなぜか泣きそうな真っ青な顔をしているし、それをみた神崎は、


「先生、その報告っていつまでにすればいいの?」


とか言い出すし。

そのまま、神崎が声をかけて、クラス全員で昼休みに話し合うことになった。

うそだろ。


休み時間に佐倉と神崎の二人で僕の席まで謝りに来た。


「気付かなくて、ごめん」


と佐倉が心底申し訳なさそうに頭を下げる。


「ううん、僕も後から報告すればいいと思っていて。

 クラスのみんなも準備で忙しそうだったし、声、掛けづらくて」


というと、そうだよね、まだクラスに馴染むには期間も短いし。

僕がちゃんとしていれば、とがっくりうな垂れる。

え、いや、下手に声なんてかけて、

ヒマなら手伝えとかいわれたらやだなって思ったからだったんだけど。

別に誤解させておいてもいいだろう。

すまなそうにしている佐倉の後ろで、神崎がこっそり僕に、

ごめん、と顔をしかめる。

不参加が妥当なのは明らかなのに、こんな騒ぎにしてしまって、という意味だろう。

君ねえ、わかっているんでしょ、と、いう表情を作って見せると、


「ま、とりあえず話し合いしようよ」


と気安く肩を叩かれた。

なんだ? 神崎の態度に一貫性がない。

自分から面倒の矢面に立つようなタイプか?

損得は見誤らない、要領のいい彼にしてはめずらしく、

焦って対応を間違えまくっているような。

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